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『世界から国境をなくす』難しいこの挑戦をミッションに掲げ株式会社one visaを立ち上げたのは、甲南大学出身の岡村アルベルトさん。『国境をなくす』ミッションの意味とはビザを通じた話だ。我々日本人にとって馴染みの薄いビザだが、実はこれからの日本の未来にとっても大切な課題でもあるのだ。そんなビザの課題に対し、新サービスを立ち上げた岡村さんへお話しを伺った。

岡村さんが代表を務める株式会社one visaは、特定技能ビザを活用した海外人材への学習機会提供やビザ取得、定住支援までを一気通貫で行う海外人材の来日・定住支援サービスを目的として起業した2015年9月設立のスタートアップだ。その中で在留資格、いわゆるビザのオンライン申請・管理支援を行うサービスが社名を冠した「one visa」である。

6歳までペルーで過ごした岡村さんは、その後日本へ。はじめは大阪の天満に住んだそうです。そこには自分と同じペルー人の人たちもたくさん住んでいて、キャンプやバーベキューなどみんなで楽しんでいたそうです。 でもある時、急にいなくなったペルー人がいました。お母さんに聞くと「キョウセイソウカン」で帰ったと、初めて聞く言葉で教えられたそうです。岡村さんは子どもながらに何か恐ろしい印象を持ったことを覚えているそうです。

大人になるにつれて、仲間が「キョウセイソウカン」されたのは、ビザの申請に必要な書類が本国でしか手に入らず、手配が間に合わなかったからだと知ったそう。胸の奥で「ビザの知識があれば強制送還は防げたかもしれない」という思いがくすぶり続けた岡村さんは甲南大学へ進学し、卒業後、入国管理局へ就職しました。しかし1年で退職。その理由は職場で入管手続きの現状を知り、「今のままでは私の想いはなし遂げられない」と感じたそうです。

  • KONAN-PLANET記者

    せっかく入国管理局へ入ったのに、1年で辞められたのですね… 「なし遂げられない」とは、具体的にどういうことですか?

  • 岡村さん

    まず、入国管理局で働き始めて分かったのは、外国人にとって入管の書類は書き方が難しく、完璧な書類を持ってくる人はほぼいないということでした。 独自に集計した数値では、なんと97%の人の申請書類に不備がありました。

例えばトルコ系の難民の人などは英語も日本語も話せない状態で申請に来るので、当然書類の書き方もわかりません。また書き方を教えるにしても英語も日本語も通じないので、ポストイットに絵を書いて指差しで説明していました。

  • KONAN-PLANET記者

    97%!!! ほぼ、全滅に近い数字じゃないですか

  • 岡村さん

    はい、そもそも日本語も英語も分からないという人たちは白紙で持ってくることも頻繁にありました。 ですので、これは改善しないといけない! と思い、提案書を作成して会議に向かったわけです。

  • KONAN-PLANET記者

    改善策をプレゼンしたわけですね!

  • 岡村さん

    しかし、会議では他にも大事な議題があるので、思うように進捗しなかったんです。そうした中で、日々業務を続けていくうち、これはもう自分で起業した方がいいのではないかと思ったのです。

話は戻りますが、岡村さんは甲南大学に通っていた頃からすでに起業を志していたとのこと。ビザというコンテンツは考えていなかったそうですが、日本に住む外国人にとって、より良くなるサービスを提供したいと考えていたと、岡村さんは言います。

  • 岡村さん

    僕は甲南大学ではCUBE(マネジメント創造学部)に在籍していました。CUBEはビジネスの現場で活躍していた先生も多く、在学中に生きた経済学を学べたことは、とても勉強になったと思っています。

  • KONAN-PLANET記者

    岡村さんはCUBE生だったのですね。 確かにCUBEは、甲南大学でもビジネスをグローバルな視点でとらえた実践的な学びをしている印象がありますね。

  • 岡村さん

    はい、僕はプロジェクト学習という企業の課題やテーマを実践的な視点で学べる授業が好きで、一生懸命取り組んだ覚えがあります。卒業論文では、積み上げたビジネスの学びを活かして、飲食店メニューの多言語対応システムをつくりました。 このサービスに似たものは、東京都などでも提供されていましたが、限定的な使い方しかできないものだったので、僕は多くの人たちが使えるよう、無料提供という形を考えました。

  • KONAN-PLANET記者

    なるほど。学生時代には既に外国人の方に役立つサービスの提供を考えていたのですね。

  • 岡村さん

    甲南大学での学びは、今に活かされていると思います。そして、つながりも非常に重要だと感じました。実は起業した時、最初に出資してくれたのは、甲南大学の先輩なのです。

  • KONAN-PLANET記者

    え!? そうなんですか! お知り合いの方とか?

