甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY

2017年度版

遺伝子の隠れた能力を引き出して未来生活を改善する
核酸の特異構造の機能解明とその制御技術の開発

甲南大学
先端生命工学研究所(FIBER) 所長・教授

杉本 直己
遺伝子複製と核酸の特異構造

FIBERの高橋俊太郎講師と共同で、遺伝子(DNA)が複製される際の核酸構造の影響を研究しています。DNAは、正しく複製されないと間違えた遺伝情報が蓄積されることになり、様々な病気の原因になります。私たちは、グアニン四重鎖やi-motifと呼ばれる特殊な核酸構造が解かれる際の体積変化などを解析してきました(この研究成果は、英国王立化学会の学術誌「Physical Chemistry Chemical Physics」の中表紙に掲載されました)。さらに、英国のReading大学との共同研究により、特殊な核酸構造の違いがDNAの複製の制御に大きく関わっていることを明らかにしました(この研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)誌に掲載)。これらの研究成果は異常な複製を防ぐ新薬の開発につながると期待されます。

転写・逆転写反応と核酸の特異構造

FIBERの建石寿枝講師と共同で、DNA構造が転写や逆転写反応に及ぼす影響を定量的に解析しています。例えば、人工核酸をつかって、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1のゲノムRNA上に四重鎖構造を安定に形成させる技術を構築しました。さらに、開発した人工核酸を用いると、HIV-1の増幅に関わる逆転写反応を高い効率で阻害できることを見出しました。(この研究成果は、独国生化学会の学術誌「ChemBioChem誌」の表紙に掲載されました。特許出願中[出願人:学校法人甲南学園])。さらに、東京工業大学の金原数教授とスロベニア国立NMRセンターのJanez Plavec教授と共同で、人工核酸による四重鎖の相互作用を解析し、CH-π相互作用という新規の相互作用形式によって核酸が安定化していることを見出しました(この研究成果は、英国核酸科学誌「Nucleic Acids Research誌」表紙に選定されました)。

翻訳反応と核酸の特異構造

FIBERの遠藤玉樹准教授と共同で、タンパク質を作る翻訳反応における核酸構造の影響を解析しています。これまでに、翻訳反応の鋳型となるメッセンジャーRNA(mRNA)に安定な核酸構造が形成されると、発現されるタンパク質の量が減少することを見出しています。また、A. RODE博士(FIBER特任研究助教)とも共同で、mRNAの構造が別のRNAによって調節され得ることも見出しました。さらに、米国ニューヨーク州立大学Binghamton校のEriks Rozners教授との共同研究では、ペプチド核酸と呼ばれる人工核酸分子を開発し、mRNAに安定な三重鎖構造を誘起させて細胞内での遺伝子の発現を抑制することに成功しました(これらの研究成果は、独国化学会の学術誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載され、掲載号の中裏表紙および表紙にそれぞれ選定されました)。

科学研究費助成事業 基盤研究(A)(平成28年度~平成30年度)
 核酸構造の多様性に基づく新規の遺伝暗号DimensionalCodeの解析
甲南学園平生太郎基金科学研究奨励助成(H26年度~平成28年度)
 甲南DNAドックによる疾病リスクの革新的早期診断システムの構築

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2017
1010日作成