待ちに待った大阪・関西万博が開幕!
2025年版・関西経済の未来予測

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2025.6.23
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大阪・関西万博の開幕からおよそ2か月、各国のパビリオンや多彩なイベントが評判を呼び、日に日に来場者が増え、大きな賑わいを見せています。思い返せば数年前、新型コロナウィルス流行によりインバウンド需要が落ち込み、関西の経済は瀕死の状態に・・・現在の関西経済の状況は?大阪・関西万博の経済効果は?甲南大学経済学部名誉教授でアジア太平洋研究所において日本経済および関西経済の短期予測などを研究されている稲田義久先生に、4つの視点から伺いました。

 

 

Contents

・コロナ後の日本経済と関西経済の現状

・大阪・関西万博が開幕、現状は?

・万博閉幕後の未来と予想

・甲南OBとの万博のつながり

 

 

 

 

コロナ後の日本経済と関西経済の現状

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

まず、日本および関西経済の現状について教えてください。

 

 

 

稲田 義久 先生

 

大阪・関西万博が開幕して3ヶ月を迎えようとしていますね。まず、関西経済について見ていきましょう。このグラフは、全国に占める関西2府4県の経済(実質ベース)の比率を示しています。1970年代は、2割近くを関西経済が担っていましたが、オイルショック、バブル崩壊後にはさらに低迷し、2006年度には16%まで低下。2014年度には15.8%と底を打ち、2022年度には16.3%まで回復しました。関西はインバウンドのシェアが高いので、インバウンドの増加が回復に寄与してきたと考えられます。

 

 

 

 

関西経済は全国を上回るスピードで回復傾向に

また、コロナ禍前の水準に回復したのが、全国は2023年度だったのに対して、関西は2022年度と、関西が全国を上回るスピードで回復が続いているという分析結果もあります。各国に比べると日本の経済的回復は非常に弱いのですが、意外と関西が早く脱出できたということです。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

関西経済は順調に回復しているのですね!

 

 

稲田先生:はい、これも、おそらくインバウンドが急速に回復した結果だと思います。そこに水を差すのが、トランプ関税です。もう大変ですよね。関税を上げるわけですから、当然貿易に影響を与えますし、企業のサプライチェーンにも影響を与えます。また、トランプさんは日替りで政策を変えますから、先が見えない。そうすると、今動いたら損するかもしれないということで投資の先送りや生産の見送りが起こり、企業や家計に与える影響も大きくなります。

 

そんな時代だからこそ、「大阪・関西万博が関西の経済を下支えしてくれるのではないか!?」という期待が高まっているのでしょう。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

ここ数年、関西はインバウンドが増えている印象があります。

 

 

2025年4月は過去最多の99.2万人が関西を来訪

稲田先生:確かに23、24年はインバウンドが順調に回復してきました。関西を訪れる外国人客数を見ると、2025年1-3月期に関空経由で入国した外国人客数は263.5万人でした。足下4月単月では99.2万人となり、過去最多記録を更新しています。国籍別にみると2月は、アジアからの旅行客が圧倒的で9割を占めています。中国が25.1万人、韓国が22.8万人で、この2カ国だけで訪日客数全体の約6割に及びます。百貨店の売上も16四半期連続で前年をずっと上回っています。インバウンドによる経済効果が表れていることに間違いありません。

 

 

 

 

 

 

 

大阪・関西万博が開幕、現状は?

 

KONAN-PLANET 記者

 

大阪・関西万博の来場者数も気になるところです。

 

 

稲田先生:そうですね。では、大阪・関西万博について詳しく見ていきましょう。この表は、1日当たりの来場者数を2005年の愛・地球博と比較したものです。オレンジの棒グラフが大阪・関西万博、グリーンの棒グラフが愛・地球博の来場者数です。

 

 

 

愛・地球博では、最初は少しずつ増えて、6月の梅雨時や夏になると頭打ちになり、閉幕が近づく9月や10月はものすごいスピードで来場者が増えています。おそらく、大阪・関西万博も、このようなパターンで伸びていくと思われます。

 

 

 

2820万人の目標達成には1日平均15.3万人が必要

稲田先生:2025年日本国際博覧会協会(以下、万博協会)は、開催期間の来場者見込みを2,820万人(一般来場者数でスタッフは含まれない)とみています。これを達成するためには1日平均15.3万人来ないといけないのですが、第7週(5月31日現在)で平均1日13.4万人ですから、まだ1.9万人足りない、ということです。ちなみに、愛・地球博は第9週で1日平均11.9万人に達していますから、大阪・関西万博にとっても第9週の結果が重要ということになります。ここ、皆さん覚えておいてくださいね。

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

チケットの売れ行きはどうなのでしょう。

 

 

稲田先生:5月23日時点のデータですが、累積のチケット販売枚数は1240万枚ぐらい売れています。事前には970万枚が、万博が始まって271万枚が売れています。注目は、通期パスの販売が堅調に推移しているということです。この背景には、一日券の来場者の満足度が高かったことがあります。つまり、「また来たい」と思う人が多かったということですね。私はすでに5回行きましたが、本当にいいコンテンツがたくさんありました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

大阪・関西万博の経済効果はどのくらい出ているのでしょう。

 

 

稲田先生:まず、万博のアルバイトやパートの時給を見ると、明らかに全国平均よりも高くなっています。ガイドスタッフは1,800円、警備員の時給は2,000円を超えている。これは短期雇用ですが、通常よりも2割近く高い時給ですから、万博開幕による雇用及び所得創出効果が一定程度出現していると言っていいでしょう。

 

 

