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みなさん、起業したいと思ったことありませんか? 今回は起業を志す、そして起業に興味がある現役甲南大生の3名が、本学卒業生で起業家の原田直信さんにインタビュー。 普段はなかなか聞けない貴重なお話に、3人ともつい前のめりに・・・ ではさっそく、みなさんにご登場いただきましょう。

吉村 奈緒さん (経営学部1年次)

鳥取県出身。祖父母が民宿を経営。リゾートホテルをつくることが中学生からの夢で、民宿は継がず自分の手で立ち上げたいと考えている。そのためには何から始めたらいいのか、また起業にまつわる資金の集め方、場所・建物など何から勉強をしていいのか迷い中。

松内 大知さん (マネジメント創造学部2年次)

香川県出身。実家が建設業を経営している。もともと起業したいと考えており、高校卒業あたりから、家業は継がず同じ建設業での起業を考えるようになった。父親に負けたくないという思いがあり、自身で頑張って父親を越えたいと志す。

田中 亮太さん (経済学部3年次)

兵庫県出身。同じゼミの先輩が学部の学びとは縁のない分野で在学中に起業したという話を聞き、その行動力に感動し影響を受ける。起業は簡単なことだとは思っていないが、いつかそういう人間になれたらいいなと思っている。調査会社への就職を希望。

原田 直信さん

2013(平成25)年 経済学部卒業。体育会サッカー部出身。新卒でロート製薬株式会社に入社し、営業職を経験。退職後、「株式会社つなぐ」を宮城県で起業。総合スポーツスクールの講師、キャリアコンサルタント兼産業カウンセラーとしても活躍中。

本日はみなさま、お集まりいただきありがとうございます!まずは、原田さんに起業にいたった経緯を詳しく伺っていきたいと思います。

在学中はサッカーに熱中。就職活動は二の次だった。

ちょうど就職活動を始めようかという大学3年次に、大怪我をしてしまい、「このままサッカーをやり切りたい」と就職浪人も考えたんです。しかし親に「少しでも興味のある会社を探してみなさい」と諭され、恥ずかしい話ですが、名前の知られている企業を優先して就職活動していました。ロート製薬(株)は説明会に遅刻した上、質疑応答の際に生意気なことを言ってしまったんです。驚くことに、そんな僕を面白いと気に入ってくださった。こんな失礼な僕に本気で向き合ってくれる会社で働きたい、と入社を決めました。本当に感謝しかありません。

何もできなかった過去の後悔が原動力に。

入社後は福岡、沖縄、東京で営業を担当しました。その後、ロート製薬(株)、エバラ食品工業(株)、カゴメ(株)、カルビー(株)の4社による震災で保護者を亡くした子供たちに高校卒業後の進学の夢を支援する奨学基金『公益財団法人みちのく未来基金』への出向を希望しました。大学時代、東日本大震災を経験し何もできなかったという後悔があったんです。また、新入社員時代に仕事が辛い時期があり、同じ思いを抱えている人の力になれたらと産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの資格を取得して、どこか生かせる場所がないかという思いもありました。この2つの理由で、出向を申し出ました。

  • KONAN-PLANET記者

    以前から、誰かの役に立ちたい、力になりたいという思いはあったのですか?

  • 原田直信さん

    そうですね!学生の時から、誰かに喜んでもらえたり、誰かの相談を受けて解決につながることを生きがいに感じていました。

起業するより先に移住を決断。

僕が東北に赴任した時は、震災から8年が経っていました。前向きに頑張っている人が多かったので、『みちのく未来基金』の活動は僕が支えるというより、一緒に伴走する、何かあったら支える、というフェーズに入っていました。赴任中、ロート製薬(株)と女川町のプロジェクト「女川町健康プロジェクト」に携わり、女川町や周辺地域の子どもたちと接する機会がありました。子どもたちが、どこか自信がなさそうで、積極性に欠けているように見えたのが気になり、彼らがもっと自分らしく生きられるサポートができたら良いなという思いが湧き上がってきたんです。さっそく、その思いをA4用紙1枚にまとめて、「こんなことがやりたいんです」と女川町の人たちや役場の人たちに話をして回りました。すると、たくさんの人が協力してくださった。自分のやりたいことに町全体で力になってくれるあたたかさに惹かれ、ここでもっと挑戦したいと移住を決断しました。

