数百年おきにウイルス達が教えにやってくる!!
繰り返す歴史とは。

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2021.6.14
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2020年、急激な猛威をふるい、あっという間に世界へと爆発的に広がったコロナウイルス。

1年以上を経過してもまだその影響は続いています。

しかし、コロナ禍で人々はその暮らしに対応をする知恵を生み出したり、

これまであたり前だった日常生活の大切さを改めて実感するなど、前向きな成果も沢山あるかと思います。

 

今回は「歴史の中で繰り返される、世界的な感染症から学べること」をお話しします。

 

 

感染症の流行は何千年も前から繰り返している。

今回のコロナウイルスCOVID-19のような世界的なウイルス感染は、実は紀元前8000年以上前から繰り返し起こっています。ウイルスは、人が集まり移動することでどんどん拡大するので、文明化が進み人々の交流が国をまたいでいくことで、世界的な感染へと拡がっていくのです。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

紀元前8000年前から
感染症はあったのです。

 

 

 

ウイルス拡大は「都会病」とも言えるのです。

歴史上もっとも有名な感染拡大が「ペスト」です。ペストは別名「黒死病」と言われ中世ヨーロッパで国を滅ぼすほどの猛威をふるい、恐れられてきました。

 

ペストが広がった当時のヨーロッパは農業生産性が向上し、人口も増加。人の往来も多くなり人口が街に集中しはじめていたこともあり、あっという間に感染爆発となり多くの死者を出しました。
このようにウイルスの感染爆発の原因は人の密集であり、密集する場所である都会を中心とする「都会病」と言えるのです。今回教えてくれるのは、甲南大学で歴史学を専門で教えられる高田先生。

 

 

 

 

人より、ウイルスの方が圧倒的に「強い」

では、都市を中心に感染爆発するウイルスに対しどのように対策をしていけばよいのでしょうか?答えは簡単ではありません。ワクチンによる対策もありますが、ウイルスも進化をしていくため、全てをワクチンで対策することはできないと考えられます。
対処治療法としてのワクチンは大事ですが、いま一度ウイルスと人間の関係、広く言えば、自然と人間の関係について考え直すことが重要です。人間を中心にした見方を修正していく必要があります。

 

人よりウイルスの方が確実に強い。

 

そのことをしっかりみんなが理解し、ウイルスと共存していく方法を考えていくことが大切なのです。

 

 

 

髙田先生

 

歴史を見ても感染症の世界的爆発は繰り返しているのです。
そのたびに起きているのが・・・

社会の崩壊

なのです。

 

 

 

人は命を守って「生存」したり、お金を稼いで「生活」するだけでなく、人とのかかわりから生まれる「生きる喜び」がなければ、充実した生は維持できないのです。しかし、昔から感染症は、生きる喜びを育む場所である「社会」を一気に破壊してきました。

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、人々が孤立し、自己責任と過剰な同調が求められ、息が詰まるような時代の中で起こりました。安心できる社会が崩壊する中、政府による自粛要請でさらに人との関係を絶たれ、苦しみや恐怖を感じている人に対して、拡大する自粛警察は追い打ちをかけていきます。また、人と人とのつながりを回復し、「疑似社会」を再構築する手段であるはずのSNSが、逆に人々を追い詰め、時には人を死に追いやる恐ろしい手段になっているのです。

 

 

 

髙田先生

このように感染症流行の裏側で、社会の崩壊は繰り返されている
歴史を振り返り、歴史から学ぶことが大切なのです。

 

 

 

 

〈 歴史の中で繰り返した社会の崩壊 〉

 

 

 

人類史上、最大の被害をもたらした感染症 天然痘(紀元前~)

天然痘は、人類史上、最大の被害をもたらした感染症といわれています。もともと、数万年前にアフリカで発生し、17世紀にインドで強毒化すると、18世紀末にはヨーロッパで毎年20~60万人、20世紀初頭には3~5億人を死に追いやりました。

