いまJリーグでは大学出身選手が増えており、大学サッカーが注目を集めています。そんな中70年以上の歴史を持つ甲南大学サッカー部は、強豪大学がしのぎを削る関西学生サッカーリーグに所属し、2020年には全国大会ベスト8にも輝きました。この伝統あるサッカー部から、2021年は木村太哉選手がファジアーノ岡山に、2022年には井上聖也選手がアピスパ福岡に入団。すでにプロとして活躍しているお二人に、今回は大学時代から将来のことまで、いろいろなお話をお伺いしました。
甲南出身のJリーガーが語る
“大学サッカーの魅力”
KONAN-PLANET 記者
本日はお忙しい中ありがとうございます!よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
KONAN-PLANET 記者
甲南大学サッカー部で活躍されてからJリーグのクラブに入団されたお二人ですが、いつ頃からプロを目指していたのでしょうか。
木村選手
小学生ぐらいからぼんやりとは考えていたんですが、明確にプロになりたいと思ったのは高校卒業のときですね。高校のチームメイトからプロになった選手がいて、そこでスイッチが入った感じです。
井上選手
僕も高校3年の終わりぐらいからですね。プロになるためにもっと自分のサッカーを高めたいと思い、大学でサッカーを続けようと決意しました。
はっきりとプロを目指したのは意外に遅かったんですね。いま大学サッカーが注目を集めていますが、その魅力はなんでしょうか?
主体性を持ってサッカーができるところですかね。高校時代より自由な環境なので、どれだけ自分を律するかが重要になります。そこで他のことに逃げてしまうと、とてもプロになんかなれない。主体的にサッカーに取り組む姿勢が大学では磨かれます。
そうですよね。高校時代は学校の敷地内で毎日が完結していたけれど、大学生になると一気に行動範囲が広がります。それだけ学ぶ材料も多くなるのですが、やはり自主性が養われます
自主性ですか。サッカー選手には身体能力や技術だけでなく、そうしたメンタルも重要なんですね。
プロの世界では、他の選手はチームメイトであると同時にライバルでもあります。みんな人生がかかっているので、厳しい競争に勝たなければいけない。自分からアクションを起こせないと埋もれていく一方だと思うんです。ピッチの中でも、チームとしての連動は重要ですが、個々で勝負する局面もある。全体を俯瞰しながら主体的に行動する能力というのは不可欠で、そこが大学サッカーで鍛えられて身についたと思います。
サッカーにおいて、人間的な成長というのはとても重要なことなんです。大学では、部活はもちろんキャンパスやアルバイトなどで様々な人と出会うことができます。僕もそこから自分の価値観を少しずつ確立し、人間としての礎を進化というか、グレードアップすることができました。
甲南大学サッカー部って、どんな環境なの?
大学でサッカーを続けるにあたって、甲南大学を選んだ理由というのはなんでしょう。
甲南大学サッカー部は、大学サッカーでもトップレベルの関西学生サッカーリーグに所属していて、しかも1部あるいは2部にいるチームです。それが最大の理由でした。
僕もそうですね。関西学生サッカーリーグで戦っているチームだというのが魅力でした。
大学サッカーのなかでもハイレベルな環境でプレーできるということですね。
あとは文武両道を掲げている大学なので、勉学にもしっかり取り組めるかなと思いました。ここなら自分自身の幅広い成長につながるだろう、という予感があって甲南大学を選んだというのもあります。
実際に甲南大学サッカー部に入ってみて、良かったと感じたのはどんなところですか?
Jリーガーとして実績のある柳川監督(当時)に出会えたことが大きかったですね。あとはOBの方々のバックアップがすごく心強い。甲南大学への誇りとか、サッカーへの情熱を感じる人ばかりで、その存在が、現役選手たちにもプラスとなって還元されていました。
それでいて普段は、あくまでも学生たちが主体となって活動しているんです。練習でもなんでも、すべて自分たちでアクションを起こしていく。そういう自分から行動できる環境が整えられている点は甲南大学サッカー部の大きなポイントだと思います。あとキャプテンを任されていたので、チームを組織として見る力、察する力というのも学ばせてもらいました。
サッカー部の拠点となる六甲アイランド総合体育施設には、トレーニングのための施設や器具がすごく充実しているんです。選手にとってはまさに理想的な環境だと思います。
僕が3回生のときには人工芝も新しく張り替えられたんですよね。怪我の心配が少ない環境で練習できたのはすごく良かったです。
プロサッカー選手になるための条件とは
プロサッカー選手に憧れている高校生は多いと思うのですが、プロになるための条件はどんなことでしょう。
なんでもまんべんなく上手い選手よりも、なにかひとつ、自分だけの強みをもっている選手のほうがプロになりやすい気はします。あとは、何度も言いましたけど自分で考えて行動できる力ですね。
僕が大切にしてきたのは継続力ですね。どういう選手になりたいのかという理想像を決めて、そのために何をすれば良いのか考える。そして試行錯誤しながらも継続して行動していく。そういう論理的に努力していける人が、サッカーに限らず上にいける人なんじゃないかなと考えています。
どれだけ努力しても、プロになることはやはり簡単なことではないですからね。でも、本当に目指したいなら井上選手が言ったように継続していくしかないんです。プロになりたいという気持ちを忘れずに取り組むことです 。
そのためのアドバイスではないですけど、僕は中学の頃からサッカーノートをつけていました。
サッカーノートですか!ちなみにどんなことを書いているんですか?
