日本の伝統文化「書道」の魅力を、もっと!
書道家の道を歩き始めた鶴原さやかさんにインタビュー
書道家の道を歩き始めた鶴原さやかさんにインタビュー
幼い頃から親しんできた書道の魅力をもっと広めたい。自分の好きなことを仕事にしたい。そんな思いで、甲南大学卒業後、書道家としての道を歩み始めた鶴原さやかさん。転機となった学生時代、書道に対する深い愛情など、鶴原さんの思いをじっくりとお聞きしました。新たな境地を求める彼女の情熱に、ぜひふれてください。
Contents
・仲間に刺激を受けた学生時代
・大学在学中にJAPAN EXPOに出展
・書道の新たな境地を求めて
・ 日本で書道をもっと身近な存在に
仲間に刺激を受けた学生時代
KONAN-PLANET 記者
まずは大学時代のことを教えていただけますか。
鶴原さやかさん
高校時代から英語が好きだったので、西宮キャンパスにあるマネジメント創造学部を選びました。特に1年次は毎日英語の授業があり、いつか書道を海外に広めたいと考えていたので、そのためにもいいなと考えての進学でした。
KONAN-PLANET 記者
実際学んでみていかがでしたか?
鶴原さやかさん
「やりたいことがある」人たちが集まる学部
この学部を選んで良かったです! ここには、いろんなことに目を向けている人が集まっている印象があります。やりたいことがあり、大学以外で活動したり、自分のやっていることを発信したりしている人がたくさんいて、その幅がすごく広く、周りの人たちからたくさん刺激を受けることができました。
KONAN-PLANET 記者
2023年に卒業したあと、今は書道家として活動されています。
鶴原さんの書道との出会いについて教えてください。
鶴原さやかさん
6歳のとき、母と一緒に書道教室に通い始めたことがきっかけです。賞をもらったり、先生に褒めてもらったりするとモチベーションが上って、長く続けてこられたのかなと思います。書道はいつも身近にあるので、もはや、生活の一部ですね(笑)。高校生になって「書写」から創作性が問われる「書道」のレベルになり、自分で工夫して書くことができるようになって、どんどん面白くなっていきました。
KONAN-PLANET 記者
大学時代は書道部でも活躍されていたそうですね。
鶴原さやかさん
はい、書道部『甲墨会』で活動しました。岡本キャンパスで活動している課外活動団体で、所属できるのは「岡本キャンパスの学生のみ」という規則があるんです。私が所属しているのは西宮キャンパスだったので、初めは断られてしまって・・・でも、どうしても入りたかったので、先輩方に頼み込んで入部させてもらいました。
課外活動で、「みんなで書く」楽しさを体験。
『甲墨会』では新入生歓迎会と大学祭、商業施設の御影クラッセでのイベントと、年に3回、書道パフォーマンスをする機会があります。これまで一人で書道をしてきたので、みんなで書くということがとても新鮮でした。私は3年次でこの書道パフォーマンスのチーフを任され、練習のスケジュールを組んだり、どんな字を書くのか、曲や背景を決めたり、誰がどのタイミングで入って書くかの構成を考えたり、とても楽しく、やりがいがありました。
KONAN-PLANET 記者
書道パフォーマンス、ダイナミックでしょうね。
鶴原さやかさん
そうなんです。大きな紙に大きな筆で書くので見応えもあります。なかでも御影クラッセのイベントでは様々な年齢層の方に見てもらって、みなさんに喜んでいただけました。小さいお子さんも多かったので、私たちのパフォーマンスを見て書道に興味を持ってもらえるといいなと思いますね。
大学在学中にJAPAN EXPOに出展
KONAN-PLANET 記者
卒業後、書道家の道を選ばれました。
きっかけになったことなどありますか?
鶴原さやかさん
自分自身とじっくり向き合った2年間。
大学在学中、2、3年次の時にコロナ禍で大学にもアルバイトにも行けない時期がありました。家で過ごす時間が増えたので、「何か自分にできることをやろう」と思って始めたのが、書道作品をインターネットで発信することだったんです。この間、じっくり自分と向き合うことができましたし、SNS上での反応やつながりなど、新しい楽しみを発見することができました。
大きな転機となったのは、4年次の時、7月にフランスで開催されたJAPAN EXPO Paris 2022への出展です。日本の運営事務局の方がSNSで私の作品を見てくださって、出展しませんか?と依頼してくださり、思いきって出展することにしました。
日本と日本文化に恋する人たちが一堂に会するイベント。毎年フランスのパリ、マルセイユ、オルレアンの3都市で開催される。パリ会場では、マンガ、武道、ビデオゲーム、民芸、J-POPから伝統文化までをカバー。日本文化に関心を寄せる人にとっては見逃せない祭典となっている。
伝統音楽、伝承芸能、演劇、生け花、茶道、書、日本画、料理など、日本に古来から伝わる芸術に触れる機会も提供。パフォーマンス、講演、ブース展示などが催され、メーカーや出版社、小売業だけでなく、若手アーティストや若手クリエーターの発表の場ともなっている。
KONAN-PLANET 記者
JAPAN EXPOでは、どのような経験をされましたか
鶴原さやかさん
伝統文化の「Wabi Sabi」という枠組みでブースを構え、作品を展示・販売しました。アクリル板にアクリル絵の具で書いた作品や、キャンバスに色の付いた墨で書いた作品が人気で、「新鮮でいいね」とフランスの方々に喜んでいただけて嬉しかったです。その場で来場者のリクエストを受けて小さな団扇に漢字一文字を書く、というワークショップもとても好評でした。フランスでは芸術が非常に身近な存在で、暮らしの中に芸術がある。アートを気軽に家に飾る習慣もあり、とてもいいなと思いましたね。
自分の「価値」に気づくことができた。
4日間と短い期間の出展でしたが、販売価格の設定や作品の展示方法など、いろいろな学びがありました。なにより、自分の作品の価値が分かり、もっと自信を持っていいのではないかと感じることができました。
書道の新たな境地を求めて
KONAN-PLANET 記者
現在の書道家としての活動について教えてください。
鶴原さやかさん
書道家として活動を始めてもうすぐ1年になります。最近はクリスマスのイベントに出展したり、命名書を販売したり、活動の幅も、人とのつながりも広がってきました。今後は、日本酒のラベルなど、パッケージのデザインなどもしてみたいですね。
KONAN-PLANET 記者
この命名書はアートのように美しいですね!
