わずか1mmの線虫が、未来の食糧危機を救うかも⁉
「甲南の研究力」を支える若手研究者に迫る!

NEWS!『甲南人』の活躍 > カルチャー
2023.1.17
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さまざまなフィールドで活躍を見せる「甲南の研究力」。

甲南大学大学院の若手研究者たちも、その一端を担っています。

今回は、第11回 国際被嚢(ひのう)動物学会議でのポスター発表で最優秀賞を受賞した

自然科学研究科・生物学専攻の佐藤夕希さんをクローズアップ!

「線虫」の研究が将来的には地球温暖化や食糧問題の解決につながるかも!?

佐藤さんが所属する久原研究室の久原先生と太田先生にもお集まりいただき、

興味深いその研究内容や、研究の面白さについて伺いました。

 

 

 

 

 

 

研究について

 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
佐藤さん、今日はよろしくお願いします!

 

よろしくお願いします!
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
20227月に「第11回 国際被嚢動物学会議」でのポスター発表で最優秀賞を受賞されました。おめでとうございます! これは、どのような発表だったのでしょう。

 

会議の開催中、学生たちがポスターで研究成果を発表する機会があり、私もポスターを展示して世界中の研究者の方々にプレゼンテーションしました。テーマは『線虫C. elegansから植物まで共通する高温耐性の分子機構』です。研究者の方々に動物と植物が共通しているのは面白いね、と言っていただけました。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
それは、よかったですね! まずは研究について教えてください。 ちょっと内容が難しくて

 

 

体長1mmの小さな線虫で


動物が温度や環境に適応する仕組みを解明

 

 

では、まず研究室についてご紹介しますね。久原研究室では、「C.エレガンス」と呼ばれる体長1mmほどの小さな線虫を使って、動物がどうやって周りの環境を感じ、記憶したり適応したりするのかを解き明かそうとしています。中でもC.エレガンスの温度に対する応答に着目して、動物が温度を感じて記憶するメカニズムや、環境に適応するメカニズムについて研究しています。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
佐藤さんは、どんなことを研究しているのですか?

 

植物と動物の間で共通する「高温耐性」や「低温耐性」の 遺伝子の仕組みを研究しています。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

たとえば、15℃くらいの涼しい環境で成長した線虫は、突然2℃の場所に移しても生きられるのですが、25℃など暖かい環境で成長した線虫は死んでしまいます。このように、成長する温度によって耐性が変わることを「低温耐性現象」といいます。私が研究しているのはその逆の「高温耐性現象」です。2の環境で成長した線虫は32℃の高温下においても生きられますが、15℃で成長した線虫は耐えられず死んでしまうことが分かりました。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
線虫の温度への耐性を知ることが、どのように役立つのでしょう?

 

線虫は、私たち人間とほぼ同じ温度で生活しています。また、遺伝子の数や種類も人間と近い。人間は神経も細胞もたくさんありますが、線虫は小さいので神経が302個だったり、細胞もわずか約1000個しかない。シンプルなので研究がしやすく、人間に近いので、線虫で得られた研究結果を人にも応用できるのではないかと考えています。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

また、地球温暖化により世界の各地域で気温が変化し、その地域では育てられない動物や植物が出てくるようになります。線虫の研究が進んでいくことで、植物が温度の変化に柔軟に対応できたり、いろんな環境で家畜を飼育できるようになれば、食料問題の解決にもつながる可能性もあります。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
久原先生、線虫の研究に未来を感じますね!

 

線虫は、医療や薬学の分野で役立ってきた歴史があります。 過去15年間に、線虫の研究者が6人もノーベル賞を受賞しているほど、線虫の研究は世の中に役立ってきました。特に近年は、動物愛護法により、哺乳類や脊椎動物を実験に使うことが難しくなってきた中で、まずは線虫を使って地球温暖化に適応できる仕組みを調べたり、新しい医療に役立つ薬を試したり、一次スクリーニングとして活用する取り組みが活発になっています。実際、私の研究室でも製薬会社と共同で研究が進んでおり、成果も上がっています。
久原先生
久原先生

 

 

 

 

 

 

 

甲南大の生物学科に入学し、久原研究室に入った理由

 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
そもそも、佐藤さんは、 なぜ甲南大学の生物学科で勉強しようと思ったのですか?

