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マネジメント創造学部の広渡 潔先生へのインタビュー

知能情報学部 3年生 藤澤 舞さんが、マネジメント創造学部の広渡 潔先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

・本はよく読みますか。月に何冊程度ですか。

月に10冊程度です。
私の読み方は「見回す」感じです。Introduction とConclusionを眺めて、Contentsを見て  興味があるChapterをさらっと読みます。Introductionには著者の問題意識、議論の展開が書いてあり、Conclusionには展開した議論の要約と結論が書いてあります。ハーバード大学が学部生用にCritical readingという案内を出しています。そこでは、まず本をReadするのではなくLook “around″the text before you start readingとアドバイスしています。本を「見回し」ながら要約を掴み、本の印象を予備的に固めていくということです。万巻の書物を精読するには人生は短すぎます。

・どのジャンルの本を読みますか。

歴史関係が多いですね。人間には物事を理屈で割り切るタイプと歴史に還元して考えるタイプがいるかと思います。私は後者です。イタリアに5年、英国に7年いたこともあり、ヨーロッパの歴史、特に英国史が好きですね。英国という小さな島国が約400年をかけて世界に冠たる大英帝国を作り上げ、衰退していく歴史は味わい深いものがあります。

・人生を変えた本はありますか。

人生を変えた本はありません。ただ英国の名宰相チャーチルに関する本は好きですね。チャーチルは第二次世界大戦でナチスの脅威から世界を守った自由の守護者と言われています。同時に、インドなど植民地の独立を決して快く思っていなかった最後の帝国主義者でもありました。彼は19世紀の帝国主義を引きづっていたが故に社会主義やガンディーの独立運動を嫌いながら、それ以上に20世紀のヒトラーやファシズムの台頭に強烈な違和感を抱き、最後まで戦い抜きました。しかしその勝利の後に残ったのは大英帝国の衰亡でした。老境を迎え大英帝国に育てられ、その帝国の最後を看取っていきながら ‘all been for nothing…The Empire I believed in has gone.’と嘆くチャーチルに偉大な人間であるが故の悲劇を感じますね。「徒然草」に「死は前よりしも来たらず、かねて後ろに迫れり」とありますが、チャーチルの成功の裏に潜む挫折と悲嘆に、何がしかの死を抱いて生きる人生というものを如実に感じます。

・今の一般の大学生におすすめしたい本はなんですか。

「論語」「万葉集」やプラトンの「国家」などの幾世代もかけて読み継がれた古典のうちひとつを座右の書としてみてはいかがでしょうか。

・所感

今回、別のキャンパスに訪れたことを新鮮に感じました。また、広渡先生の専門(経済史:歴史的な史料を用いて経済社会を深く理解することを目指す学問分野)や歴史についてお話を聞いたことは自分の中で財産になったと思います。

 

 (インタビュアー:知能情報学部 3年生 藤澤 舞)

西田 英一(法学部)『声の法社会学』

<教員自著紹介>

日常会話から示談交渉・言い争いまで、ふだん私たちは声と言葉を使っていろんなやり取りをしています。一つの口蓋から出る<声>と<言葉>。自分の体から出る自分の声と、自分だけのものではない言葉。
いったい、<声>とからだと言葉はどう関係しているのか。そして、<声>が紛争解決場面でどんな働きをし、法とどう関わるのか。本書は、事故の被害者・加害者・関係者の声のぶつかり合いに焦点を当てたフィールドワークを通して、こうした謎に迫ります(第11章では、児童74人が犠牲となった石巻市立大川小学校の津波事故と訴訟の意味について詳しく分析しています)。

■『声の法社会学』
■ 西田 英一[著],    北大路書房 , 2019年3月
■請求記号 321.3//2059                                         ■配架場所 図書館1F 教員著作
■著者所属   西田 英一(法学部 )

西野 亮廣 著 『新世界』

 

知能情報学部 4年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 新世界
著者: 西野亮廣
出版社:KADOKAWA
出版年:2018年

