海外で活躍する卒業生インタビューリレー⑩
オーストラリア・セントラルコースト編

NEWS!『甲南人』の活躍 > カルチャー
2026.4.21
よかった記事には「いいね!」をお願いします

これまで9回にわたって、世界中で活躍する甲南大学卒業生にスポットを当ててきた本企画。今回お話を聞いたのは、卒業後、さまざまな仕事を経験し、30歳でオーストラリアへ渡った岡智子さん。現在は、書道や味噌作りのほか、オンラインで日本語講師をし、多岐にわたって活躍されています。「海外に住みたいけど、留学経験もない自分ができるのか」と悩んだ時期を経て、自分らしい働き方を見つけた岡さんのストーリーを伺いました。

 

 

Contents

・迷いながら見つけたこと

「自分の好きなこと、得意なこと」を仕事に

あたたかい人柄、自由な雰囲気が魅力

オーストラリアで感じた「生きやすさ」

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

 

オーストラリアに渡るまでの経緯について教えてください。

 

 

岡 智子さん

 

 

岡さん:2004年に甲南大学を卒業し、最初は新聞社で事務と編集補助の仕事をしていました。海外で挑戦してみたいと思っていて、神戸日豪協会が派遣するメルボルンの私立校での補助教員の機会を得て退社しました。帰国後は大阪の食品系のベンチャー企業で働きながら、両親が教員だったことと、メルボルンでの補助教員の仕事が楽しかったことから、通信制大学で教員免許を取得しました。 

 

その後神戸市の中学校で1年講師として働きました。英語で苦労もあったけど、メルボルンでの生活から、海外が自分に合っているような気がして、長期で住んでみたいという思いが消えず、ワーキングホリデー制度の年齢制限ぎりぎりの30歳で、これが最後のチャンスと思い、カナダとオーストラリアを調べました。

 

 

なぜオーストラリアにしたのですか。

 

海外に出るきっかけは「人とのつながり」

 

岡さん:大学時代に授業を受けていた松井朔子先生との出会いです。松井先生の「日本事情」という授業を聴講して、意見をはっきり言う姿勢、長い海外経験からの雑談がすごく面白くて、授業後に先生と受講生とで食事に行ったり、卒業後もメールでやり取りさせてもらっていました。

 

シドニー大学でも教えていた先生に「海外で挑戦したい」と相談したら、「ハウスシッターでよければ家に滞在していいよ」と言ってくれて、それでシドニーに行くことに決めて、1年半ほど居候させてもらいました。

 

今でも一時帰国した時は、今は神戸に住む先生を訪ねます。私から見て先生は、すごく充実した素敵な人生をすごしているなあと思っているので、毎回会う度に人生の先輩として色々な質問をします。「結婚したいとか、子供を欲しいと思ったことは一度もない」「人生でこれをしたかったけど出来なかったと後悔していることは思いつかない」という先生の言葉が強く印象に残っています。今は90歳を超える先生が、当時一般的な女性の生き方であったであろう、結婚して子育てをして家庭を守る、という生き方以外を選んで、今そのような実感をしているということは、一人の女性のロールモデルとして貴重な存在です。

 

 

ー 現地ではどんな生活を送っていましたか?

 

「とりあえずやってみる」の連続だった海外生活

 

岡さん:シドニーに来て最初の半年はマーケティング会社の日本部門で働きました。上司と対等に話す同僚や、若い人が多い業界で、自由な社風で、金曜日の3時以降はオフィスでビールを飲みながら働く雰囲気など、とにかく働き方の文化の違いに驚くことばかりでした。その後は翻訳会社で働いたり、学生ビザで会計士の資格が取れる学校に通って、日本の銀行のシドニー支社でインターンをしたり・・・本当にいろいろやりましたね。

 

 

 

ちょうどその頃、オーストラリア人の夫と出会って、日本に一緒に住んでみよう、と日本に戻って結婚し、教育関係で働いた後、再びオーストラリアに戻ってきました。

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

 

今は、どちらに住んでいるのでしょう

 

 

岡さん:シドニーから車で北に1時間半くらい走ったところにある、セントラルコーストに住んでいます。ビーチや国立公園がたくさんあり、のどかでゆったりしたところです。

 

 

 

 

ー 良さそうですね!現在のお仕事について教えてください。

 

岡さん:3つの仕事をしていて、日本語教師と書道関係の仕事、味噌作りや麹作りを教える仕事をしています。オンラインの日本語教師と、対面の書道と味噌の仕事で、バランスが気に入っています。

 

 

 

 

味噌づくりのワークショップはどのように今の状態に広がったのですか?

