ゼミの紹介

日本語学校での交流活動・このゼミでは、村上春樹・宮部みゆき・梨木香歩などの近現代の日本文学作品を、対象関係論や自己心理学などの前エディプス期の精神分析理論と比較しながら読み解いていきます。
 前エディプス期の理論とは、フロイトのエディプス・コンプレックスより前の時期に、母親から分離して一人でいられるようになる時期の乳幼児の心の中について考えたものです。そうした理論は、文学をはじめとする芸術作品の分析にも使われてきました。乳幼児の心の中で、母親は喪われるのですが、その代わり(象徴)を求めて、芸術が創造されるのです。村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』などの作では、主人公が異世界で分離の苦しみを乗り越えるプロセスが、さまざまなファンタジー的なイメージで描かれています。

・ 出身は英文科で、明治以降の日本文学とイギリス・ロマン派の自然観の比較研究をするうちに、独自の無意識観をもとに幻想的な作品を書く萩原朔太郎、夢野久作、安部公房などの作家を研究するようになりました。こうした作家の研究をしたいという人も歓迎します。

・ 私の著書が出版されました。田中雅史『幻滅からの創造――現代文学と〈母親〉からの分離』(新曜社)です。
 「幻滅」というのはウィニコットというイギリスの精神分析家の理論にある「脱錯覚」(disillusionment)のことで、原初的な全能の母親的対象を「喪う」ことが、逆に内的必要性と結びついた新たな外の「世界」が創り出されるという意味をタイトルに込めました。読んでいただけるとうれしいです。

最近の卒業論文で扱われた作家

日本語学校での交流活動村上春樹、梨木香歩、長野まゆみ、宮部みゆき、

寺山修司、 稲垣足穂、桜庭一樹、伊坂幸太郎、

森見登美彦、舞城王太郎

など。