本文へスキップ

甲南大学 知能情報学部 小出研究室では,意思決定支援のための最適化やシミュレーションの技術に関する研究をしています.

研究紹介RESEARCH

オペレーションズ・リサーチ(Operations Research:OR)とは

○○○○○○○○イメージ  オペレーションズ・リサーチ(OR)という研究分野では,世の中の様々な問題に対してより良い意思決定を行うための手法や理論について研究しています.数学的理論やアルゴリズム・コンピュータ技法を用いて,意思決定を科学的に行うのが特徴です.

 ORは「問題に挑む」学問ですので,対象とする問題を限定はせず,世の中の様々な問題に対して,様々なアプローチや解法を提案しています.いわば,問題に取り組むための「道具」について研究している学問なのです.ホームセンターに様々な道具が売られているように,ORの研究では様々な問題や手法について研究がおこなわれています.以下にORの分野で扱われている主な問題・手法を記します.
 ・ 線形計画法(Linear Programming: LP)
 ・ 動的計画法(Dynamic Programming: DP)
 ・ ネットワーク計画法(最短経路問題,最大フロー問題,輸送計画問題など)
 ・ スケジューリング問題
 ・ 巡回セールスマン問題
 ・ 待ち行列
 ・ 在庫管理問題
 ・ PERT(日程計画法)
 ・ AHP(階層的意思決定法)
 ・ DEA(包絡分析法) などなど
関連分野として,ゲーム理論,金融工学,サプライチェーンマネジメントなどもあります.

 本研究室で近年主に扱っているORの研究は最適化と呼ばれる研究です.大雑把に説明すれば,多数の候補の中から,最も良いものを見つけ出す研究です.大学内で例えば,時間割の決定,授業の教室割当,研究室への学生の配属など,いろいろな条件や規則を考慮しながら,担当の人が試行錯誤してなるべく「良い」結果を立案しようとする業務が存在します.民間企業にはこのような立案業務が数多く存在します.数学とコンピュータの力を利用して,それらの業務を問題としてとらえ,なるべく良い答えを,なるべく短い計算時間で求めよう,というのが最適化の研究です.


最適化手法による自動立案

 本研究室では,ORの主要な分野である最適化の手法を応用して,実社会における様々な意思決定を支援するための研究をしています.特に,最適化手法を組み込んだシステム開発に近年注力しています.

○○○○○○○○イメージ

「ローテーションを考慮した複数研究室配属」

 知能情報学部3年前期開講科目の「知能情報学実験及び演習」では,受講生が3つの研究室において研究活動の基礎を学びます.受講生は事前に,希望する研究室の順位をアンケートに記入して提出します.学部の教員は,受講生の希望と研究室の定員を考慮しながら,受講生を配属する3つの研究室を決定します.
 
 学生が配属される3つの研究室はそれぞれ異なること,各サイクルで研究室に配属される学生数は研究室の定員を超えず,なるべく平準化されていること,学生の上位の希望をなるべく満足するようにすること,などの条件を考慮しながら,配属作業を人手で行うには多くの時間と労力を要します.
 
 この研究室配属作業を数理モデルで表現して,最適化手法を適用することで,好ましい配属結果を短時間で自動的に導出するシステムを開発しました.システムのインターフェースとして,多くのユーザーに馴染みのある表計算ソフトを採用し,指定された情報を入力して,「実行」ボタンをクリックすることで最適化を実行し,求められた最適解である配属結果を表計算ソフトの画面上に表示することを可能としました.
 


○○○○○○○○イメージ

「定期試験教室・監督者割当」

 大学の定期試験は,公正に運営するために受験者数を大きく上回る収容数の教室で実施されます.そのため,授業期間中に使用している教室と異なる教室で試験が実施されることも度々起こります.定期試験を実施するためには,各授業の試験をどの教室で行うかを決定する必要があります.

 履修者数の多い授業の場合,一つの授業の試験を複数の教室で実施することもあります.その場合,複数の教室はなるべく近い方が好ましいです.また複数の教室に履修学生を分割して割り当てる際には,学年別や学部・学科別などのように,分割基準がより明確であることが求められます.

 また試験を円滑に運営するためには,各試験に複数の監督が必要となり,その数は履修人数によって異なります.試験監督は,学内の教職員が担当します.教員は自らが担当する科目の主任監督を行うだけではなく,他の科目の補助監督も行います.教職員の都合や監督回数の平準化,1日における試験監督回数や連続した時限での試験監督に関する制約,部署ごとの各時限における配属数の上限などを考慮して,どの科目にどの教職員を試験監督者として割り当てるかを決定することも,定期試験を実施する際には必要となります.

 この業務も非常に手間のかかる業務であるため,最適化手法を応用して,より短時間でより高品質な割当ができるよう,現在研究が進行中です.


企業との共同研究

 2021年度から企業との共同研究にも取り組んでいます.詳細は示すことはできませんが,企業さまの状況や要望に応じて,業務改善に役立つ提案を行っています.


その他の研究分野

 ORの研究分野において,これまで行ってきた研究の概要を紹介します.

収益管理・在庫管理

 ORの研究分野において,収益管理(Revenue Management)は収益を最大化させることを目的とした研究分野を差します.イールドマネジメント(Yield Management)とも呼ばれています.元々は,飛行機の座席やホテル・レンタカーなど,その時に売れなければ次の時には売ることができない,在庫を次期に持ち越せない商品を対象していました.時間に応じた価格設定を戦略的に行うことによって,需要を制御し,収益を最大にします.アメリカの航空業界での成功をきっかけに,ORの様々な研究者がこの分野に参入し,需要予測,在庫管理,資産管理などの分野の発展にも寄与しました.

 消費者が特定の商品に対して適正と考える価格を参照価格と呼びます.消費者は参照価格より安ければその商品に値頃感を覚え,参照価格より高ければ購入意欲が衰えます.そのため,ある日生鮮食品が売れ残りそうになったときに,安易に安売りをしてしまうと,その割引価格で購入した消費者の参照価格は下がってしまい,翌日以降通常価格で購入する意欲が落ちてしまいます.長期的な収益を考慮して,適切な商品価格を設定する方法について研究しました.

この研究分野に関する研究内容
  • 消費者の参照価格を考慮した生鮮製品の価格付けと在庫管理

ネットワーク型システムの信頼性評価

 コンピュータネットワークのように,端末を回線で接続することで機能するシステムをネットワーク型システムと呼びます.ネットワーク型システムを構成する端末や回線の一部が故障することで,必要となる端末間通信が不可能となることが起こりえます.部分的な故障に対してより頑健であるようにネットワーク型システムの構成を設計することは非常に重要です.

 ネットワーク型システムを構成する任意の端末間が通信可能である確率を全点信頼度と呼びます.全点信頼度を正確に計算するには,システムが取りうる状態を全て列挙する必要があるため,多くの計算時間を要します.この全点信頼度をより短時間で計算する方法,全点信頼度の近似値を計算する方法,さらに全点信頼度と構築コストを考慮して最適な構成のネットワークを設計する問題などについて研究しました.

この研究分野に関する研究内容
  • ネットワーク型システムに対する全点信頼度の計算に関する研究
  • 信頼度と構築コストを考慮したネットワーク型システムの最適構成

バナースペース

甲南大学 知能情報学部 小出研究室

〒658-8501
神戸市東灘区岡本8-9-1

TEL 078-435-2757(代)