発話のしにくさに関する研究
しっかり声を出せるようになるための音声生成研究

医学的には異常がないと言われている人の中にも,音声コミュニケーションに何らかの不自由を感じている人が存在します.発話も運動の一種ですから,手先が不器用な人がいたり,走るのが不得手な人がいたりするように,発話が不得意な人がいることに不思議はありません.しかし,これまでこのような人々について研究されることはほとんどありませんでした.

そのような中,立川(2013)*は151名を対象にして「話しにくさ」の自覚についてのアンケート調査を行いました.その結果,驚くべきことに,日常的に話しにくさを自覚する人が13名,どちらかといえば自覚する人が63名存在しました.そこで,私たちも「話しにくさ」に関する調査とその改善法についての研究を始めました.

*立川渉, 話しにくさを自覚する健常者の構音動態の解析: 歯茎音について, 県立広島大学保健福祉学部コミュニケーション障害学科卒業研究論文集 (2013).


1. アンケート調査
1.1 甲南大学でのアンケート調査 (2014年)

甲南大学の学生505名を対象にして「日ごろ話しにくさを感じていますか?」というアンケート調査を行ったところ,以下のような結果が得られました.


(左) 文系学生のアンケート結果,(右) 理系学生のアンケート結果

話しにくさを感じる人が多数いることがわかります.また,理系の方が話しにくさを感じる人が多いことから,男性の方がより多く感じていることが推察されます.また,話しにくさを感じている人ほど,聞き返されることが多いと感じていることもわかりました.

この結果は日本音響学会にて発表し,大きな反響を得ました.詳しくは以下の予稿をご覧ください.


1.2 全国規模のアンケート調査 (2017年)

全国の大学・大学院にて2,000名以上の大学生,大学院生を対象にして発話のしにくさの自覚に関する調査を実施しました.2017年11月現在,集計作業を行っています.その結果は2018年1月音声研究会にて発表の予定です.

本研究は以下の科研費の支援を受けています.



2. 発話訓練法の開発

上のアンケートの結果を受けて,当研究室では発話のしにくさを改善するための発話訓練法の研究も始めました.世の中には様々な発話訓練法があり,それに関する書籍も多数出版されています.ところが,科学的な裏付けのある発話訓練法は少ないのが現実です.私たちは,下の写真のように割り箸やペンを横にくわえて発話練習をする方法について調査しています.この方法は,アナウンサー学校の校長先生にお教えいただいた訓練法です.



割り箸エクササイズの様子


私たちはこの方法を「割り箸エクササイズ」と呼んでいます.その効果を調べるため,割り箸エクササイズを5分間した学生と,単に朗読を5分間した学生の音声を比較しました.すると,驚くべきことに,たった5分で次のような効果があることがわかりました.

  1. 口が大きく動くようになり,音声の明瞭性が向上する
  2. 声が大きくなる
  3. 声の高さの抑揚が大きくなる
  4. 声の通りが良くなる(全員ではありません)
この結果は2017年の日本音響学会秋季研究発表会で発表され,大きなインパクトを与えました. 現在,効果があるのはなぜか?,効果はどれぐらい続くのか?について研究しています.

割り箸エクササイズの効果について詳しくは以下の文献をご覧ください.

本研究は以下の研究費の支援を受けています.


Last updated on Nov. 27 2017.
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