知能情報学部3年前期開講科目の「知能情報学実験及び演習」では,受講生が3つの研究室において研究活動の基礎を学びます.受講生は事前に,希望する研究室の順位をアンケートに記入して提出します.学部の教員は,受講生の希望と研究室の定員を考慮しながら,受講生を配属する3つの研究室を決定します.
学生が配属される3つの研究室はそれぞれ異なること,各サイクルで研究室に配属される学生数は研究室の定員を超えず,なるべく平準化されていること,学生の上位の希望をなるべく満足するようにすること,などの条件を考慮しながら,配属作業を人手で行うには多くの時間と労力を要します.
この研究室配属作業を数理モデルで表現して,最適化手法を適用することで,好ましい配属結果を短時間で自動的に導出するシステムを開発しました.システムのインターフェースとして,多くのユーザーに馴染みのある表計算ソフトを採用し,指定された情報を入力して,「実行」ボタンをクリックすることで最適化を実行し,求められた最適解である配属結果を表計算ソフトの画面上に表示することを可能としました.
大学の定期試験は,公正に運営するために受験者数を大きく上回る収容数の教室で実施されます.そのため,授業期間中に使用している教室と異なる教室で試験が実施されることも度々起こります.定期試験を実施するためには,各授業の試験をどの教室で行うかを決定する必要があります.
履修者数の多い授業の場合,一つの授業の試験を複数の教室で実施することもあります.その場合,複数の教室はなるべく近い方が好ましいです.また複数の教室に履修学生を分割して割り当てる際には,学年別や学部・学科別などのように,分割基準がより明確であることが求められます.
また試験を円滑に運営するためには,各試験に複数の監督が必要となり,その数は履修人数によって異なります.試験監督は,学内の教職員が担当します.教員は自らが担当する科目の主任監督を行うだけではなく,他の科目の補助監督も行います.教職員の都合や監督回数の平準化,1日における試験監督回数や連続した時限での試験監督に関する制約,部署ごとの各時限における配属数の上限などを考慮して,どの科目にどの教職員を試験監督者として割り当てるかを決定することも,定期試験を実施する際には必要となります.
この業務も非常に手間のかかる業務であるため,最適化手法を応用して,より短時間でより高品質な割当ができるよう,現在研究が進行中です.
ORの研究分野において,収益管理(Revenue Management)は収益を最大化させることを目的とした研究分野を差します.イールドマネジメント(Yield
Management)とも呼ばれています.元々は,飛行機の座席やホテル・レンタカーなど,その時に売れなければ次の時には売ることができない,在庫を次期に持ち越せない商品を対象していました.時間に応じた価格設定を戦略的に行うことによって,需要を制御し,収益を最大にします.アメリカの航空業界での成功をきっかけに,ORの様々な研究者がこの分野に参入し,需要予測,在庫管理,資産管理などの分野の発展にも寄与しました.
消費者が特定の商品に対して適正と考える価格を参照価格と呼びます.消費者は参照価格より安ければその商品に値頃感を覚え,参照価格より高ければ購入意欲が衰えます.そのため,ある日生鮮食品が売れ残りそうになったときに,安易に安売りをしてしまうと,その割引価格で購入した消費者の参照価格は下がってしまい,翌日以降通常価格で購入する意欲が落ちてしまいます.長期的な収益を考慮して,適切な商品価格を設定する方法について研究しました.
コンピュータネットワークのように,端末を回線で接続することで機能するシステムをネットワーク型システムと呼びます.ネットワーク型システムを構成する端末や回線の一部が故障することで,必要となる端末間通信が不可能となることが起こりえます.部分的な故障に対してより頑健であるようにネットワーク型システムの構成を設計することは非常に重要です.
ネットワーク型システムを構成する任意の端末間が通信可能である確率を全点信頼度と呼びます.全点信頼度を正確に計算するには,システムが取りうる状態を全て列挙する必要があるため,多くの計算時間を要します.この全点信頼度をより短時間で計算する方法,全点信頼度の近似値を計算する方法,さらに全点信頼度と構築コストを考慮して最適な構成のネットワークを設計する問題などについて研究しました.
〒658-8501
神戸市東灘区岡本8-9-1
TEL 078-435-2757(代)