有機材料化学が切り拓くエネルギー革命
「塗って使える太陽電池」につながる有機色素の研究

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2026.1.16
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材料化学が専門の甲南大学理工学部機能分子化学科 木本篤志教授は、太陽光エネルギーの変換効率の向上につながる「塗って使える太陽電池」につながる有機色素を研究しています。研究者としての歩みを紐解きながら、近赤外光を利用した次世代エネルギー開発の最前線、またその社会実装に向けた展望までを詳しく伺いました。

 

 

Contents

・有機色素の研究について

・これまでの研究生活を振り返って

・社会実装に向けた展望

 

 

 

有機色素の研究について

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

まずは、木本先生の研究内容を教えてください。

 

 

木本篤志 教授

 

有機色素の研究に取り組んでいます。有機色素は、特定の波長の光を吸収して色を発しますが、吸収した光を電気エネルギーに変換できるものもあります。そのような有機色素を有機溶剤に溶解してインキ化することにより「塗って使える太陽電池」ができ、例えばカーテンやブラインド、バス停の屋根のような曲面も太陽電池に早変わりします。従来の有機太陽電池材料は太陽光の半分を占める可視光領域の光を吸収して発電しています。私たちが開発した有機色素は、残り半分の近赤外光を使えるため、エネルギー変換効率の向上が期待できます。

 

 

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

研究の面白さや魅力はどんなところにありますか。

 

 

偶然の発見を実用化へ。材料化学は速さが強み。

 

 

木本篤志教授:化学反応は、分子をレゴブロックのようなイメージで組み合わせるのですが、結合の方法は様々です。近赤外光を吸収できる有機色素は、研究室で学生がたまたま変わった色を発しているのを疑問にもち、新しい化学反応を発見したことがきっかけでした。つまり世界で最初に「新しい化学反応・化合物」を見つけるチャンスがあるのです。近赤外光を吸収する有機色素の応用の一つが太陽電池ですが、それ以外にも光を熱に変換してがん治療に応用する研究も行われています。私たちがかかわる材料化学の分野は実用化のスピードが速いことも特色です。研究成果が数年で商品化されるといったケースもざらにあり、やりがいを感じることができます。

 

 

 

 

これまでの研究生活を振り返って

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

これまでの研究生活の中で印象に残っていることは何ですか。

 

 

有機ELの新手法発見を機に、企業を経て教員へ。

 

木本篤志教授:大学院生時代、スマホやテレビのディスプレイとして使われている有機EL材料に関する研究を行っていたのですが、ある材料にある化合物を加えてみたところ発光効率が上がるという今までにない高効率化の手法を発見しました。その成果が企業の目に止まり、その企業に就職しました。このため、わたしは化学科出身者でありながら工学博士を取得したユニークな経歴を持っています。企業での経験は、大学教員になった今、基礎研究の成果を社会実装するにあたり強みになっています

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

研究室の学生にはどのようなことを伝えていますか。

 

 

失敗を新発見に。「だめだった」で終わらせない。

 

木本篤志教授:単に化合物を作るだけでなく、その化合物をどうすれば働かせることができるかを考える力を養ってほしいと伝えています。そのためには学会などに参加して、他のどんなバックグラウンドを持った研究者がどんなアプローチで研究をしているのかを知ることも大切です。外の世界に触れることで、自分のしていることがどのように派生していくか視野を広げることができるからです。また、これまでの経験の中で「失敗」と思われたことが新しい発見につながることがありました。近赤外光を吸収できる有機色素を発見した時もそうでした。うまくいかなかった時に「ああだめだった」で終わらせるのではなく、そこで何が起きているのか興味を持つことも大切です。

 

 

 

 

社会実装に向けた展望

 

KONAN-PLANET 記者 

 

開発した有機色素を今後どのように社会に広めていこうとしているのでしょうか。

 

 

木本篤志教授:自分たちで社会課題の解決にまで結びつける応用にまで持っていくことができればよいのですが、大変な労力を要します。まずは、開発した材料を「面白がってくれる人」を見つけることが重要で、私自身が“営業マン”になり、学会などで発表していきたいと考えています。そして、太陽電池だけでなく、それ以外のさまざまな応用へ広げ、社会に貢献していきたいと考えています。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者 

 

木本先生ありがとうございました。

※木本先生は、理工学部再編により2026年4月から「環境・エネルギー工学科」に所属する予定です。

進化型理系については特設サイトをチェック!!

 

 

 

 

 

 

 

 

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