
学生の力でフードロス削減!甲南発「ドギーバッグ」が誕生
グローバル教養学環STAGEの一期生が、STAGE演習(ゼミ)での学びをきっかけに、SDGs(持続可能な社会)の課題解決をめざすプロジェクトを立ち上げ、フードロス削減を目的とした対策として「ドギーバッグ(食べ残し持ち帰り容器)」を企画提案しました。そのアイデアとデザインが甲南学園の公式ノベルティとして採用されることが決定され、学生たちは素材や形状、メッセージなどの細部にこだわりながら、ドギーバッグ制作に主体的に取り組みました。学びを社会課題の解決へとつなげたこの挑戦は、どのようにして生まれ、実現していったのか──メンバーたちにその道のりを聞きました。
Contents
・STAGE演習から始まった、社会課題への挑戦
・「大学都市KOBE SDGsマルシェ」にもブース出展
・学生のアイデアが“形”に ── ドギーバッグで広げるフードロス削減の輪
・学生インタビュー ── 現場から生まれたリアルな学び
グローバル教養学環STAGEは、グローバルキャリアを志す人のための教育組織として、2024年に開設されました。 複数言語圏への「ダブル留学」を軸に、学生が複数言語の運用力や異文化調整力を磨き、国際・地域社会の課題解決に必要な教養を修得できるよう支援します。 世界基準で考え、社会の第一線で活躍できるグローカル人材の育成をめざしています。
STAGE演習から始まった、社会課題への挑戦
STAGE演習は、グローバル教養学環の学びの中心となる少人数制の科目。SDGsや地域創生など幅広い学問を学びながら、海外大学とのオンライン授業やプロジェクトを通じて、課題解決力、表現力、実践力を身につけ、自ら考え行動する力を養います。グローバルな視点で学びを深め、自治体や企業が抱える課題解決に向けて実践的な取り組みを行います。
1年次のSTAGE演習では、12月に開催される成果発表イベント「リサーチフェスタ」に向けて、チームごとに関心のあるテーマを探究します。今回取材した5名の学生たちは、甲南大学のごみ処理の現場を見学したり、大学生協職員からフードロスに関するレクチャーを受けたりする中で、身近な問題に対する意識が深まっていったとのことです。それをきっかけに、イベントに向けて、「大学食堂におけるフードロス削減」をテーマに、課題解決に向けた提案を検討していったそうです。
そして迎えたリサーチフェスタ当日。学生たちは、日本の飲食店における利用実態、環境負荷、欧米との文化的相違などを調査し、その結果をもとに、甲南大学におけるテイクアウト導入の可能性やドギーバッグの利用について発表を行いました。発表は多くの注目を集め、その成果が高く評価され、「ビッグデータ賞」を受賞しました。
「ドギーバッグ(doggy bag)」は、レストランなどで食べきれなかった料理を持ち帰るための容器のことです。欧米では環境保護やフードロス削減の観点から一般的に使われており、広く定着しています。一方、日本では衛生面の不安や文化的な抵抗感からあまり普及していませんでしたが、近年はSDGsへの関心の高まりを受け、徐々に注目を集めつつあります。
「大学都市KOBE SDGsマルシェ」にもブース出展
甲南大学(岡本キャンパス)で初開催された「大学都市KOBESDGsマルシェ」に、5名の学生たちがブース出展しました。このイベントは、市民参加型のSDGs交流の場として一般社団法人大学都市神戸産官学プラットフォームが主催し、甲南大学・神戸学院大学・神戸大学が共催。幅広い世代の来場者の方で会場はにぎわい、終始活気にあふれていました。
STAGEブースでは、授業で学んだSDGsの知識から得た気づきに加え、住吉川での地域学習や、甲南大学のごみ処理施設の見学、大学生協職員からのレクチャーを通して深めたフードロスの課題について、来場者に発信しました。学食におけるフードロス削減の研究成果を紹介したプチ発表は、多くの来場者の関心を集め、STAGEのSDGs教育を広く伝える貴重な機会となりました。
学生のアイデアが“形”に
── ドギーバッグで広げるフードロス削減の輪
「せっかくなら、ここで終わらせたくないよね」。リサーチフェスタでの発表を経て、学生たちはプロジェクトを“実装”へと進めるべく、チームを再結成。指導教員である千葉美保子准教授のサポートのもと、学生たち自身で企画書を作成し、大学グッズを所管している「つながる学園推進室」へ正式に提案を行ったところ、ドギーバッグが甲南学園の公式ノベルティとして採用されることが決定しました。
その後も学生主体で制作を進め、デザイン、仕様、説明文、配布方法に至るまで何度も話し合いを重ね、実用性とメッセージ性を両立させたアイテムになるよう心がけたそうです。春休み期間も活用しながら、毎週のミーティング、アンケート調査、大学生協との調整など、粘り強く活動を継続していき、オリジナルのドギーバックがついに完成しました。
学生が企画し完成したオリジナル・ドギーバッグ
完成したドギーバッグは、甲南大学の公式キャラクター「なんぼーくん」とSDGsの17色をあしらったポップなデザインで、環境配慮素材を用いた実用的な仕上がりとなりました。この取り組みは、製作を担った「マイボックス普及企業組合」のウェブサイトでも紹介されています。
オリジナル・ドギーバッグ
学生インタビュー ── 現場から生まれたリアルな学び
KONAN-PLANET 記者
まず、どうしてフードロスに関心を?
