必要な人に、必要な情報を届ける
データサイエンスをリケジョの選択肢の一つに
データサイエンスをリケジョの選択肢の一つに
甲南大学知能情報学部 灘本明代教授は、ニュースをもとにした漫才台本の自動生成や、避難行動につながる災害情報の発信など、膨大なデータの中から必要な人に必要な情報を届ける方法を研究しています。「リケジョの仕事の選択肢を増やすための進路としても情報系はおススメ」と語る灘本教授。広がり続ける情報分野の魅力に触れました。
Contents
・データサイエンスの研究について
・数学に始まり、現在の研究に至るまで
・情報系学部で広がる、未来の学びと進路
データサイエンスの研究について
KONAN-PLANET 記者
まずは、灘本先生の研究内容を教えてください。

灘本明代 教授
たくさんのデータ(情報)の中から受け取る人にとって必要な情報を整理して選び出し、わかりやすく届ける方法を研究しています。研究成果の一つが、ニュースから漫才台本を自動生成する漫才ロボットです。ニュース記事をボケとツッコミを交えたやりとりに変換し、つかみ、本ネタ、オチの構造に落とし込みます。これを2体のロボットに演じさせることで、聴く人はニュースの内容がスッと頭に入ってきます。ニュースの中から情報のギャップを見つけ出し、どこでボケるべきかを生成AIが判断する高度な自然言語処理技術を使っています。日々笑うことが健康の向上にも寄与するかどうかを実証するため、大阪国際がんセンターと連携し、笑いが患者さんの健康に与える効果の実証研究も進めています。

漫才ロボット
ツッコミ役のあいちゃん(左)とボケ役のゴン太(右)
もう一つが、行動変容につなげる災害情報の伝達方法です。災害が起きた時、SNSには「どこそこが浸水した」というような情報があふれます。これらを分析し、状況や個人の性格に合わせた情報提供を目指しています。例えば、避難勧告が出ても自分は大丈夫と思い込んでしまう人に対しては「近所の〇〇さんが避難しましたよ」など、その人が動きたくなる言葉を選んで届ける仕組みを研究しています。私自身、阪神・淡路大震災を経験しており、災害から命を守ることにつなげていくために、研究成果を社会に早く還元したいと考えています。

KONAN-PLANET 記者
研究の面白さはどんなところにありますか。
-興味×データで社会に貢献する
灘本教授:私たちの研究テーマは、情報工学ではいわゆる王道といわれるような、どうすれば最も速く、正確に答えを出せるといった基礎的な研究ではなく、すでに蓄積された膨大なデータの中から、いかに有用な情報を引き出して、それを求める人に価値ある形で伝えるかという応用研究です。自分が興味のあるニッチな分野でテーマを設け、それがだれかの役に立てるということにやりがいを感じることができます。私の研究室では、例えば数学の教員を目指している学生は、数学の問題を解く過程でどのようなヒントを出せば答えに導いていけるかという研究をしていますし、スキーを趣味にしている別の学生は、スキー場でどのような人がどのような要因でケガをするのかを研究テーマに選んでいます。面白い研究テーマを見つけるためにも、あらゆることに興味を持ってほしいと思います。

数学に始まり、現在の研究に至るまで
KONAN-PLANET 記者
どのような歩みを経て現在の研究に取り組むようになったのですか。
灘本教授:私は高校時代、答えが一つしかない数学の魅力に取りつかれ、数学系の道に進もうと考えていました。親からは工学系に進学するのが良いのではとアドバイスを受け、当初は情報系に進もうと考えていたのですが、当時はソフトウエアの開発者は30歳までしか通用しないという説があり、ハードウエアの電気工学系に進むことにしました。
大学では照明を専門にする研究室に在籍していたため、照明メーカーの研究所に就職したのを皮切りに複数の研究所で勤務しました。その後、神戸大学大学院博士課程に入学し、データベースに蓄積された情報を、WEBを使ってどう応用するかというテーマに興味を持つようになりました。
その後Webが急速に普及していったことから、独立行政法人通信総合研究所(現 国立研究開発法人情報通信研究機構)では、Webのニュースに触れられない人たちにニュースの情報を番組にして伝える研究を行い、それが、ニュースから漫才台本を自動生成する漫才ロボットの開発へとつながっていきました。
KONAN-PLANET 記者
特にどんな研究に力を入れていますか。
-AIでよみがえる平生釟三郎先生の言葉
灘本教授:甲南学園の理念を学生に伝えるために、創設者である平生釟三郎(ひらお はちさぶろう)先生の言葉をデジタルでよみがえらせるプロジェクトを進めています。18巻に及ぶ日記を電子化して現代語に“翻訳”し、名言データベースを構築しました。昨年の入学式では、それをもとに祝辞の台本を作り、AIで生成した音声、3DのCGを活用してバーチャル平生先生にスピーチをしてもらいました。今年の入学式ではより進化したロボット版でのスピーチを行いました。
また、学生の成績情報などをもとに平生先生と学生が対話できるロボットの開発も進めています。プライバシー保護のため情報はクラウドとは切り離した環境で保持し、その中で情報を構造化する研究を進めています。

2025年度入学式で披露したバーチャル平生(左)と2026年度入学式で披露したAI平生ロボット(右)
情報系学部で広がる、未来の学びと進路
KONAN-PLANET 記者
情報系の学部・学科に進学を考えている高校生、保護者にメッセージをお願いします。
灘本教授:私自身、数学好きのいわゆる“リケジョ”だったわけですが、理系に進む女子の将来の進路として勧められる“御三家”が「医師、薬剤師、教員」でした。私はそこに情報系をぜひ加えてほしいと思います。実際に私の研究室を卒業した女子学生の活躍の場は年々広がっており、IT企業ばかりではなく、ゼネコンやメーカーなど様々な業界の企業でITや生成AIのスキルを役立てています。在宅勤務など働き方の多様性にも対応しやすい職種です。ぜひ、進路の選択肢の一として情報系を考えてみてください。

KONAN-PLANET 記者
灘本先生ありがとうございました。
灘本教授が所長を務める、甲南デジタルツイン研究所のホームページはこちら↓
