第3回甲南大学西洋史研究会開催

甲南大学のなかで西洋史を深く学びたい人たちが集う研究会を昨年から開催しています。教員だけでなく、学生も一緒になって、本学の西洋史研究を発展させようという意図です。3月24日(金)には第3回目の研究会が開催されました。吉本淳哉氏(2年生)が、「近代スペインと「自由主義」―カディス憲法を中心として―」と題する報告をし、林孝洋氏(本学非常勤講師、イタリア近代史)からヨーロッパ近代史における自由主義と憲法の理解に関するコメントをいただきました。また、阿久根晋氏(本学非常勤講師、ポルトガル近世史)にも討論に加わっていただきました。学生たちも鋭い質問を投げかけ、積極的に討論に参加し、充実した会となりました。今後とも、不定期ではありますが、研究会を継続していくつもりです(教員・髙田 実)。

本の紹介:『中世史とは何か』(2022年刊)

 2022年10月に歴史文化学科に着任しました図師宣忠です。中世ヨーロッパ史を専門としています。
 イギリス・ケンブリッジ大学歴史学部のジョン・アーノルド教授が執筆した『中世史とは何か』という本を赤江雄一先生(慶應義塾大学)と共訳で刊行しました。ファンタジー世界の源泉となってきた〈中世〉という時代について、歴史家がどのような史料から何を読み解いてきたのか、アーノルド先生がさまざまな事例を紹介しながら丁寧に解説してくれています。
 高校で導入された「歴史総合」という科目は近現代史がメインとなっていますが、大学で学ぶ歴史学では近現代史以外にも多彩で興味深いテーマがあなたを待っています。中世史を通じて歴史的なものの見方に触れながら、歴史学の醍醐味を味わってみませんか? 今を生きる私たちにとって歴史とは何か、過去との向き合い方を考える上でもたくさんのヒントが詰まっている本です。(教員・図師宣忠)

新見まどか著『唐帝国の滅亡と東部ユーラシア』(2022年刊)の紹介

2022年12月、『唐帝国の滅亡と東部ユーラシア――藩鎮体制の通史的研究』(思文閣出版)を刊行しました。タイトルにある「唐帝国」とは、7世紀から10世紀初頭まで、中国にあった王朝の名。日本も遣唐使を派遣し、その文化や制度に憧れました。しかし、唐が絢爛たる世界帝国であったのは、実は8世紀半ばまで。本書では、日本であまり知られていない8世紀後半~10世紀の唐代史を、内陸アジア世界や海域アジア世界との連動の中で捉え直します。時代の変化に柔軟に対応し、敵対勢力すら利用してしたたかに延命を図りながら、やがてこれまで支えてきてくれた人々を切り捨てはじめ、最後は誰からも見放されてしまう。滅びに向かう王朝の姿は、どこか現代にも通じます。(教員・新見まどか)

出版社による紹介と目次 
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/9784784220472/

本書に関するエッセイを収録したPDFがダウンロードできます(『鴨東通信』No.115、2022/9参照) 
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/prmagazine/


鳴海邦匡著『ものと人間の文化史 187 地図』(2021年刊)の紹介

この本は「ものと人間の文化史」シリーズ(法政大学出版局)の一冊として書きました。このシリーズは前から好きだったので、そこに並べてよかったです。ちなみに、シリーズ98冊目の『丸木船』(2001年刊)は出口先生によるものです。ここで扱う地図は、具体的な場所に関わる事業を実行するために作成されたもので、主に近世までの事例を対象としています。いわばそうした「働く地図」に注目したのは、それが人や社会が土地や空間といかに関わってきたのかを示す資料と考えたからです。ぜひ、みなさんも手に取って読んでみて下さい。(教員・鳴海邦匡)

『大学的神戸ガイド』の紹介

甲南大学で進めるプレミアプロジェクトの一環として、『大学的神戸ガイド』(2021、昭和堂)という本を出版しました。この本には歴史文化学科の全教員が参加し、六甲山の成り立ち、中世の錯綜した地域史、海と山を結ぶ近世の街道、港町神戸における文化的交流など、それぞれの専門的立場から私達にとって身近な神戸のことをアカデミックに紹介しています。本学図書館や歴史文化学科図書室にもこの本は置いていますので、ぜひ、手に取って読んでみて下さい。そして、読んだ感想や気が付いたことを、執筆した教員に伝えてほしいと思います。(佐藤泰弘)

イタリアでの在外研究(佐藤公美)