 

「好き」や「得意」が仕事につながる楽しさ

 

岡さん:会社で働いていた時から、近所に住む日本人に、味噌の作り方を習いたいというリクエストをもらって味噌を作っていました。仕事として本格的に始めてから、オーストラリア人でも誰でも参加できるワークショップという形で告知を始めると、徐々に知られ始めて、今では参加者の9割が日本人以外の現地の人で、オーストラリア人をはじめ、オーストラリアに住むアルゼンチン人、シンガポール人、南アフリカ人、台湾人など多国籍です。車で2時間かけてはるばる来る人もいます。

 

 

 

 

また、日本の発酵食に対する関心が高まっているのか、今年の麹造りマスタークラスでは、麹造りを習いたいという参加者が想像以上に多く、定員を超えて参加希望があり、心苦しくも断ったほどでした。健康な食べ物に関心がある人で、日本食がヘルシーだと知っている人は多いようで、参加者の知識の深さに驚くことも多いです。味噌づくりのクラスでは、準備で10キロほどの味噌づくりの仕込みをする必要があったり、一人で企画から事務連絡、準備をするのは大変ですが、手作りや、日本食好きの人達との出会いや会話が毎回楽しみです。

 

 

 

オーストラリアって味噌の文化、ないですよね?

 

岡さん:ないです!その分、味噌に対して固定観念がないので、シチューの隠し味にしたり、いろんな使い方をされています。それから、ワークショップで、味噌を日常で使えるようなアイデアの参考として、味噌を使った試食を8種類ほど出しています。ピーナッツバター味噌ディップは、はちみつや家庭である材料を混ぜた手軽にできるディップで、ピーナツバターが好きな西洋人は特に気に入ってくれる人が多く、ワークショップで試食してから、家族で定番のおやつになったと言ってくれる参加者もいます。また、サワークリームと味噌を混ぜて作る即席ホワイトソースは、牛乳とバターで作る一般的なホワイトソースより簡単で濃厚、味噌のコクが旨味となって野菜だけで十分においしいグラタンになります。私の夫も好きで、冬は週に1回はリクエストがある定番料理です。

 

 

ー 他の仕事はどういうことをしているんですか?

 

岡さん:日本語教師は、一対一のレッスンをしています。生徒はオーストラリア人だけでなく、アメリカ在住のアメリカ人が多くて、日本在住のアメリカ人やポーランド人、アイルランド人、イギリス人、スペイン人、ドイツ人など、毎週20人ほどの生徒とレッスンをしています。日本語を習う理由は色々で、日本文化への興味や、日本を旅行した時に日本人ともっと話をしたい、など様々です。

 

それから、書道や水墨画の仕事もしています。1メートルの巨大筆で、2メートルx4メートル四方の紙に書く書道パフォーマンスをしたり、書道や水墨画のワークショップをしています。書道は、日本では、国語の一環の科目としてや、きれいに書く技術を高めるというような所に重きがありますが、オーストラリアでは、「アジアのアート」として西洋とは違う興味深いアートとして捉えられることが多いので、色々なアートをしている人と話すことも多く、刺激になります。

 

 

 

 

 

 

キャリアに悩んだ時期もありましたか?

 

岡さん:オーストラリアに渡る前の30歳前後は、特にすごく悩みました。私は転職が多いので、転職が多いと不利だとキャリアカウンセラーに言われたこともあるし、企業で働くことと教師とどちらでキャリアを築いていきたいか、長い間悩みました。

 

今は教師をしつつ、時々企業と書道関係などで仕事をしています。転職が多いことも、今はプラスになっています。いろんな職種を経験したことで、それぞれの職種で学んだことが今の仕事に生かされています。例えば、新聞社での経験で、どういう告知文を掲載すればメディアに取り上げてもらいやすいかの感覚が身に着いたこと、教員の経験から、人前で話すことの場数を踏めたこと、ベンチャー企業で、コンテンツを書く仕事を担当し、文章を書く技術が鍛えられたことなど。「経験に何一つ無駄はない」ということが、年を重ねるごとに真実味を増しているのを自分自身の経験から実感しています。

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

 

実際に住んでみて感じるオーストラリアの魅力は?

 

岡さん:オーストラリアの人って、みんなよく喋るんです。知らない人とも気軽に話す人が多い。私が主催する味噌作りワークショップでも、参加者同士、初対面でもすぐに和気あいあいと話し始めて、私もやりやすいです。それから親切な人も多いです。私が車の駐車に手こずってたら、「オッケー、バックオッケー!」と通りがかりの知らない人が誘導してくれたりします。

 

それから休みをしっかり取る文化があります。休みを取るのは普通で、「自分も取るから同僚が取るのもお互い様」という考え方で、休みが取りにくいということがないです。上下関係も日本に比べてあまり重要ではなく、上司とも対話や意見交換がしやすい点もいいなと思います。

 

 

ー 現地で仕事するために、どうやって英語を勉強しましたか?