自分が町の子どもたちにできること。

起業しようと心に決めたのは2020年の11月。それから、「子どもたちが自分らしく過ごせること」というコンセプトからブレないように、女川町の子どもたちに今何が必要か考え、地域の人のアドバイスを聞いてまわり、「スポーツを通じて自分らしく生きられるような取り組みをしよう」という考えにたどり着きました。さらに、東京のビーマスポーツがスポーツで子どもたちのチャレンジ精神を高める活動をしていることを知り、同様のプロジェクトを女川町でもできないか相談し、2021年に女川町と石巻市でスポーツスクールを開校しました。これをきっかけに、女川町の子どもたち全員が自分らしく生きられるようにしたい、と町内の保育所と小学校にアプローチ。オリジナルのスポーツプログラムを提案し、まずはボランティアとして取り組みを始めました。実は、女川町の子どもたちには運動する機会が少ないことや、運動不足が原因で血糖値が高いという課題もありました。それがスポーツプログラムを行うことで、体を動かす習慣がつき、スポーツに取り組む姿勢や意欲の変化が見られました。こうした実績を受けて、来期から事業化に向けて進めています!

  • KONAN-PLANET記者

    短期間でここまで・・・スピード感がすごいですね!!

  • 原田直信さん

    確かに短期間で動き回りましたね・・・子どもたちの変化を地域の人にも評価していただき、事業化にもつながりました。女川町以外にも同じ課題を抱えている町はあると思うので、どんどん広げていきたいです。

  • 松内 大知さん

    今年1年はボランティアとしての活動ですが、
    事業化のための資金はどうやって集めたのですか?

  • 原田直信さん

    4つ仕事をしています。1つ目は開校したスポーツスクール。2つ目はキャリアコンサルタント資格を活かし、女川町の中小企業のメンタルヘルス事業に携わっています。3つ目は『みちのく未来基金』での活動。ロート製薬(株)は退職しましたが株式会社の設立により業務委託になりました。4つ目は女川町で活動している『NPO法人アスヘノキボウ』で起業家の支援や新卒社会人のメンタルヘルスケアを行っています。いずれは子ども関連の事業一本でやっていきたいですね。

  • 松内 大知さん

    すごいですね!僕は今、建設業界での起業に向けて資格の勉強を少しずつ始めていますが、実務経験が足りず取得できないものも多くて困っています。

  • 原田直信さん

    資格の勉強は大切ですが、他にもできることがあると思いますよ。僕は、子どもの関わり方や声のかけ方をYouTubeで勉強しました。どこでも見られるので、すきま時間を活用できます。あとは建設業の社長さんに話を聞いてみたり、考えているプランを話したりするのもいいかもしれません。ツテがない場合はネットで探して連絡を取ってみたり・・・大学生というだけで意外と喜んで会ってくれる方が多いんです。アクションを起こしてつながれたら、結構大きいと思います!

  • 吉村 奈緒さん

    私も行動に移す大切さを実感しました!祖父母が経営する民宿の近くにリゾートホテルを建設するのが夢で、大学の地域連携センターに相談したんです。鳥取県の方を紹介をしていただき、ちょうど一昨日お話することができました!アドバイスをいただいて今することがわかり、行動して良かったです。

  • 吉村 奈緒さん

    原田さんは、役場の方たちとどうやって交流を広げていったのでしょうか。また、お仕事を4つしながら起業したお話を聞いて、学生で起業することの難しさを感じました・・・

  • 原田直信さん

    役場の方とは『女川町健康プロジェクト』の活動で面識はありましたが、教育関係の方とは繋がりがなかったので人づてに紹介をしてもらって広げていきました。起業家を支援している役場も多いので、直接メールを送ってみるのも良いですね。
    学生で起業、とても良いと思いますよ!ただ僕の場合は、会社で一般常識や組織での人の関わり方、課題提案の仕方などを学べたので、社会人になってから起業して良かったなと感じています。各地域で起業家支援を行っていますから、熱量が高い今のうちにエントリーして飛び込んでみるのもおすすめです。

  • 吉村 奈緒さん

    働きながら起業するのって大変でしたか?
    原田さんはお話が上手ですが、私は事業プランを人に伝えるのが苦手で・・・
    何か練習とかしていましたか?

