「4-2.『藤棚ONLINE』」カテゴリーアーカイブ

[藤棚ONLINE] 法科大学院・宮川 聡先生コラム「乱読の勧め」

図書館報『藤棚ONLINE』
宮川 聡先生(法科大学院)コラム「乱読の勧め」

 日本語に限らず,ある言語を身に着けるためにはそれなりの努力が必要です。このコラムを読まれている皆さんもそれぞれ苦労した経験があるでしょう。私の場合は,日本語については,父が買いそろえてくれた少年少女世界文学全集を小学生のときに全巻読破したのに続き,中学1年生のときには新書版の日本文学全集を読み通しました。それで総合的な国語力が身に着いたかどうかは明確ではありませんが,少なくとも長い文章や作品を読み通すことについて苦手意識をもつことはなくなりました。
 英国への留学前にも,英語力養成のために同じやり方でいこうと考え,Agatha ChristieやCollin Dexterの出版されている作品をペーパーバックでそろえ,2・3日で1冊というペースで読みました(リスニングの能力については,衛星放送の英語のニュースを録画し,朝から晩まで聞き流すということをしました。)。私の場合は,日常生活で使われるような表現を全く知らなかったということもあってこうした選択になったのですが,もう少し硬質な英文については,雑誌のthe Economistを定期購読し,できる限り多くの記事を読むことで対処しました。もっとも,これは私が独自に考え出した方法というわけではなく,著名な経済学者であった都留重人先生がアメリカ留学の1年目に,ウィスコンシン州の田舎町でニューヨーク・タイムズ紙を定期購読し(その町では,この新聞を定期購読したのは一人しかいなかったそうです。),毎日隅から隅まで読んで英語力をつけたということにヒントを得て行ったのですが(都留重人『アメリカ遊学記』[岩波書店,1950年])。
 語学力を身に着けるために何が最善の方法かは人によって異なるので,同じやり方を進めるわけではないのですが,やはりある程度の読書量が必要なことは否定できないと思います。ということで,皆さんも,一度集中的に本を読むことに取り組んでみたらどうでしょうか。


[藤棚ONLINE] 国際言語文化センター・MACH Thomas先生推薦『Ishmael』『The Alchemist』

図書館報『藤棚ONLINE』
MACH Thomas先生(国際言語文化センター) 推薦

I love to read. I have a long train commute everyday – more than one hour each way. My train time is my reading time. I grew up in America, and if I lived there still, I would probably be driving my own car to work. Some people might think that commuting by car is more attractive than train, but not me. My long daily train ride is one of my favorite parts about my lifestyle here in Japan. Thanks to the train, I’m still able to read books nearly two hours every day.

So, I read a lot. This means it is really difficult to choose only one or two books to recommend to Konan students. There are so many that I want to recommend! But to make a choice, I asked myself this question: What are some simple books that moved me deeply when I was a university student? Here are two novels that had a big impact on me at that time: Ishmael and The Alchemist.

The first book is about a gorilla named Ishmael. This gorilla was captured by humans when he was very young. Now he is old. Because he has lived in cages for most of his life, he has had a lot of quiet time to think. He is now very wise and has become able to communicate by telepathy (テレパシー). He carefully chooses humans with open minds who might be able to grasp what he is able to teach, and this story is about Ishmael’s conversations with one man who has become his student.

Have you heard of Socrates (ソクラテス)? In Ancient Greece, Socrates was considered a great teacher of philosophy (哲学)because of his teaching method, called “Socratic dialogue.” In this teaching method, the teacher doesn’t directly teach. Instead, he uses question after question after question. Students, as they try to answer the questions of the wise teacher, gradually discover deep truths by themselves. In this book, Ishmael uses this teaching method. As a non-human, he is trying to teach humans about their role in this world and their history so far.