鶴原さやかさん
お部屋に飾れる「命名書」を制作。
フランスの人たちのアートを飾る習慣にふれて、赤ちゃんの命名書もお家で飾ることができれば・・・と思ったんです。命名書は、一般の人たちが書道にふれるいい機会でもありますから。アクリル板を使うようになったのは、透明なので文字の影も作品になって素敵だなと思ったのが始まりです。少しずつ受注も増えてきて、一人目、二人目と揃えたくなるような作品にしたいなと思っています。
KONAN-PLANET 記者
KONAN ライブラリサーティフィケイトの
読書ノートをデザインされたそうですね!
鶴原さやかさん
学生時代の恩師で図書館長の杉本先生から依頼をいただきました。図書館のKONANライブラリ サーティフィケイトに取り組む学生が日々の活動を記録する読書記録ノートの表紙として2案提案し、両方採用していただきました。
KONAN-PLANET 記者
どんなイメージで制作されたのでしょう
鶴原さやかさん
赤は甲南大学のカラーを、緑は緑豊かなキャンパスをイメージしています。「紡」という漢字には、読書を重ねることで得たものを自分の言葉で紡いで記録を綴ってほしい、という思いを込めています。これを手にした学生たちが持ち歩きたくなるようなデザインを目指しました。
甲南大学では、「人物教育率先」の理念に基づき、一人ひとりの学生がもつ力を評価認定する「KONAN サーティフィケイト」制度を設けています。大学生活で身につける力は、学部・学科で学ぶ専門力だけではありません。「KONAN サーティフィケイト」は、授業では評価しきれない個性ある挑戦を評価し、認定します。
「KONAN サーティフィケイト」は、「ライブラリ」「スポーツ」「グローバル」「ラーニング サポート」「ボランティア」「キャリアデザイン」の全6分野で構成され、3級から1級までの各級に取得要件が定められ、活動の実績に応じた等級を評価認定し、学生たちのさまざまな個性を応援しています。
「ライブラリ サーティフィケイト」は、読書活動を中心に、書籍に関する幅広い活動をとおして、読書習慣及び情報探索力・表現力・行動力・企画力などを身につけた学生を評価しています。
日本で書道をもっと身近な存在に
KONAN-PLANET 記者
鶴原さんの思う書道の魅力とは?
鶴原さやかさん
書道には、同じものが一つとありません。書くのは一発勝負ですし、これまで培ってきた技術をすべて込めて書く、そこに魅力があります。筆の動かし方やスピードなど、ちょっとした変化で大きく違ってきますし、表現としてとても面白いと思います。
KONAN-PLANET 記者
これからの目標を教えてください。
鶴原さやかさん
日本文化「書道」の魅力を伝えたい
甲南大学に入学した頃は、「書道を海外で広めたい」という思いがありました。けれどもフランスに行ってみてあらためて日本に目を向けたときに、国内で書道があまり認知されていない、日本の文化なのに、日本人にもまだまだ書道の良さが理解されていないなと感じたんです。
昨年は文化庁が「書道」をユネスコの無形文化遺産として提案することを決めました。これからは、作品の発表や、所属している書道会での活動を通じて、書道の魅力を広く伝えていきたい。書道の世界では40代や50代で若手と言われますが、私たち若い世代が盛り上げていければと思っています。
KONAN-PLANET 記者
最後に、大学生のみなさんにメッセージをお願いします。
鶴原さやかさん
自由な時間が多い学生時代は、挑戦しやすい時期でもあります。やりたいことに対して一直線なのもいいですし、自分に「これ!」というものがない人も、なんとなく始めれば後からついてくるパターンもあります。何が将来につながるかわかりませんから、まずは、関係なさそうなことから始めてみるのもいいと思います。
4年間は長いようで一瞬です。
ぜひ、興味のあることから始めてみてください!
書道家
鶴原 さやか さん
2023年、甲南大学マネジメント創造学部卒業。甲南大学卒業後、書道家として活動開始。幼少期から書道に親しみ、学生時代にJAPAN EXPO Paris 2022に出展。創作作品や命名書を通じて、日本文化の魅力を国内外に広める。現在、書道の普及を目指し、多方面で活躍中。
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