稲垣 秀亮さん
実はもともと、そこまで興味はなかったんです。でもゼミでデータを見たり、グループ活動を通して調べていく中で、「肥料に再利用されている事例がある」と知って驚きました。捨てるしかないと思っていたので…。
岡山 奈津希さん
私は小さい頃から「食べ残すのはもったいない」と思っていました。STAGE演習で日本のフードロスの量を知って、本当にびっくりして。「これは、何かしたい」と思ったのがきっかけです。
鈴木 凱晴さん
飲食店でアルバイトしていて、期限切れや食べ残しが出るのを日常的に見ていたので、もったいなさを肌で感じていました。
櫻井 大務さん
STAGE演習でフードロスについて調べていくうちに、「実はすごく身近な問題なんだ」と気づきました。普段あまり意識していなかったけれど、深刻な社会課題でもあると知って、だんだん関心が深まっていきました。
KONAN-PLANET 記者
まず、どうしてフーリサーチフェスタではどんな発表を?
稲垣さん:時間の都合もあって、リサーチフェスタの時は“提案”までで終わったんです。でも「ここで終わりたくないよね」って。発表は終わってたけど、みんなで集まり直して、制作まで進めることにしました。
厚東 満帆さん
実際に大学生協さんに協力してもらって、アンケート調査も行いました。春休み中も、チームで週1で集まって話し合いました。
KONAN-PLANET 記者
デザインは大変だったのでは?
岡山さん:はい…(笑)。最初はSDGsの公式ロゴを使おうかとも考えたんですが、「せっかくなら私たちらしさを出したい!」と思って方向転換しました。手に取った人が興味を持ってくれるように、デザイン構成には特に工夫を凝らしました。完成したときは、本当に「かわいい!」って、自分たちでも思える仕上がりになりました。
鈴木さん:僕は、ドギーバッグに同封する説明文の作成を担当しました。フードロスの問題やSDGsの重要性が伝わるよう、言葉を慎重に選びました。
KONAN-PLANET 記者
苦労したことや、学んだことは?
稲垣さん:ドギーバック提案の企画書を作るときに、「自分はこれがいい」と思っても、他の人に上手く伝わらなかったり…。いろんな人の意見を聞く姿勢やコミュニケーションの大切さを学びました。
厚東さん:何かを実現させるには、いろんな人と話し合って、納得してもらうことが必要。でもそれが本当に難しい。でも、そこに一番やりがいがあるとも思いました。
櫻井さん:日々の生活の中で、一人ひとりの意識が変わるだけでも無駄を減らせるんだなと感じました。小さなことでも、持続可能な社会づくりにつながると気づかされました。
KONAN-PLANET 記者
今後にどう活かしたいですか?
鈴木さん:「考えるだけ」じゃなくて「行動すること」の大切さを実感しました。伝える手段や工夫を、これからも大事にしたいです。
岡山さん:自分のアイデアが誰かの役に立てるって、すごく素敵なことだと思いました。これからも社会課題に取り組んで、貢献できるよう頑張りたいです。
厚東さん:ドギーバッグをきっかけに、学食の売れ残りがゼロになったらうれしいです。在学生にもどんどん働きかけていきたいです。
KONAN-PLANET 記者
最後に、同じように取り組んでみたいと思っている学生へ。
稲垣さん:やってみて初めて分かること、たくさんあります。失敗してもいいから、一歩踏み出してみてください!
岡山さん:自分の“好き”や“モヤモヤ”が、誰かの役に立つかもしれません。やってみる価値、ありますよ。
厚東さん:知るだけじゃなく、「動くこと」に意味があります。仲間と一緒に、ぜひやってみてください!
全学共通教育センター / グローバル教養学環
千葉 美保子先生
「STAGE演習」での学びをきっかけに、学生たちは授業の枠を越えて、社会全体のフードロス削減に向けた取り組みに挑戦しています。春休み前から活動を本格化させ、限られた時間のなかで、企画を練り、自分たちの想いを込めたデザイン案をもとに、製作担当者の方とやり取りを重ねながら、オリジナルのドギーバッグを完成させました。留学中のメンバーも海外から積極的に参加するなど、多様な視点を取り入れ、主体的に制作を進めていました。今後はこのドギーバッグを活用し、地域や大学と連携しながら、活動の幅をさらに広げていく予定です。学生たちの挑戦を、ぜひ温かく見守っていただければ幸いです。
KONAN-PLANET 記者
ちょっとした気づきが、
社会を変える一歩になるかもしれないよ。
社会の問題を自分のこととして考えると、
学びも未来ももっとおもしろくなる。
なんだかワクワクしてこない?