「東京2025デフリンピック」でメダルを目指す!
バドミントン日本代表 太田歩選手と甲南大学の交流
バドミントン日本代表 太田歩選手と甲南大学の交流
聴覚障害者の国際総合スポーツ大会「デフリンピック」をご存じでしょうか。2025年11月15日から、日本では初めてとなる「東京2025デフリンピック」が開催されます!甲南大学は兵庫県との「障害者スポーツ応援協定」により、バドミントン日本代表・太田歩選手の活動をサポートしてきました。バドミントン部で合同練習を行う中で学生たちも大きな刺激をもらっています。今回は、太田選手と甲南大学のつながりについてインタビューをお届けします。
Contents
・ 「東京2025デフリンピック」とは
・ 【太田選手インタビュー】 東京大会への意気込み
・【鵤木先生インタビュー】 甲南大学と太田選手の交流
・【学生コメント】 太田選手から学ぶこと

「東京2025デフリンピック」とは

KONAN-PLANET 記者
まずは、デフリンピックについて紹介しましょう!

デフリンピックとは、「デフ+オリンピック」。デフ(Deaf)とは、英語で「耳がきこえない」という意味です。オリンピック、パラリンピックと並び称される歴史ある大会で、4年ごとに開催されます。ルールはオリンピックとほぼ同じですが、競技中のスタート合図は光や手旗を使い、国際手話を活用するなど、耳の聞こえない人のために様々な工夫がされています。デフリンピックは、障害の有無を超えてスポーツの魅力を伝える場であり、世界中の選手と観客をつなぐ架け橋となっています。

2025年11月、東京を中心とする関東各地で「第25回夏季デフリンピック」が開催されます。1924年にフランス・パリで第1回大会が開かれてから100周年という節目にあたり、日本での開催は初めてという記念の大会となります。大会には、世界約70〜80の国と地域から約3,000人のアスリートが集結。陸上、バドミントン、バスケットボール、水泳をはじめとする21競技が実施され、熱い闘いが繰り広げられます!

\ 詳しくはオフィシャルHPへ /

甲南大学は、兵庫県と2017年に「障害者スポーツ応援協定」を締結しました。この協定に基づき、学生や教職員が一体となって障害者スポーツを支援する体制を整えています。この取り組みでは、練習拠点の提供や合同練習の実施、イベントへの参加などを通じて、競技者の活動を側面からサポートしています。また、学生にとっては、障害者スポーツの現場で直接学ぶことができる貴重な機会となっており、スポーツを通じた多様性を尊重する社会の実現について考えるきっかけにもなっています。
【太田選手インタビュー】 東京大会への意気込み
続いて、バドミントンの日本代表・太田歩選手にインタビュー。太田選手は東京大会で3大会連続のデフリンピック出場となります。今大会への意気込み、甲南大学での練習についてお聞きしました。

KONAN-PLANET 記者
バドミントンを始めたきっかけについて教えてください。

太田 歩 さん
子供の頃に姉とよくバドミントンで遊んでいて、とても楽しくて、小学校五年生の時に地域のバドミントンクラブに参加したのがきっかけです。それから高校でバドミントン部に入り、本格的に競技を始めました。

KONAN-PLANET 記者
今年、初めて東京でデフリンピックが開かれます。
太田選手は3度目の出場となりますね。
太田さん:2017年のトルコ大会では、団体戦は予選敗退、個人はベスト16という結果でした。結婚、転職、コロナ、子育てと様々な人生の岐路を迎えながら、家族や仲間に支えられ選手として活動を続け、2022年のブラジル大会では団体で銀メダルを獲得できたことは嬉しい思い出です。個人のダブルスはベスト4まで勝ち進んだのですが、日本選手団の中でコロナが拡大して棄権することになり、悔しい結果で終わりました。あと1回勝てばメダルという状況でしたし、当時はパフォーマンス的にも誰にも負けないという気持ちがあったので悔しくて泣きましたね。


