甲南大学 人間科学研究所

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2025/12/23
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【報告】第16回親子孫子で楽しむアート『偶然を活かす楽しみ~墨流し』

12月6日(土)の午前中10号館において、計16名の参加者とアート・ワークショップを行いました。家族連れから単独参加の学生まで幅広い顔ぶれで、和気あいあいとした雰囲気の中、時にはお互い助け合ったり、譲り合ったりしながら制作に励みました。今回、講師の椋田三佳さんにご指導頂いたのは、「墨流し=マーブリング」です。墨流しは東洋由来で主に墨を使うのに対し、マーブリングはトルコや欧州の由来でカラフルな染料を使うと聞きますが、水面にできた模様を紙や布に転写するという技法は共通しています。このワークショップでは糊を溶かして粘度を上げた水にインク(染料)を落とし、広がり方や色のコンビネーションを楽しんだり、広がったインクに竹串や櫛で模様をつけたりして、それを最初は小さい紙に写し、そして画材の扱いに慣れてきたら、タオルハンカチ、大判のスカーフとだんだん大物に写す段取りで制作を進めました。紙と布では模様の染まり方や発色が違うので、最後のシェアリングの時に皆さんのお気に入り作品を聞くと、和紙にくっきりと模様が写った作品を挙げている人もいれば、淡い色合いでマーブル模様が広がった作品を選んでいる人もいました。アート制作にはめったに携わることのない大人の方からも、色の組み合わせや混ざり具合、染める素材の違いで出来栄えが変わってくることが体験的にわかって、面白いと感じられたという感想がありました。

 

今回の制作で面白かった点は、面積の広いスカーフを染める際に、家族やグループが協力して1枚のスカーフの四隅を持ち、水面にスカーフを下ろして模様を写し、引き上げるという共同作業のプロセスがあったことです。この作業は、ある程度勢いが要り、同時に緊張感も伴うものでしたが、家族で声を掛け合い、子どもたちは大人の言葉を聞きながら、どの部分を写すか、どのタイミングで布を引き上げるか、考えながら頑張っていました。

 

共同作業と言えば、今回のワークショップでは、色が混ざり過ぎて染に使えなくなった水を捨てて、新しい水に入れ替えるという作業がありました。この点でもスタッフに交じって参加者の方々がフットワークよく水汲みに動いてくださる場面があり、大変有難かったです。アート制作は体を全体的に使うプロセスであり、素敵な作品が生まれる工程には、こうした地味な作業もあることを知っていただく機会になったかもしれません。アートを介してコミュニケーションをとりながら、創作プロセスを楽しむというワークショップの主旨が参加者の方との協同作業で達成されたと感じる1日でした。             (報告:内藤あかね)

 

実施日:2025年12月6日(土)10:00~12:30
講 師:椋田 三佳(美術家)
参加者:16名(一般9名、小学生6名、甲南大学学生1名)