
未来に貢献する人材を育てる!甲南大学の進化型理系構想とは
現在、社会はグリーントランスフォーメーション(GX)と呼ばれる脱炭素の世界的な流れや、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれるAIの実装へと大きく動いています。国でもこれらの分野の産業と人材の育成に向けて本腰を入れており、優れた理系人材の確保は、国や企業にとって喫緊の課題となっています。そのような時代の要請に応えるべく、甲南大学では「進化型理系構想」を掲げ、具体化を着々と進行させています。今回は、進行中の構想について、甲南大学 理工学部長の町田信也教授にお話を伺いました。
Contents
・優れた理系人材の育成が社会から求められている
・進化型理系構想のキーワードは「グリーン」「デジタル」「マテリアル」「宇宙・量子技術」「バイオ」
・進化型理系シンポジウムを3月8日(土)に開催
優れた理系人材の育成が社会から求められている
KONAN-PLANET 記者
町田先生、進化型理系構想について色々と教えてください!よろしくお願いいたします。
町田 信也 教授
よろしくお願いいたします。
KONAN-PLANET 記者
「進化型理系構想」の内容の前に、この構想を掲げられた背景を教えてください。
町田教授:現在、グリーントランスフォーメーション(GX)と呼ばれる脱炭素の世界的潮流や、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれるデータやAIによるビジネスモデルの変革へ社会が大きく動いているのはご存知でしょうか?
KONAN-PLANET 記者
カーボンニュートラルやChat GPT等の生成AIがニュースになっていますよね。詳しいことはわからないのですが、社会が大きく変わりつつある印象です。
町田教授:おっしゃる通り、社会が大きく変わっていく中で、これらの分野をけん引する理系人材の不足が指摘されています。実は、日本では理系分野の学位を取得する取得者の割合は35%にとどまっており、諸外国と比べても低い状況にあります。経年変化でも、諸外国の割合が増加する中、日本はほぼ変わっていません。そのため、優れた理系人材の育成が、かつてないほど教育機関に求められています。
KONAN-PLANET 記者
なるほど。ただ、甲南大学には既に理系学部がありますよね?
町田教授:現在、理工学部・知能情報学部・フロンティアサイエンス学部の3学部5学科体制で、理系学部の歴史は1951年の開学時に設置された文理学部にまで遡ります。その後、幾度かの学部・学科改編を経て、現在の体制となりました。
KONAN-PLANET 記者
1951年!それだけ甲南大学は社会に理系人材を輩出した歴史があるということですね。
町田教授:これまで正統派理系の伝統を受け継いできましたが、現代社会が求める分野において、本学の理系学部のポテンシャルをより一層発揮できる面がまだまだあります。伝統的な良さをより強化しながら、時代のニーズに応えるべく、「進化型理系構想」が始まりました。
進化型理系構想のキーワードは「グリーン」「デジタル」「マテリアル」「宇宙・量子技術」「バイオ」
KONAN-PLANET 記者
そういった背景から「進化型」というわけですね。
町田教授:進化型理系構想のキーワードは脱炭素社会、データサイエンス社会に対応した「グリーン」「デジタル」「マテリアル」「宇宙・量子技術」「バイオ」です。学科の構成が大きく変わるのが理工学部で、2026年に「環境・エネルギー工学科」を新設し、さらに、「物理学科」を「宇宙理学・量子物理工学科」に、また、「機能分子化学科」を「物質化学科」に改組し、「生物学科」を含めた4学科体制に進化させます(設置構想中)。新学科では「科学で持続可能な地球の未来を創る」を基本理念に、太陽光発電、バッテリー、水素、資源・カーボンニュートラルなどの材料科学について研究し、これからの環境やエネルギー産業の分野で活躍する人材を育成します。生物学科では、環境、生物多様性の視点から生物を研究し、探求する理系グローバル人材を育成します。また、社会から強く求められている「環境」「健康」の研究を強化します。
町田教授:今回の構想では、より練度の高い理系スペシャリストの養成をめざして、大学院への進学率を30%まで引きあげるという目標を掲げています。そのための大学院改組として、2026年に「自然科学研究科」に「環境・エネルギー工学専攻※」を新設します。
※設置構想中。設置計画は予定であり、内容が変更となる可能性があります。
KONAN-PLANET 記者
他の学部はいかがでしょうか?
町田教授:知能情報学部ではAI+データサイエンスを中心とした6コースの学びの組み合わせから、AI時代に必要とされる情報学分野横断型ゼネラリストを養成します。また、今年度、「甲南デジタルツイン研究所」を設立しました。サイバーフィジカル空間でロボットなどを研究する「未来創造型」と、デジタル技術による交通や輸送の進化を研究する「社会実装型」の2つのテーマを持つラボで、AIで動く未来社会を体感し、学びを深めることができる斬新な研究所です。また、大学院では、2028年に「自然科学研究科の知能情報学専攻」を「知能情報学研究科※」として独立させます。
※設置構想中。設置計画は予定であり、内容が変更となる可能性があります。
町田教授:フロンティアサイエンス学部では2026年から、研究職をめざす学生のために4つのサブコースを設置します。創薬、医療、先端材料、食品・化粧品4コースで、将来の目標に合ったキャリア選択を後押しします。また、先端医療技術の研究拠点が集まるポートアイランドのキャンパスという地の利を生かして、産学連携の「研究開発リーダー養成プログラム」の導入を予定しています。
町田教授:また、教育・研究における進化だけではなく、2027年4月には岡本キャンパスに新理系棟が竣工予定です。新棟では、学部や学科を超えて研究成果などを分かち合い、互いを高め合えるステージとなるよう、さまざまな工夫をおこなっていきます。
新理系棟の外観(西・北 校地エリアがサイエンスゾーンとして進化)
1-2階吹き抜け / 2F凹凸ワンルーム
進化型理系シンポジウムを3月8日(土)に開催
KONAN-PLANET 記者
理工学部に学科が新設されることを記念して3月8日(土)に岡本キャンパスでシンポジウムが開催されると聞きました。このイベントについて教えてください。
町田教授:甲南大学では「進化型理系構想」の具体化を着々と進行中です。その一環で、「未来をつくる高度理系人材養成の最前線」と題し、成長分野に貢献する理系人材の在り方について、議論を深めます。慶應義塾長の伊藤公平氏による基調講演や、甲南大学の教員や卒業生を交えたパネルディスカッションを実施します。
KONAN-PLANET 記者
世の中の動きや甲南大学の取り組みに詳しくなれますね。このイベントに参加ご希望の方は、下のボタンからお申し込みください。
参加申込締切 2025年2月28日(金)
町田 信也 教授
甲南大学の理系は大きく変わろうとしています。理学と工学が融合した学びで次代を開く人材を育てます。これからの進化型理系構想に注目してください。
KONAN-PLANET 記者
町田先生、ありがとうございました。新学科設置や改組に加えて、新しい棟も竣工予定で、大きく変わろうとしている印象を受けました。ますます注目ですね!

- 今回お話しを聞いた人
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甲南大学理工学部 町田信也教授
大阪府立大学大学院 工学研究科 博士課程中途退学後、大阪府立大学 工学部助手を経て、1991年に甲南大学に着任し、現在、甲南大学 理工学部 機能分子化学科 教授。固体中のイオンの移動現象に興味を持ち研究を続けている。新規な固体電解質の開発や全固体リチウムイオン電池の研究に従事している。 <無機固体化学研究室> http://www.chem.konan-u.ac.jp/SSIC/