 2018年3月末から1年間、イタリアでの在外研究で二つの研究に取り組んできました。前半はアルプス南麓のトレンティーノ=アルト・アディジェ州の古文書館で古文書を読み込む日々で、中心は15世紀メラーノ(またはメラン)の一群の公証人登記簿とその関連史料。後半は中部イタリアのマルケ州フェルモ市を中心に14世紀の教会国家での反乱を研究し、様々な史料に出会う幸運にも恵まれました。いずれも日々史料に触れる喜びの中に「古文書館員なくして歴史家なし」と繰り返し思う日々。地道な史料保存と活用に取り組みつつ、研究者達への助力を惜しまない古文書館員の方々へに感謝し、きっとよい研究成果でお返しできたらと思っています。(佐藤公美)
  ※写真:フェルモ市の丘から海の見える眼下の丘陵地をのぞむ風景

歴史文化研究センターの設置と歴らぼ古文書班

甲南大学は、2017年5月1日に東大阪市と受託契約を結び、東大阪市域の古文書について整理・調査を行い、その結果を市民への普及を行うこととなりました。このプロジェクトを進めるため、5月1日付で「歴史文化研究センター」を東谷研究室内に設置しました。学外の研究者の参加も得て、調査成果を報告書としてまとめることを予定しています。市民への普及活動の一つとして、古文書の内容を解説したパネルを作成いたしました。作成の中心となるのは、文学部歴史文化学科の学生活動である「歴らぼ」古文書班の学生たちです。前期には、古文書を一文字一文字読み解き、内容を理解する作業を進めました。夏休みには、関係各所のフィールドワークを行うとともに、パネル原稿の作成に取りかかりました。パネルは、東大阪市市制施行50周年の企画として行われた「プレパネル展」でお披露目しました(2017年9月20日(水)~27日(水)、於東大阪市総合庁舎)。学生の成果を多くの人に見てもらいました。(東谷 智)

「歴史文化研究センター」について

甲南大学は、2017年5月1日に東大阪市と受託契約を結び、東大阪市域の古文書について整理・調査を行い、その結果を市民への普及を行うこととなりました。このプロジェクトを進めるため、5月1日付で「歴史文化研究センター」を東谷研究室内に設置しました。学外の研究者の参加も得て、調査成果を報告書としてまとめることを予定しています。市民への普及活動の一つとして、古文書の内容を解説したパネルを作成いたしました。

作成の中心となるのは、文学部歴史文化学科の学生活動である「歴らぼ」古文書班の学生たちです。前期には、古文書を一文字一文字読み解き、内容を理解する作業を進めました。夏休みには、関係各所のフィールドワークを行うとともに、パネル原稿の作成に取りかかりました。パネルは、東大阪市市制施行50の企画として行われた「プレパネル展」でお披露目しました(2017年9月20日(水)~27日(水)、於東大阪市総合庁舎)。学生の成果を多くの人に見てもらいました。(東谷 智)

本の紹介:『近代日本の海外地理情報収集と初期外邦図』

2017年2月、『近代日本の海外地理情報収集と初期外邦図』(小林茂編、大阪大学出版会)が出版されました。この本では、日清戦争までに日本軍が作製した初期外邦図の全容やその作製過程を明らかにしています。外邦図とは、第二次世界大戦以前に主に日本軍が作製した国外の地図を意味します。この本のなかで、鳴海も、2012年度の在外研究期間やその後も実施した米議会図書館や米公文書館で調べたことを書きました。現在、科研費・基盤(B)「日本における近代初期海図の集成と東アジア海域における西洋海図との相互関係」を得て、研究を進めているところです。(鳴海邦匡)

在外研究@ラオス(中辻享)

2014年度の後期にラオスに半年間滞在する機会に恵まれました。今回はこれまでに収集した空中写真を使って、ラオス北部農村の土地利用の変化を明らかにすることが目的でした。空中写真は1945年以降の7時点のものを収集しています。それを分析した上で、対象地域の人々に聞き取り調査を行い、当時の状況をあざやかに描き出そうと試みました。その結果、わかったことは1960-70年代のベトナム戦争がラオスの農村にも大きな影響を与えていたことです。当時、人々は戦火を逃げ惑ったり、無理やり軍隊にさせられたり、移住させられたり、大変な苦労をしていました。当時の人々の移住状況に関しては空中写真からも読み取ることができます。

私はこれまで十数年間同じ地域で調査を続けてきたのですが、戦争時代の状況についてはほとんど聞いていませんでした。今回の調査で、ラオス農村に対する見方が変わりました。(中辻享)

写真:ベトナム戦争時、ラオス最大の戦場となったジャール平原にて。

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