KONAN-PLANET 記者
それは悔しかったでしょうね・・・
今大会の目標を教えてください。
目指すは、団体戦と個人での金メダル
太田さん:ひと言で言えば、「金メダル」です。2022年デフリンピック後は子育てに専念するためにラケットを置きましたが、ブラジル大会での悔しさが心の片隅にあり、2025年に東京でデフリンピックの開催が決まった時に、もう一度メダルに挑戦したいという思いが湧き、家族と相談して出場を目指すことにしました。鵤木先生とも相談し再度、甲南大学の練習に参加させていただけるチャンスを頂けたことも大きな後押しとなりました。1年のブランク、熾烈な選考リレーを乗り越え代表を掴み取りました。今大会で代表から引退することを決めていることもあり、メダルを取っていい形で終えたいという思いがあります。


KONAN-PLANET 記者
聴覚障害者スポーツのバドミントンの魅力は、
どういうところにありますか
音のない世界でプレーすることの難しさ
太田さん:一般のバドミントンとルールは同じですが、デフの大会では補聴器を外してプレーするというルールがあります。補聴器を着けていると反応速度が違ってくるので平等にするという意味があります。個人差がありますが、補聴器の有り無しでプレーするとシャトルへの反応速度が違うと感じます。プレー中は何も聞こえないので、自分の目に頼るしかありません。音のない世界でどういうふうにプレーしているのか、それが見所でもあり魅力かなと思っています。

KONAN-PLANET 記者
ダブルスだと二人でプレーするので、
なおさら難しそうですね。
太田さん:ダブルスでは、パートナーがどこにいるかわからないので、目で追ったり、予測しながら動く必要があります。また、パートナーとは手話でコミュニケーションをとるので、手話でどんなふうにやりとりをするのかも見ていただきたいですね。


KONAN-PLANET 記者
甲南大学との交流についても聞かせてください。
バドミントン部と一緒に練習をされているそうですね。
太田さん:はい。2022年のブラジル大会の前から練習に参加させてもらっています。私はフルタイムで仕事をしているので、週に一度、夕方から甲南大学で練習をさせてもらって、それ以外は社会人クラブだったり、いろいろ調整しながら練習しています。

KONAN-PLANET 記者
甲南大学の学生さんとの練習はいかがですか?
太田さん:甲南大学のバドミントン部はレベルも質も高くて、個々の選手のプレースタイルも違っているので、いつも刺激をもらっています。また、試合が終わった後に改善点や、どこが良かったか、どこが悪かったかなど、細かくアドバイスをいただけるのが本当にありがたいです。


KONAN-PLANET 記者
これまで並々ならぬ努力があったと思います。
太田選手が今までやってこられた原動力は、どこにありますか。
太田さん:ひとつは、前回の大会での悔しさや悲しみが今もまだ残っているので、それをいい形に変えたいという想いが励みになっています。もう一つは、支えてくれる家族や仲間、甲南大学の方々など、私をサポートしてくれるみんなにいい報告をしたい。その想いが、辛いことがあっても頑張ろうというパワーになっています。

KONAN-PLANET 記者
東京大会でのご活躍を応援しています!
最後に読者の方々にメッセージをお願いします。
太田さん:東京大会では、障害の有無にかかわらず、個々の選挙が自分の力を出して精一杯プレーをしている姿をぜひ見てもらいたいです。 そして、誰か一人でも「推し」を見つけてください。そうすると応援にも熱が入りますし、大会全体が盛り上がることにもつながります。
補聴器を外しているので歓声は聞こえませんが、選手は観客の姿を見て気持ちを高めています。また、これは聴覚障害者スポーツの特徴でもありますが、応援の拍手が聞こえないので、両手を挙げて、ひらひらとさせて拍手を表現するんですね。これをしていただくと応援が伝わってきますので、覚えていただけたら嬉しいです。

デフリンピックの観戦は入場無料で、どなたでも見ていただけます。YouTubeでも試合がライブ公開されると聞いています。ぜひ、試合会場で、オンラインで、応援をお願いします!
【鵤木先生インタビュー】 甲南大学と太田選手の交流
続いて、全学共通教育センター教授であり、バドミントン部顧問の鵤木千加子先生にお話を伺いました。