来場者の増加と、消費活動に期待

稲田先生:万博の経済効果については、2つの側面があります。1つは、万博によって発生する工事や雇用が増えて経済が拡大する関連事業費、もう一つは万博の来場者がお金を落とすことによって発生する消費支出です。関連事業についてはパビリオン等がほとんど完成していますので、この経済効果は2024年に発生しています。ですから、これから問題になるのは2025年の来場者の消費支出、加えて、ここで働く人たちの所得がどう増えるか、というところになります。

 

 

 

 

真ん中のグラフは、企業の所得や我々の賃金(付加価値)がどれだけ増えるかという万博の経済効果の試算を表しています。いずれにせよ、先ほどインバウンドの話もしましたが、国内客とともに海外客がどれだけ来てくれるかが重要なんですね。このように、日本経済においても、世界経済全体から見ても、大阪・関西万博は大きなインパクトがありますので、うまく盛り上げていくことが重要になります。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

となると、やはり大阪・関西万博に来てもらわないと、ですね。

 

 

関西全体を巡る「拡張万博」をもっと盛り上げたい

稲田先生:「万博楽しかったよね、じゃあもう1泊して京都行こうか」となればなおいいですよね。我々は関西全体をパビリオンに見立てて、いろんな場所に行ってもらうことを「拡張万博」と呼んでいます。万博協会は2,820万人の来場者数を目標としていますが、そのうち関西以外の宿泊を伴う日本人は910万人程度、海外客は350万人と想定しています。彼らの宿泊数や消費単価が上がってくれば、効果も大きいということです。

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

2年前のインタビューで、先生は

 「ブランディングの確立」が関西経済のカギになる

とおっしゃいました。その点、どうでしょう。

 

 

「大阪・関西万博」としたことによる経済効果も

稲田先生:今回、大阪万博ではなく、「大阪・関西万博」としましたよね。これにより、「関西」というブランドが確立されたのではないでしょうか。京都、大阪以外にも、関西には優れたメニューを提供する県が多くあります。さまざまな興味を持っている人たちがそこを訪れて、遊び、楽しむ。そういう意味で、万博を契機として関西のブランド力を上げ、世界的なブランドにしていけるのではないかと思います。

 

 

 

 

万博閉幕後の未来と予想

 

KONAN-PLANET 記者

 

万博の閉幕後、どのような未来を予測しますか

 

 

中長期的に「万博レガシー」をどう活かすか

稲田先生:その上で、万博では閉幕後の遺産(レガシー)を、中長期的に日本経済や関西経済を底上げし、我々の賃金の底上げに上手く使っていくのかが、課題です。今回の万博のテーマは課題解決型ですので、未来社会ショーケース事業では、スマートモビリティやフューチャーライフ(食、文化、ヘルスケアなど)に関する分野で今後成長が見込まれるのではないかと考えています。

 

 

 

 

 

 

甲南OBとの万博のつながり

 

KONAN-PLANET 記者

 

これから万博に行く人たちにメッセージをお願いします

 

 

大阪・関西万博はビジネスマッチングの絶好の場

稲田先生:やはり、この歴史的なイベントに足を運び、しっかりつぶさに見ることを薦めたいですね。特に学生さんは、ひょっとすると起業に関するヒントが得られるかもしれません。

 

万博は、B to C、つまり消費者にとっても重要なんですが、B to Bの側面もあります。例えばサウジアラビアやオーストラリア等のパビリオンの裏にはビジネススペースがあり、日本の企業と海外の企業が商談しています。関西の中小企業も、海外の企業とビジネスマッチングを促進する試み(大阪海外ビジネスワンストップ窓口)がされています。ですから、学生さんも、単に楽しむだけではなくて、ちょっと奥に行けば、将来自分たちが入っていくビジネスの世界があるということを意識すると面白いかもしれません。

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

大阪・関西万博では、

甲南のOBの方々も活躍されているそうですね!

 

 

稲田先生:「2024オール甲南の集い」では、甲南大学OBの鳥井信吾さんが、サントリーが共同出店している「水と空気のスペクタクルショー アオと夜の虹のパレード」について語っておられました。また、立野純三さんは大阪を中心にビジネス界で頑張っておられますが、ヘルスケアパビリオンで「リボーンチャレンジ」として面白いアイディアを持った大阪の中小企業を集めて展示をされています。甲南大学や学生たちも、万博に関連する取り組みを行っていますので、そのあたりもチェックして、ぜひ万博に足を運んでください。

 

 

 

 

 

 

水と空気のスペクタクルショー アオと夜の虹のパレード

サントリーホールディングス株式会社(代表取締役副会長:鳥井信吾)とダイキン工業株式会社の共同出展

 

大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」出展

運営「中小・スタートアップ出展企画推進委員会」(委員長:立野純三・大阪産業局理事長、大阪商工会議所副会頭)

 

CUBE「大阪・関西万博にむけて~インバウンド需要の創造」

 

アート・ドキュメンタリー映画「EXPO’70 前衛の記憶~アコを探して」

関西パビリオン(兵庫県ゾーン)で上映

 

関西湾岸SDGsチャレンジ

TEAM EXPOパビリオンにて出展

 

関西女性活躍推進フォーラム研究成果講演

関西パビリオン多目的エリア内で講演

 

 

 

今回お話しを聞いた人
甲南大学 経済学部 稲田義久 名誉教授

神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程を単位修得退学後、立命館大学経済学部助教授を経て、1995年より甲南大学経済学部に着任。甲南大学副学長、甲南大学総合研究所所長を歴任。博士(経済学)。 現在はアジア太平洋研究所研究統括兼数量経済分析センター センター長。 主なテーマは日本経済および関西経済の短期及び超短期予測、関西地域の成長牽引産業の展望、計量経済学、環境経済学、政策シミュレーション。

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