In short, Ishmael shows us that there have been two types of human societies in the world. He calls them “Leavers” and “Takers.” Leavers are the tribal cultures of the world. They live more simply within the world’s natural cycles, similar to animal populations. A long time ago all humans were Leavers, but little by little Taker societies developed. The key event in history that gave rise to Taker culture is the invention of agriculture (農業). Agriculture has helped Taker societies to escape ecological limits and become extremely powerful, but it is also leading to environmental doom. In addition, Ishmael teaches us how the core myths created by Taker cultures make it so difficult for Taker humans to see such basic truths by themselves.

The other book, The Alchemist, is similar in many ways. Like Ishmael, this too is a book about searching for deep truths. The main character is a Spanish boy who has a prophetic dream, and so he decides to take a journey in order to find the meaning of the dream. This journey takes him across the countries of northern Africa, eventually into Arab cultures, and then back to his home in Spain. He meets many interesting people along the way, including an alchemist (錬金術師), and the idea of alchemy is a kind of hint about the book’s deeper meaning. In short, on one level this is a really simple story about one person’s journey. But, on a deeper level, this book is full of half-hidden wisdom about how to live a meaningful life and follow our dreams.

In English, philosophy (哲学) is a word that maybe sounds a little scary to most people because it seems so difficult. But both of these books are basically philosophy disguised as simple stories. The English versions are not so difficult to read, and luckily we also have Japanese translations for both of these books. These stories will help you to think about the meaning of human life. And, if you are in a thoughtful mood while reading them, they will surely move you too. In fact, they might change your life.


[藤棚ONLINE] フロンティアサイエンス学部・三好大輔 先生推薦『La La Land』(たまにはミュージカルも)

図書館報『藤棚ONLINE』
三好大輔 先生(フロンティアサイエンス学部) 推薦

La La Land
デイミアン・チャゼル監督・脚本
ライアン・ゴズリング, エマ・ストーン[出演]

 このブログコーナーは教員がおすすめの書籍を紹介するのですが、年末に見た映画を紹介します。もちろん図書館で視聴できますよ。
 2016年に公開された米国のミュージカル映画です。ジャズピアニストの男性と女優のドラマです。二人は夢と現実との乖離に悩み、逃げ、妥協します。でも最終的にお互いの夢を叶えます。ハッピーエンドとは言えないのですが。
 恥ずかしながら映画も音楽もよくわかりません。しかし、とても印象に残る点がありました。
 一つ目は人と違うことを恐れないこと。周りに流されることなく自分を貫いてください。
 二つ目は夢をあきらめないこと。夢を叶えるには何歳でも遅くありません。皆さんは若いです。これから何でもできます。
 三つ目は大切な人に出会うこと。自分よりもその人の幸せを願えるような人です。その人のためなら自分のためよりも頑張れるような人に出会えたら人生無敵です。
 こんなおじさんでも「よし頑張るぞ!」と思えました。皆さんもこの映画とともに素晴らしい2020年をはじめませんか?


