研究内容

■ナノ構造熱電変換材料の精密化学合成

人類の持続的発展において、エネルギーを無駄なく有効利用することは最重要課題です。現在、我々が生産する熱エネルギーのうち大部分が未利用熱として環境中に放出されています。この熱マネジメントに関する技術開発においては、熱を電気に変換する「熱電変換材料」の性能が低く、近年の環境・エネルギー問題に対して訴求できる技術開発には至っていません。我々は、有機−無機複合ナノ材料の精密合成に関する研究から着想を得た「金属ナノ結晶を前駆体としたバルク焼結体への高密度欠陥導入技術」を基盤技術として用い、シングルナノサイズの有機−無機複合ナノ結晶の焼結過程における結晶成長ダイナミクスを解明し、現行性能を凌駕する革新的熱電変換材料の開発を行っています。

■化学的手法による新しい薄膜形成技術の開発

近年、エレクトロニクスデバイス製造における要素技術となったポリイミド樹脂上への微細銅配線の形成プロセスにおいては、次世代LSIおよびプリント配線板(PCB)に要求される配線の微細化および製造工程の簡略化に対応した新しい技術の開発が急務となってきています。このような要求のもと、我々はポリイミド樹脂上への新しい金属薄膜形成プロセスとして、樹脂表面の化学的改質およびイオン吸着を利用したダイレクトメタラリゼーション法を提案しており、薄膜形成過程および金属・樹脂界面の構造制御に関する検討を行っています。 また、有毒添加剤を含まない新規無電解めっきプロセスの開発も企業との共同研究として進めています。特に貴金属ナノ粒子を触媒とした新規無電解めっき浴の開発ならびに光触媒を利用した新しいめっきプロセスの開発を行っており、それぞれの技術を組み合わせることにより次世代エレクトロニクスデバイスに対応したプロセス技術の確立を目指しています。

■界面での選択的自己組織化による多孔性有機金属錯体の作製

近年、金属イオンと有機リンカーから構築される多孔性有機金属錯体(Metal-OrganicFrameworks; MOFs)が注目を集めています。MOFは有機分子にて金属イオンをリンクさせていることから柔軟で規則性活性点を有するナノ空間が実現でき、様々な気体や分子を選択的に細孔内に吸着することが報告されています。一般的にMOFは水熱合成法により合成されますが、本研究では金属イオンと有機リンカーの自己組織化現象を利用し、特定の材料上(金属ナノ粒子や高分子基板)にてMOFを成長させることにより従来法と比較して簡便にMOF合成が可能になると考え、その新規手法の開発を行っています。

 ■多孔性金属錯体内への機能性物質の固定化と機能開拓

多孔性金属錯体は、金属イオンと有機配位子が自己集合することで組み上がる結晶性の固体であり、ガスの貯蔵材料としての利用は勿論のこと、近年では、機能性物質を包摂するためのホスト材料としても注目されています。本研究では、多孔性金属錯体内に機能性物質を簡便かつ安定的に包摂するための新規方法論の開発とそれを用いた触媒やセンサー材料の開発を行なっています。