毎日、練習で気づいたことや、動画を見直して感じたことを忘れないようにノートに書くんです。文字にすることで自分を客観的に知ることができますし、改善点なども見えてきます。後で見返しても面白いし、続けていく気持ちを維持することができますよ。
おもしろいですね。そんなお二人から見て、もしも高校生でプロ入りか大学進学か悩んでいる人がいたらどちらを勧めますか。
一概には言えないですが、高卒一年目からすぐに試合に絡めるかというと難しいし、僕なら進学を勧めますかね。大学というのは、自分が成長するためのきっかけや学びがたくさんある環境です。ここで4年間、しっかり自己投資をできない人というのは、高卒でプロになっても成功しないと思うんですよね。
木村選手が言うようにプロで高卒一年目から活躍するというのは本当に難しい。だから、しっかりとした考えがあるのなら大学進学も良いんじゃないかと思います。ただ、きちんとサッカーに取り組む、学ぶという意志がないと誘惑に負けるかもしれませんが。
プロとしての目標と、将来の夢について
すでにJリーグでもしっかりプレーしているお二人ですが、現在の目標はなんでしょう?
昨シーズンは怪我もあってなかなか試合に絡めない時期もあったので、今年はきちんと結果を出していきたいですね。シーズン通しての目標もありますが、まずはサッカーをもっと楽しみたいし、自分らしいプレーを発揮していきたい。あと選手としては三笘薫選手が目標です。僕もドリブルで仕掛けることが多いので参考になりますし、大卒であそこまで海外で活躍しているのはすごい。追いつきたいという気持ちです。
僕は、まだチームでの出場機会がカップ戦だけなんです。だから今季はリーグ戦にも出場して、しっかりとスタメンをとっていくことが目標です。
まだ気の早い話ですが、選手引退後のセカンドキャリアとしてイメージしていることはありますか。
いまはまだ深く考えてはいないですね。プロという厳しい世界で死にものぐるいに戦っている最中なので。先のことよりも、まだまだ現在のことに集中しています。
僕も具体的なセカンドキャリアとかは描いていませんが、将来的な夢というならビルをひとつ持つことです!
ええ。木村選手も経験したと思うんですが、大学では身体操作というのを教わります。身体の構造とか使い方とかですね。それにすごく興味があって、いまも個人的に学んでいるほどです。なので、種目を問わず自分の身体について知ってもらう教室を開きたい。そのためのビルです。知名度や資金力が必要になりますから、まずはサッカー選手として成功することですけど。
そういう意味では、大学での勉学をもう少しがんばっても良かったかなとは思いますね。指導者を目指していなかったので教職課程も取りませんでしたが、セカンドキャリアに向けて役立つことも多いでしょうし。いまは学生時代より多く本を読むようになりましたよ。もちろんサッカーに関してなら、自信をもって「やりきった」と言える大学生活でしたけどね。
なるほど、今日は貴重なお話をありがとうございました。これからも素晴らしいプレーを期待しています。がんばってください!
KONAN-PLANET 記者
Jリーグへの新規入団は毎年200人程度ですが、近年は大卒選手が注目を集め、半数以上を大学サッカー経験者が占めます。プレー強度の求められるスポーツなのでフィジカルはもちろん、高度化する戦術に対しての理解力や判断力も求められるプロサッカー。年間通じてのリーグ戦やカップ戦で身体的にも精神的にも鍛えられた大卒選手は、即戦力として期待されるわけです。今回取材できたお二人からも、エピソードや考え方にすごくインテリジェンスを感じました。人物教育の甲南大学から飛躍した新世代のJリーガーを、これからも応援していきたいですね。
木村太哉(きむら たかや)
甲南大学 マネジメント創造学部 (2021年卒) チーム歴:フレンドリーSC – アンフィニMAKI.FC U-12 – アンフィニMAKI.FC U-15 – 札幌大谷高校 – 甲南大学 – ファジアーノ岡山 1998年、東京都生まれ。大学4年次には主将を務め、甲南大サッカー部の躍進に尽力。創部以来初の全国8強進出を果たした。2021年春よりJ2リーグ ファジアーノ岡山に所属。ポジションはMF。
井上聖也(いのうえ せいや)
甲南大学 経営学部(2022年卒) チーム歴:末広FC – 宝梅中学 – 県立西宮高校 – 甲南大学 – アビスパ福岡 1999年、兵庫県生まれ。大学2 年次に2部優勝、1部昇格に貢献。 大学3年次に全国大会(atarimaeni cup)ベスト8、大学4年次に 関西選抜、2021年3月に加入内定及び特別指定選手承認。2022年、アビスパ福岡に正式加入。ポジションはDF。