  • 原田直信さん

    とても大変でした!けれど「これを立ち上げた先にどんなコトが待っているんだろう」という、ワクワク感の方が大きかったです。
    人に伝えるスキルは営業時代に鍛えられたかも。伝える手段としては、プランをA4両面のチラシにまとめることをオススメします!要点が絞られるので人に伝わりやすいんです。自分の頭の整理にもなりますし。まずは、何をどう伝えたいのかを考えて、チラシを作って、人に伝えてみてください。

  • 吉村 奈緒さん

    ありがとうございます!
    最後に一つだけ・・・起業された時、身近に経営者っていましたか?

  • 原田直信さん

    いましたよ!女川町は震災の時に町の8割が流れてしまいました。だから、起業家がとても多いんです。ゼロから始めた人が多く、今も知恵や力を貸していただいています。

  • 田中 亮太さん

    子どもたちとふれあう児童福祉研究会という部活で活動しています。原田さんがプログラムを作る上で、また子どもたちと接する上で気をつけていることはありますか?

  • 原田直信さん

    まず、子どもたちの名前を呼ぶことですね。そして、誰かと比較するような言葉は使わないことです。「昨日よりも速く走れたね」と、過去の自分と比べて成長したことを実感できるような関わり方を意識しています。
    プログラムについては、全員ができることが大事です。でも、簡単すぎても、難しすぎてもつまらないので、ギリギリできそうなレベルを狙います。みんなが楽しく取り組めることが大前提です!

  • 田中 亮太さん

    これから実践していきたいなと思います!
    僕は、まずは社会を知るために就職して、将来的に何かできることがあれば起業してみたいと思っています。有形のものではなく無形のビジネスをしたいなと、漠然と考えているのですが、有形のビジネスの方が手堅いですか?

  • 原田直信さん

    手堅さはどちらも関係ないと思いますよ。地方の中小企業にもネット関係が普及していますし、チャンスだと思います。
    女川町にきて強く思ったのですが、「何をやりたいか」より「自分がどうありたいか」が重要です。今のうちに、とことん追求して考えてほしいですね。「自分がどうありたいか」がわかると、次の目標も決まりやすいと思います。

  • KONAN-PLANET記者

    なるほど、自分を見つめ直すきっかけになります!
    ズバリ、起業をするのに大切なことって何でしょう?

  • 原田直信さん

    まずは「笑顔」!どんな人でも、出会った人が笑顔だと嬉しいですよね。
    次に「頼る努力」。自分1人じゃできないことを補ってくれる人に頼ること。頼るためには、覚悟や将来のビジョンを持ち伝える必要があります。
    三つ目は「行動力」。考えるより前に、とにかく動く!
    机の前で考えていても将来は見えてきません。現地に出向いて、現地の人の声をたくさん聞いています。

  • 田中 亮太さん

    原田さんの行動力に感動しています!
    その行動力は学生時代からですか?それとも社会人になってからですか?

  • 原田直信さん

    元々、行動力のある方ではありませんでした。
    今は、自分の考えていることに自信があるから行動できるんだと思います。自分自身、力はありませんが周りの方たちが積極的に力を貸してくださいます。
    また、考えているだけでは進まないと思っているので、直接話を聞きに行ったり、飛び込むのが早いです。飛び込むって難しいですが、物事がめちゃくちゃ進むので!「話を聞きたいんです」と言われて嫌な気分になる人はいません。ぜひ、いろんな場所に飛び込んでください。

  • KONAN-PLANET記者

    大学時代にこんな授業があったら役立つだろうな、
    起業するのに参考になるだろうな、ということはありますか?

  • 原田直信さん

    コミュニティを作る授業があるといいですよね。学外のコミュニティは自分の財産になりますから。また、いろんな起業家の人の声を聞く機会があるといいと思います。

  • KONAN-PLANET記者

    コロナ禍で思うようにいかず、悔しい思いをしている学生もいます。コロナ禍の今だからできることや、学生のうちに経験しておくと良いことなど、最後にアドバイスをお願いします。

  • 原田直信さん

    対面で会うことが難しくなった一方で、遠方の人とつながりやすくなり、いろいろな情報をネットで得られるようになりましたよね。今日の座談会も、僕と3人の学生がつながるきっかけになった。そういうチャンスを逃さず、積極的に自分のものにしてください!その積み重ねが、必ず自分の財産になります!

起業がゴールではなく「どうありたいか」。 生き方を教えていただき、とても勉強になりました。 学生たちの今後にもますます注目です。 原田さんのご活躍を応援しています!今日はありがとうございました。