[藤棚ONLINE] マネジメント創造学部・杉本喜美子先生推薦本『君たちに明日はない』・『水鏡推理』・『貿易戦争の政治経済学:資本主義を再構築する』

図書館報『藤棚ONLINE』
杉本喜美子 先生(マネジメント創造学部) 推薦

 3回生の就活シーズンが始まった。自己PRや志望動機を書いたのでコメントを頂けませんか?という相談であふれる季節である。ゼミや講義で接点を持ってはいても「時間の共有」の点で圧倒的に足りていない相手に、適切なコメントができるほど人間はできていない。さらに言えば、自分自身の働くことに対する姿勢が正しいと、自信の持てることは何一つない。だからこそ、皆さんがこれからの行き先を悩んだ時、今から挙げる本が、何かしら参考になればと期待を込め、私のすべき仕事を作者陣に任せてしまおう!
 垣根涼介の『君たちに明日はない』シリーズは、会社をリストラされる人々の面接官が主人公である。リストラの経緯を通して、様々な業界/職種の人々がどんな姿勢で仕事に向かい合っていたか、そして向かい合っていくかを描いた小説で、各業界/職種の苦労と楽しみが理解できると思う。読んだのは何年も前だが、未だ印象に残っているのが、主人公自身が最初にリストラを宣告される場面である。リストラの理由は「いただく給料をわずかに超えるパフォーマンスしか常に出していないから」であった。逆に言えば、自分が働くことで会社に与える利益がいくらかを緻密に計算できているわけだ。全力で仕事をしていた自分は、単に自信と冷静さに欠けていただけだな、若くてあほだな!と反省したことを覚えている。もちろん、わずかでなく最大のパフォーマンスを出すことが職場の雰囲気をよくすることもあるだろう。だが、その計算のもとで働く人間もいること、その計算の中で自分はどのくらいの価値を持つのかということをきちんと知ろうとすることこそ大事だと思う。
 『万能鑑定士Qの事件簿』で知られる松岡圭祐の『水鏡推理』シリーズは、論理的思考力と熱意にあふれた文科省ヒラ職員が主人公で、総合職である国家公務員やその道の権力者たちの不正を暴いていく。それぞれの仕事における“優秀さ”とは何かを考えさせられる小説だ。正規/非正規や職位など、立場の違いで発生する給料の違いが、その人自身のパフォーマンスとリンクしていないことの理不尽さを改めて実感させられる。自分自身も人から見ても“あなたがそこにいていいよ”と納得できる仕事に出会えるのは、奇跡なんだろうか?
 最後は、私の教える国際経済学の分野から一つだけご紹介。ダニ・ロドリックの『貿易戦争の政治経済学:資本主義を再構築する』(もちろん訳本でお試しください。翻訳上手!)。この本の内容は読んでください。まとめるには長すぎる。ダニ・ロドリックの論文は常々、自分の研究のために読むことが多いが、ほかの論文と違い「今、世の中で何が問題か?」ということに真摯に向き合い、そのhot issuesをできる限り直ぐに(他の方に先駆けて)解決したいとはやる気持ちが伝わってくる経済学者だ。よって、ボーっと目をつむっていただけで、世の中の問題はすべて先に解決されちゃうんじゃないか、私の手を出す場所は何もなくなるんじゃないかという不安を呼び起こす。だからこそ、論文でなくこういう著書を読むと、どんなふうにhot issuesを研究題材に変換していくのか、その経路を見せてもらえる気がする。研究者としての仕事を全うするうえで、こんな本の読み方もありますよ、というご提案。みなさんそれぞれに出会ったことのない同業の尊敬者を将来見つけるんじゃないだろうか。こういう本の読み方、10年後にどうぞ!