 

天然痘が元で起こった社会崩壊 → 文明の滅亡

歴史的に有名なのは大航海時代、天然痘がヨーロッパからカリブ海諸島やラテンアメリカにもたらされたことです。ヨーロッパによって、アステカ文明やインカ文明などのアメリカ大陸の文明が滅ぼされ、100年間で人口は200万人から160万人へ激減しました。これは軍事力によるものだけでなく、ヨーロッパからもたらされた感染症のもちこみによるものでもあったのです。

 

 

 

〜黒い悪魔〜 ペスト(6世紀~)

ペストはこれまでに三度、爆発的に流行しています。一度目は6世紀、アフリカからアラビア半島にかけて発生し、二度目は1346~52年、ヨーロッパ全土に広がりました。三度目は、1894年に香港で発生し、台湾、ハワイ、日本にも波及。神戸でも400人近い死者が出ました。

 

ペストが元で起こった社会崩壊 → 封建制の解体と差別

ペストの流行でヨーロッパ人口の半分が死亡しました。これにより、労働力が不足して荘園制は解体し、封建社会も崩壊しました。ペストは、定住地を持たないユダヤ人が井戸と水を汚し空気を汚染したとされ、虐殺・処刑されました。神戸でも、ペストの原因とされた貧民の集落が焼き払われました。感染症は常に、身内に「敵」をつくりだし、彼らをいじめることで不満を解消しようとする動きをつくりだすのです。

 

 

 

戦死者より死者が多い!! スペイン風邪 (20世紀〜)

1918年のスペイン風邪の流行は、米国・カンザス州の軍事基地で発生。米兵が第一次世界大戦参戦のためにヨーロッパに派遣されると、戦線や兵士の輸送路、兵士が滞在する町で一気に感染が広がりました。これが世界に拡大し、当時の世界人口の1/3~1/2が感染し、2000~5000万人が死亡しました。

 

スペイン風邪が元で起こった社会崩壊 → 差別

この当時の日本の対策を見ているとマスク着用、距離をとること、手洗い・うがいの励行、外出の抑制など今の「コロナウイルス」の対策とまったく同じなのです。ワクチン開発を除いては。スペイン風邪が社会へ影響を与えたことは今に繋がる「マスク着用」です。当時はアメリカでさえマスク着用の法律ができて義務化をされました。この時もマスク着用をしてない人に対する同調圧力などがあったことは容易に想像ができます。

 

 

髙田先生

 

世界中で感染症が起こるたびに、弱者や同調しない人たちを追い詰める
社会の崩壊・分断が起こっているのが分かります。

 

それは日本でも例外ではありません。
また、感染症だけでなく災害でも同じような差別が起こります。

 

 

 

まさに歴史は繰り返していて、にも関わらず人々はそこから学ぶことがなかなかできていないように感じました。今回のコロナウイルスでも、同じようなことが起こりつつあると、高田先生。感染症に対し、経済のストップと感染拡大だけに目を向けるのでは無く、その真ん中にある「生きる」ということにも注目して欲しいと思います。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

ソーシャルディスタンスは「社会的距離」という、

“分断”を想起させてしまう言葉。

 

社会を分断させない、感染を広げないために
ただ単純に「距離」を置こうという
フィジカルディスタンスを意識していきましょう。

 

 

 

今回お話しを聞いた人
甲南大学 文学部 歴史文化学科 髙田実 教授

2014年甲南大学着任。イギリスの福祉史を研究している。「福祉」を目的としてではなく、「よりよく生きる」ための手段と考えている。そのためには、よき社会を維持することが不可欠である。近年は「生の歴史学」に関心をもち、「生存」「生活」「生きる」の三つの言葉がさす意味の違いにこだわりつつ、社会と人間の関係の総体を描く歴史を志向している。なお、顔のイラストは学生が描いてくれたものでお気に入りだそう。

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