お笑い芸人キングコング西野が幾度となく挑戦を重ねてきたことで見えた現代のお金と信用、そしてこれからの生き方を書いている。

世の中は貯金時代から貯信時代へと移り変わり始めている。これがこの本のひとつの大きなテーマである。このテーマをもとに書かれている西野亮廣の創る「地図」の話がとても魅力的であり、これについて書きたいと思う。

近年は情報社会で、あらゆる情報が行きかっている、飲食店だとどこもだいたい同じ値段でメニューやサービスが均一化している。「高くてまずい店」などいまどき存在しない。そうなったときどの店にもハズレがないので店を選ぶ基準がどの店にいくか?ではなく誰の店に行くか?になってくる。駅から5分のよくわからない人が働いている店より、駅から10分の知り合いが働いている店を選ぶだろう。そうなると自分の中の地図というのは遠いところにあるはずの場所が近くなる。

こうなってくるといよいよ地球の形が大きく変わる。

当然自分の持っているその「地図」は自分固有のもので同じものは存在しない。そんな新たな「地図」が生まれようとしている。というか西野亮廣さんはすでに作ってる。店検索ではなく人検索。

この地図の話を聞いたとき自分の中の概念が壊れた。新たな世界がもう始まっているという期待に完全に胸が躍ってしまった。今の話はこの本のほんの一幕で西野さんが組織しているオンラインサロン(ファンクラブのようなもの)の話や、クラウドファンディングの仕組みやそれを使い手掛けている事業について書かれている。現在でも進行形でクラウドファンディングによって集められている、西野さんの著書えんとつまちのプペルの美術館の建設という取り組みに対して約6000万円ものお金が集まっている。

世の中に新しいものを生み出し挑戦し続ける西野亮廣さんに少しでも興味がある人はぜひともこの本は読んでいただきたい。

中田 敦彦 著 『天才の証明』

 

 知能情報学部 4年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 天才の証明
著者: 中田敦彦
出版社:日経BP社
出版年:2017年

タイトルの天才の証明とはすべての人間が天才だと証明してやる、というメッセージが込められていますが、これを読んで中田敦彦の天才も同時に証明されてしまうという事態が起こってしまった。そんな本でした。

リオネル・メッシがサッカーの天才だと言われるのはメッシが天才だからではないサッカーという競技にメッシがフィットしているから天才だ、この世にスポーツがアメリカンフットボールとバスケットボールしかなければメッシは天才にはなれなかったはずだと中田敦彦は言います。ある場所では無能な人間がある場所では天才と呼ばれる、その逆も然り。誰しもがその天才と呼ばれる場所は存在する、その「自分の持っている天才」、「自分が天才と呼ばれる場所」を探そう、というのがこの本のテーマだと感じました。

優れるな、異なれ。という見出しがありました。才能があるということは優れていることとは別の話です、例えばオリラジの藤森さんはRADIOFISHというグループでボーカルとして活動していますが、特別に歌が上手い訳ではありません、しかし特徴的な声を持っています。しばしば有名はアーティストは歌唱力、も当然必要ながら圧倒的唯一無二も声を持っている人が有名になりがちです。歌唱力だけで言えば上手い人はもっといるはずです。そういうオリジナリティーのほうが大事だと。

しかし自分のオリジナリティーを見つけるのは難しく他人の目が必要です。自分のことは他人にしか分からない、そう中田さんは言っています。自分では普通だと思っていることが案外他人からすれば〇〇ってこうだよね、とか言われることっていくつか経験あったりするはずです。そういうのは全部オリジナリティーを見つけるヒントになっています。

このように自分自身を無理に変えようとせず、ルールや視点を変えることに知恵を使っていくことをこの本には書かれています。

中田さん自身のお笑いの世界を例に生き抜くための方法論や、PERFECT HUMANが生まれた経緯についてなども書かれています。自分の価値について疑問を持ったり、自分の進む道に迷っている人には是非おすすめする本でした。

読書猿著 『問題解決大全』

 

 文学部 3年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 問題解決大全
著者: 読書猿
出版社:フォレスト出版
出版年:2017年

近年、出版される本の数は星の数ほどあるが、その中から真に価値のある一冊を選び出すことは容易ではない。そんな状況において、2017年と比較的最近発売され、内容の優れた本として、この『問題解決大全』を上げたい。