[藤棚ONLINE] 知能情報学部・梅谷智弘先生推薦本『今日、僕の家にロボットが来た。:未来に安心をもたらすロボット幸学との出会い』

図書館報『藤棚ONLINE』
梅谷智弘 先生(知能情報学部) 推薦

 ロボットに関する研究を行っていると「ロボットとともに暮らす未来」について考えることがあり、私は実際に大学の公開講座で話したことがあります。本学の図書館にも、エントランスには受付ロボットがいて、リファレンスカウンターには図書館職員を支援するためのアンドロイド・ロボットが働いています。一方、ロボットが本当に社会に溶け込むためには、ロボットのことのみを考えればよい、というわけにはいきません。ロボットとともにいる「人」や、人とロボットとのかかわり、いわば、「ロボット付き合い」についても考える必要があります。
 そこで、本書「今日、僕の家にロボットが来た。:未来に安心をもたらすロボット幸学との出会い」を紹介します。この本は、日本ロボット学会の安心ロボティクス研究専門委員会(現:ロボット考学研究専門委員会)での議論での成果をもとに、未来に安心をもたらすための人とロボットのあり方について、まとめられています。未来の家庭にロボットがやってきたときの家族とロボットのかかわり、出会いからのロボット付き合いを通した一連の物語をとおして、人とロボットにかかわる最先端の研究とその課題を、きわめてやさしい言葉で、かつ、一貫したスタイルで丁寧に解説されています。その中で、現状のロボットアプリケーション研究の課題、安心をもたらすロボットに関する研究への動機付け、さらには、ロボット社会の将来像についてまとめられています。
 ここで、ロボットに対する安心感、ロボットとの付き合い方、に関して、工学(技術)的な側面だけでなく、心理学、哲学、など、人にかかわる様々な研究分野の視点からのロボットとの付き合いに関する研究が1冊にまとめられています。ここまで一貫して、多面的にまとめられた「ロボット付き合い」の本は類を見ないと考えます。よく、ロボットを研究する動機として、「人を知るため」と語られます(私は授業でそのように説明します)が、ロボット研究を通して人を知ることの重要性を本書によって改めて認識しました。本書は、人-ロボット研究の入口となるとともに、ロボット付き合いの未来を考え、ロボット社会をよりよく生きるための土台になる良書だと考えます。
 ロボット学、というと、理系っぽく思われがちですが、実は幅広い学問であり、人にかかわるロボット、となると人文科学、社会科学も含めた様々な人による幅広い議論が必要になります。未来のロボット社会に興味がある人はもちろんのこと、特に、技術のことはちょっと……、という学生にこそ、本書を取って、みなさん個々人のロボット付き合い、について考えてほしいです。


[藤棚ONLINE] 経営学部・北居 明 先生推薦本『ティール組織 : マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』

図書館報『藤棚ONLINE』
北居 明 先生(経営学部) 推薦

 「我々が『マネジメント』と呼んでいるものは、その大半が人々を働きにくくさせる要素で成り立っている」と述べたのは、近代経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーです。たしかに、権限命令関係をはっきりさせるための階層は、人々の自主性を阻害することも多いです。計画どおり活動を進めるためのPDCAサイクルは、そのサイクルを回すこと自体が目的化し、仕事を増やす結果になることもしばしばです。「だって多くの会社が実際にそうやってるじゃないか」とか、「教科書にはそう書いてあるじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、メンバーが自主性と創造性を最大限発揮し、互いがもっと協働できる経営のかたちは、他にもあるかもしれません。
 今回ご紹介する「ティール組織」は、これまでの経営の在り方を覆すような、様々な具体例が示されています。著者のフレデリック・ラルーは、コンサルティング会社勤務後、2年半にわたって新しい組織モデルの調査を行い、先進的な経営を行っている12社を抽出し、それらの経営の在り方を「進化型(ティール)組織」と名付けました。ティール組織では、管理職はいませんし、公式の組織図もありません。勤務時間を管理するためのタイムカードもない会社もあります。ティール組織の特徴は、徹底した自主管理、全体性、そして存在目的です。それぞれについてごく簡単に説明すると、自主管理は、プロジェクト型の組織で進められ、新たな人の採用も、人事部ではなく、このプロジェクト組織の裁量で決定します。もっと言えば、給料や転勤も自主申告で決めることができます(ただし、助言システムを通す必要があります)。全体性は、人々が職場でもっと「自分らしさ」を発揮することです。存在目的は、エゴにとらわれず、「何のための人生なのか」、「組織や仕事の本当の意味は何なのか」を常に考え続けることです。したがって、ティール組織では、普通の企業が重視する利益、成長、ライバルに対する勝利は目的ではなく、副産物であると明確に位置づけられています。そのため、経営戦略論でしばしば教えられているSWOT(自社の強みと弱み、環境の機会と脅威)分析なども行われないと言われています。このような組織で働くことができれば、私たちはもっと自分らしく、仕事に生きがいをもって打ち込むことができるかもしれません(現在の『働き方改革』は、仕事は労苦であると暗黙の裡に仮定しているようなところがあるように思います)。
 ティール組織は、世界中の組織の中ではほんのごく一部なので、学生の皆さんが将来働く組織は、ティール組織ではない可能性の方が大きいでしょう。ただし、それを当たり前にせず、自分たちが直面している現実は多くの可能性の一部であることを意識できる一冊と思います。