 

岡さん:私は留学経験もないし、英語は好きだったけど点数が悪かったし、聞き取れないのが悩みで、コミュニケーションもギリギリのラインでした。会社勤務の時は、面接を突破できるようにだけして、何とか仕事を得られたら、「働きながら英語レベルを上げていく」というスタイルでやってきました。メモ帳を持ち歩き、聞き慣れない単語はメモして後で調べたり、会話中に分からない言葉は「ここにスペル書いて」と頼んだり・・・そして、聞いた表現を別の人との会話で使ってみる、などを繰り返し、2~3年でようやくまあまあの英語力になりました。

 

 

 

 

会話能力を上げる上で、今でも実践していることは、タイミングを見つけて話す機会を作ることです。私がよくするのは、スーパーの店員などがレジを打っている無言の時間。ここぞとばかりに話しかけて、ネイティブの店員さんの受け答えや表現を習得するいい機会になっています。とにかくスキを見つけてネイティブに話しかけるのは英会話の上達に効果的です。

 

私の生徒も、「日本の旅行中に、タクシーの運転手に運転中に話しかけたらたくさん会話ができて楽しかったし、勉強になった」と言っていました。至るところに会話の練習ができるチャンスがあります。必ずしも日本を出る前に上級レベルである必要はないと思います。

 

 

ー ここからはオーストラリアについて教えてください!

  おすすめのグルメはありますか?

 

岡さん:グルメと言えるかわかりませんが、乳製品がおいしいです。チーズやバター、クリーム、アイスクリームなど濃厚で、安くて種類が豊富。チーズは普通のスーパーでも何十種類もあります。近所ではタイ料理、インド料理がすごく美味しいし、移民が多い国なので、世界中の料理が食べられるのも魅力です。

 

 

おすすめの観光スポットはありますか?

 

岡さん:1つはブルーマウンテンでしょうか。巨大な岩が有名で、数えきれないぐらいのハイキングコースがあって、道中の壮大な森と荘厳な岩のスケールに圧倒されます。ハンターバレーワイナリーも有名です。ワイナリー界隈のなだらかなブドウ畑は、ドライブするだけでも楽しいです。

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

 

オーストラリアに来てよかったと感じますか?

 

岡さん:本当に良かったです。オーストラリアに自分の可能性を広げてもらったような気がしています。例えば、最初は書道だけしていましたが、ある時に広告制作会社から、書と水墨画を描いてほしいと依頼を受けたことから水墨画を独学で始めたのがきっかけで、水墨画の世界に目覚めました。今では生涯を通して探求したいことの1つになり、個展をしたり、イベントでライブペインティングの依頼をもらったりするようになりました。

 

現地の人が読めない漢字を使う書道と違って、絵は万国共通。現地の人と水墨画作品を通して話ができるのが魅力です。書と水墨画は全然違う専門分野と知らずに頼んでくれた広告会社のおかげで、書道以外の自分の可能性に出会えました。

 

 

 

でも一番良かったことは、英語を習得できたことでしょうか。留学していなくても、特別な英語教育を受けなくても、大人になってから英語を本格的に始めて流暢になれるか、それが可能か自分自身で実験したことが自分で証明できたかも、と10年住んでようやく思えるようになりました。基本、人との会話を聞いたり、書道や味噌ワークショップなどで話す機会を作ってセリフをひたすら練習したり、実践から学んでいって、どんな人とでも、スマホ通訳なしで躊躇なく会話ができるようになったことは、私にとって最高のスキルの一つだと思っています。

 

 

ー 最後に、日本の学生、生徒にメッセージをお願いします。

 

「日本の外に出てみる」という選択肢

 

岡さん:英語で、日本では出会えなかった色んな国籍の人と生き方や考え方を話していく中で、日本で日本語だけで得ていた情報から判断していた時の常識が次々と破られていって、考え方が以前より柔軟になり、生きるのが楽になった気がします。

 

また、オーストラリアに来て生活スタイルが変わったことや、自分がオーストラリアで移民になったことで、色々な立場の人の気持ちが経験から理解できるようになりました。

 

若い頃、「今の時代、自分が生きたい場所は世界中から選べる」と人から言われた言葉が心に残っていて、今それを実感しています。海外に出て仕事が得られなかったら、と渡航への決心を戸惑っていた時に、「もし失敗しても自分で選んだ道なら、自分で責任を持てるわよ」という、ある女性の言葉にも背中を押してもらいました。日本で「ちょっと居心地が悪いな」「他に自分に合う場所があるんじゃないか」と思っている人は、ぜひ一度、日本の外に出てみてほしいなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

よかった記事には「いいね!」をお願いします