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甲南大学フロンティアサイエンス学部生命化学科

バイオ分子機能研究室

研究紹介 



核酸構造の形成メカニズムの解明

 DNAとRNAが形成する右巻き二重らせんはとても安定な構造体です。その一方で、塩基配列によっては左巻き二重らせん構造、三重らせん構造、四重鎖構造などの特殊構造体が形成されます。これらの特殊構造体は遺伝子発現の調節、疾患や老化との関連性が指摘されているものの、どのような仕組みによって特殊な構造体が形成されているかについては明らかになっていません。私たちは 実験によって得られる定量的なデータを解析することで、DNAとRNAが形成する様々な構造体の形成機構を解明しようとしています。さらに、金属イオンやカチオン性分子(塩基性タンパク質やポリアミンなど)との結合性について調べ、DNAやRNAの構造を制御したり予測する方法の開発を目指しています。

核酸酵素の活性制御法の開発

 化学反応を触媒することができるリボザイム(RNA酵素)とデオキシリボザイム(DNA酵素)は、遺伝子の発現制御やバイオセンサーとしての利用が期待されています。多くの核酸酵素は、ミスマッチやループなどの非ワトソンークリック塩基対部位に結合する金属イオンを利用することで触媒反応を進めています。私たちは、金属イオンやカチオン性分子との相互作用に注目して、様々な種類の核酸酵素の反応機構の解明を進めています。こうして得られる知見を基にして、酵素活性を向上させたり、 その機能を制御する方法を開発する取り組みも行っています。

細胞内分子環境効果の解明

 細胞にはリボソームや細胞骨格タンパク質などの巨大分子が大量に存在しており、この特殊な分子環境(分子クラウディング環境)は生体反応に大きな影響を与えることが知られています。私たちは、 細胞内部の分子環境が生体分子に及ぼす影響を明らかにするために 様々なモデル実験系を構築し、分子環境がDNAとRNAの構造と機能に与える影響を調べています。モデル実験系では再現性のある定量データが得られるため、様々な環境因子(排除体積効果、水の活量、イオン活量、溶媒和、比誘電率、粘度、表面張力など)が核酸の相互作用に与える影響を調べ、細胞内分子環境におけるDNAとRNAの機能を明らかにしようとしています。

脂肪酸結合タンパク質のリガンド認識の解明

 細胞の内部は水が多い環境です。このため、脂肪酸(リノール酸やDHAなど)や薬剤などの水に溶けにくい物質は脂肪酸結合タンパク質と結合することによって細胞内部を移動します。私たちは、非水溶性分子と結合するタンパク質のリガンド認識の特異性と冗長性を解明しようとしています。細胞における非水溶性分子の輸送システムを明らかにし、その原理を利用して脂肪酸や薬剤分子などの細胞取り込みを制御することができれば、糖尿病・高血圧・脂質代謝異常などの生活習慣病を改善する方法の開発につながると期待されます。