本書は、そのタイトルの通り、人生において降りかかる様々な問題に対する解決方法の発見を提案する実用書だ。だが、それだけでなく、問題解決に至るまでのプロセスを様々な実例や問題解決の歴史を振り返ることでその本質まで掘り下げるという人文書のような一面も持ち合わせている。そのため、ハウツー本や自己啓発本を嫌うような方にもオススメできる内容となっている。

例えば、本書291ページに掲載されている「リフレーミング」を紹介する。これは、ものの見方を変えることで行動や状況を変え、認知を巻き込む悪循環から抜け出すという解決方法のことだ。だが、本書はその解説だけでなく、リフレーミングをわかりやすく伝えるため、事例として『トム・ソーヤの冒険』のペンキ塗りの話を上げ、さらにリフレーミングの起源と展開まで述べている。そのため、解決方法の理解だけでなく、一種の教養の勉強にもなり大変有意義なものとなっている。

ちなみに、作者である読書猿氏は、ギリシャ哲学から現代文学まで膨大な本を読んできたという読書の鬼であり、知識人である。そのような人物だからこそ書けたのだろう圧倒的な知識量の豊富さが本書から読み取ることができる。

実を言うと、私自身、こういった実学的な書物は毛嫌いするたちだったのだが、本書は様々な思考能力を得られるという観点からも他の人にオススメできるものだった。そのため、人生のハードルを乗り越えたいと思っている方はもちろん、実用書をあまり読まないという方もぜひ、本書を一読していただきたい。

有吉 佐和子著 『助左衛門四代記』

 文学部 3年生 匿名希望さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名: 助左衛門四代記
著者: 有吉佐和子
出版社:新潮社
出版年:1965年

言うまでもなく、小説とは創作のことだ。しかし、そこから感じられる雰囲気は本物でなくてはならない。そんな中、有吉佐和子の作品からは、本物の雰囲気を感じることができる。

有吉佐和子の作品は、『悪女について』、『恍惚の人』、『私は忘れない』、『華岡青洲の妻』、『複合汚染』など多様なテーマを取り扱っているが、そのどれもが本物の雰囲気を出している。そしてそれは、この『助左衛門四代記』においても同様であるといえる。

本作は、紀州海士郡木ノ本の大地主・垣内家の四代にわたる壮大な歴史を描いた物語である。垣内家の人々と、それを取り巻く村民たちを見事に描き出している。

物語は、冒頭にて初代助左衛門の母・妙が巡礼の老を怒らせてしまい、「7代まで祟ってやる」といわれるところから始まる。この言葉は、物語の登場人物たちだけでなく、読み手にも重い現実としてのしかかり、あっという間に物語に引き込まれていく。

また、本作に引き込まれる理由としてもう一つ、有吉の描く女性描写の素晴らしさがあげられる。本書は、四代の助左衛門たちに焦点を当ててはいるが、真の主人公はその妻たちであるといえる。

初代・助左衛門の妻・妙は朗らかな性格で誰からも好かれ、村民からも広く慕われている。長男と次男の嫁取り問題に妙案を出すなどし、垣内家に繁栄をもたらす。

二代目・助左衛門の妻は由緒ある神社、日前宮紀伊家の三女、円。彼女は高い教養を持つが、自分では一切家事をやらない。だが、不慮の事故で長男を亡くして以来、垣内家のために心血注ぎ働くようになる。

三代目・助左衛門の妻・梅野は円とは対照的に「男おんな」と呼ばれるほどの醜女で、さらに垣内家の仇敵、木本家の娘だった。しかし、円の輿入れが成功し、2つの家の確執が氷解。垣内家の繁栄は確固たるものとなる。

四代目・助左衛門の妻・小佐与は男子を生まなければというプレッシャーから命を落としてしまう。そこで、後添えとして八重という女性が妻となる。だが、彼女は女の意地・プライド・エゴを面々にみなぎらせた女で、有吉作品らしい意地の悪い姑を演じ切る。

四代250年もの歴史を無駄な文なく淡々と描き上げ、それでなお読者を引き付けてやまないというのには、有吉佐和子の文章力がずば抜けていると言わざるを得ないだろう。