甲南大学 人間科学研究所

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2026/4/7
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【報告】第7回九鬼周造記念シンポジウム 「九鬼周造のマルジナリア ― 余白を読む」

2026年3月14日、甲南大学人間科学研究所では、第7回九鬼周造記念シンポジウム「九鬼周造のマルジナリア――余白を読む」を開催しました。基調講演には、雑誌『群像』に九鬼周造論を連載中の美学者・星野太氏(東京大学)を迎え、「九鬼周造のマルジナリア」と題してご講演いただきました。講演では、本学九鬼周造文庫所蔵資料のうち、星野氏自身が実地に調査した九鬼の蔵書への書き込み(マルジナリア)が数多く紹介されました。星野氏は、ベルクソン、ハイデガー、ギュイヨーらのテクストを九鬼がいかに読み、そこからいかなる思想的関心を形成していったのかを具体的に跡づけ、九鬼思想の生成過程を鮮やかに描き出しました。とりわけ、九鬼周造文庫が九鬼研究にとってかけがえのないアーカイヴであることが、あらためて強く印象づけられました。

これを受けて、指定討論者の小田原弘征氏(京都大学)は、「余白を読む」ことの意義を九鬼思想そのものの再検討へと接続し、とりわけ九鬼哲学において前景化されてこなかった「自由」の問題に光を当てました。小田原氏は、草稿や研究ノート、蔵書への書き込みを手がかりに、九鬼の思索の通奏低音としての「自由」概念を浮かび上がらせ、九鬼とフランス・スピリチュアリスムとの関係にも及ぶ刺激的な議論を展開しました。

当日は会場との質疑応答もきわめて活発で、九鬼哲学における自由概念や他の思想家との影響関係などをめぐって、登壇者と参加者のあいだで充実した議論が交わされました。とりわけ印象的であったのは、星野氏、小田原氏の双方が、九鬼周造文庫のようなアーカイヴの保全と継承の意義を強調していたことです。九鬼周造文庫が、単なる資料保存の場にとどまらず、九鬼思想をあらためて読みなおすための学術的基盤であることが、今回のシンポジウムを通じて明確に示されました。

また、本学図書館による九鬼周造文庫の保全・管理、ならびに図書館司書今野智子氏をはじめとする関係各位の尽力が、このような研究の進展を支えていることも、あらためて確認されました。会場では、講演やコメントで言及された関連資料の展示も行われ、九鬼周造文庫の学術的価値を広く共有するとともに、資料研究と思想研究とを往還させる今後の九鬼研究の可能性を示す、きわめて意義深い機会となりました。

(報告・ファヨル入江容子)

 

実施日:2026年3月14日(日)14:00~16:00
講 師:星野 太(東京大学)
コメンテーター:小田原 弘征(京都大学)
企 画:ファヨル入江 容子
参加者:18名(一般16名、学生2名)