KONAN-PLANET 記者
太田選手をサポートするようになった
経緯について教えてください。
鵤木 千加子 先生
甲南大学は、兵庫県と「障害者スポーツ応援協定」を締結し、その一員として支援活動に参加しています。この協定は、兵庫県が障害者スポーツ推進の一環として多数の大学や企業、団体と応援していくというものです。この応援協定の第一号として甲南大学に来て下さったパラアスリートの正垣さんが、太田さんを紹介してくださいました。

KONAN-PLANET 記者
鵤木先生はバドミントン部の顧問でもあります。
一緒に練習する学生にはどのような影響がありますか。
鵤木先生:太田さんは本学の学生がいい練習相手になるとおっしゃってくださいましたが、お互い刺激をし合っています。誠意を持って競技に取り組んでいる姿勢を見せていただいています。それを言葉だけでなく、太田さんは態度で示してくださるというところがとても大きいと思います。
また、一緒に練習していく中で、学生が自ら気づくこともあります。例えば試合中の得点のコールですが、太田さんが試合をする時には得点板を太田さんが見えるように置いて伝えるというのは学生たちの工夫のひとつです。そういうリアルな経験の中から、自分たちで気づき、行動することが学生の成長にもつながっています。

KONAN-PLANET 記者
鵤木先生から太田選手へのメッセージをお願いします。
鵤木先生:私も学生時代から競技をやっており、実業団チームや日本代表としてプレーしていたのですが、頑張ることがどれだけ大変なことかを知っている人が「頑張ります」と言うのは、本当に覚悟がいることだと思っています。ハンディキャップもあり、生活をしながら自分で環境を作って、それでも頑張るという太田さんを私たちは応援するだけです。もちろん金メダルを取ってほしいという気持ちはありますが、太田さんの願いがかなうのを見たいという気持ちです。

KONAN-PLANET 記者
障害者スポーツの普及や支援における、
甲南大学の役割はどういうところにあるのでしょう
鵤木先生:甲南大学では、年に1回、障害を持つ方との合同練習会を行っています。学生がパラアスリートの正垣さんと連携をしながら企画を立て、実践して交流を深めています。障害者スポーツの方々は練習場所の確保が難しく、遠方から来てくださる方もいらっしゃいます。そういうところのつなぎにもなっているのかなと思います。そして、何より学生が、こうした機会を得て社会に出ることに意味があります。卒業後も地域でバドミントンを続けている卒業生も多いので、このような経験を持った人たちが地域で活躍するということも大事なことだと思いますね。
【学生コメント】 太田選手から学ぶこと
太田選手との練習がチームにどのような気づきや学びをもたらしているのか、甲南大学バドミントン部の主将をつとめる去来川太智(いさがわ たいち)さんに聞きました。

KONAN-PLANET 記者
太田選手と一緒にプレーして、どんなことを学んでいますか。

去来川 太智 さん
毎回の練習に対して、課題を持って取り組むところです。わからないところや、質問など積極的に聞く姿勢が印象的でした。また、一緒にプレーして、障害を持つアスリートは健常者よりも人間力の強い方々の集まりだということがわかりました。障害を持っているからといって決して「できない」わけではなく、工夫しながら取り組んでいる姿勢に尊敬の念を抱いています。

KONAN-PLANET 記者
太田選手との交流で、どんな気づきがありますか。
去来川さん:太田選手は、デフバドミントンの世界のトップで戦っている選手です。技術、戦術、戦略の上で学生は見習う部分が多くありますが、加えて「準備や意識の高さ」という目に見えない部分の大切さを強く感じました。今後の競技だけでなく生活の中でも意識を高めたいです。

KONAN-PLANET 記者
印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
去来川さん:いつも太田選手から聞くのは、「自分の練習場所ではこんなに速い球、重い球は来ないので、甲南大学での練習はとてもありがたい」という言葉です。その言葉を聞いて、環境に感謝しながら努力を重ねている姿勢が印象に残りました。

KONAN-PLANET 記者
太田選手から本当に多くを学んでいるのですね!
この経験を今後どう活かしていきますか。
去来川さん:太田選手のバドミントンへ取り組む姿勢、準備、空き時間の使い方は、今すぐにでも真似できる部分です。自分自身も取り入れて競技力の向上に活かしたいと思います。

甲南大学バドミントン部
令和7年度関西学生リーグ男女1部所属
全国大会でベスト8を目指す