  • 岡村さん

    いえ、東京で行われた甲南大学の卒業生の集まりで知り合った先輩なんです。僕が起業の話をすると、すごく共感してくれて出資すると言ってくれました。

one visaのビザ申請サービスは、外国人を雇う起業、雇われる人たち両者にとって良いものでないといけないと、岡村さんは言います。 特に雇われる外国人は、キツイ仕事をさせられる上に、給料がちゃんと支払われない場合もあるそうです。それは心ない雇い主が稀にいるからですが、何より相談できる相手もいない外国人労働者たちをしっかり守りたいという思いが、このone visaには込められているのでしょう。

そして今の日本は、世界で類をみない超高齢化社会が訪れようとしています。このままでは、国としての労働力も低下していくことは簡単に予測ができます。だから、外国人の労働力も受け入れて乗り越えていくことが大事と、岡村さんは言います。 日本は島国ということもあり、日本人は「ドメスティック(家庭内)」な感覚が強い。 今、グローバルという視点を越え、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括・一体性)という考えが必要となっています。自分たちと違う、他の人たちの存在を認め、共に協力しあっていく。世界で広がる考えとかけ離れた感覚でいると、未来の日本は明るくないかもしれません。

移住をする人たちの心理は「今の生活をより良くしたい」。そう思う人が多いそうです。特に一次産業に従事する人は、その心理が高くなります。しかし、IT系の方で日本に来る外国人は少し違った感覚があるようです。

  • KONAN-PLANET記者

    IT系は日本より海外の方が技術も、ギャラも待遇が良いように思いますが、なぜ日本に来るのでしょうか?

  • 岡村さん

    うちもIT系の企業のお客さまも多いのですが、そこで雇われる外国人の人たちは「日本カルチャー」が好きで来日されている人が多いように思います。昔ながらの文化だけでなく、アニメやゲームなど世界が認めるジャパンカルチャーです。

  • KONAN-PLANET記者

    なるほど! 日本そのものが好きで来ているというわけですね。 それはうれしい。

  • 岡村さん

    しかし、新しいカルチャーは目減りすると考えてます。 流行廃りというやつです。 ですので、基本的な待遇が良くならなければ、日本は選ばれない国になっていくと僕は感じています。 今は、日本の賃金や暮らしはアジア圏では良い方です。しかし、アジアの開発途上国は勢いを増しているので、その地位は入れ替わる可能性があるのです。

  • KONAN-PLANET記者

    そうなると、課題である日本の未来の労働力が低下し、より負のスパイラルが加速する恐れもあるのですね…泣

  • 岡村さん

    でも、僕は未来を暗く見る必要はないと思っています。 なぜなら、外国人の受け入れに関して、日本はまだまだ未整備、未着手のところがあまりにも多いからです。 つまり、今後のポテンシャルが高いということです。 ですので、まずは現在の日本の労働力の状況を知り、どのようにして開かれた国になるのかを議論すれば良いと思うのです。 まだ議論もできない状態なのです。

  • KONAN-PLANET記者

    あまりにも、今の日本の状況を知らず、そして未来へ目を向けられていないということが、課題ですね。

  • 岡村さん

    日本は超高齢化社会へ突入します。 しかし、外国人を受け入れて、再び新しい成長を日本が遂げた場合、それは「世界のモデル」となると僕は思っています。 驚くべきニュースだと。 今までドメスティックな国が、それをやり遂げたことがすごくて、今後の世界で起こる同じような課題の解決策になると思っています。ですので『世界から国境をなくす』というミッションを実現し、誰もが暮らしたいと思う場所で暮らすことで、個人だけでなく、世界が良くなるよう、これからも頑張っていきたいと思います。

  • KONAN-PLANET記者

    すばらしい!! 日本の課題だけでなく世界のモデルともなり、また個人が自由に暮らせる世界が訪れることを願っています! 今日はありがとうございました!!

株式会社 one visa 代表取締役岡村 アルベルト

1991年ペルー生まれ。日本人とペルー人の両親の間に生まれ、6歳で来日。幼少期に友人が強制送還された経験から、ビザに関する問題を解決すると志す。大学卒業後、出入国在留管理庁の業務委託先である民間企業に入社。東京出入国在留管理局に配属され現場責任者を務めたのち、2015年に起業。2017年6月にビザ取得サービスである one visaをリリース。 Forbes Japan 日本発『世界を変える30歳未満30人』に選出