 

 

 

 

私は香川県ののどかな町で育ち、いつも身近に自然がありました。動物や植物も好きで、もっと詳しく知りたいと思うようになり、生物学科にも興味を持つようになったんです。高校卒業後は地元を出たいと進学先を調べるうちに、甲南大学の生物学科が少人数で、いろいろな分野が学べると知り入学を決めました。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
そして、線虫と出会うわけですね。

 

12年の時に久原先生の授業があり、線虫を使って動物が温度に慣れる仕組みを研究していると聞いて興味がわいて…3年でいろいろな研究室で実習する機会があり、久原研究室でも実習させてもらったんです。線虫ってかわいいな、実験も自分に合っているなと感じ、久原研究室に入ろうと決めました。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
線虫って、かわいいんですね!

 

かわいいです!

4年の1年間、線虫の研究をして、のめりこんだというか、想像以上に面白くてもっと続けたいなと思うようになって。今しかできないなと、大学院に進学しました。

佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
佐藤さん、楽しそうですね♪ 線虫の研究の面白さとは、どういうところにありますか?

 

一番は、動物だけでなく植物も同じような遺伝子を持っている、ということです。それはつまり、生き物にとって重要ということじゃないですか。生命を維持するためにも、種を保存するためにも大事で、進化しても枝分かれしても受け継がれるものがある。それを追求することが面白いポイントだと思います。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

 

 

 

 

 

 

女性研究者としてのキャリアプランについて

 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
ちなみに、久原研究室は何人で研究されているのですか?

 

学生、先生、研究員をあわせて15名で、そのうち9名が女性です。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
女性の方が多いんですね!

 

甲南大学の生物学科は他の理系学科に比べると女性が多く、男女比が11くらいです。あまり気にしたことがなかったんですけど、日本全国の女性研究者の割合を調べてみたら女性は全体で1割くらいでしたので、久原研究室は女性が働きやすい環境なのかなと思います。子育てをしている方も多いですし。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
太田先生は子育てをしながら研究されていますが、 実感としてはどうでしょうか。

 

少しずつ変わってきている気がします。10年前は研究室を持っている先生はすべて男性でしたが今は2名が女性ですし、当時は女性の研究員も少なかったのが徐々に増えてきました。今の学生たちは、男女比など気にならないのではないでしょうか。女性も研究が続けられるとわかれば、学生たちも将来的な目標が立てやすいなど、いい面があると思います。
太田先生
太田先生

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
佐藤さんは、これからも研究を続けて行くのですか?

 

将来のことはわからないんですけど、研究はずっと続けたいと思っています。以前は結婚や出産でやめなきゃいけないのかなと思っていましたが、研究室で先生方の様子を見ていて女性も両立できるのかな、そうなりたいなと思うようになりました。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

 

 

 

 

 

佐藤さんについて

 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
最後に、先生方にお聞きします。 佐藤さんに、どんなことを期待されますか?

 

研究だけでなくアルバイトもしていて、いつも一生懸命です。一つのことを一生懸命にできる人というのは、何事にも一生懸命に取り組めるんですね。他大学との共同研究など、トライしたいという気持ちも強くて、人間的に素晴らしいとリスペクトしています。研究に関しては「好きなことをやってください」(笑)。
久原先生
久原先生

 

実験の中には、発表できない実験も多いんです。何度やっても結果が出なくて、それでも諦めず、納得いくまでやる。そういうところが佐藤さんの強みだと思います。とにかく実験が好きなんだろうな、と一緒にやっていて思います。本当のことを知りたいという興味を、これからも持ち続けてほしいです。
太田先生
太田先生

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
佐藤さん、先生から褒められっぱなしですね。

 

久原先生は、いつもやりたいことを後押ししてくださって、一番いい環境で研究させてもらっているなと感じています。太田先生は、どんなにひどい結果を見せても、そこからどういうことが読み取れるか一緒に考えてくださいます。お二人とも子育てで忙しいのに、私と議論する時間をつくってくださり尊敬しています。
佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
積極的に研究に取り組む佐藤さんですが、 そのモチベーションはどこからくるのでしょう??

 

 

 

 

 

今まで誰も知らなかったことを発見できることがすごく面白いですし、線虫で見つけたことが、線虫だけでなく人や植物などにもつながり、また新しいことが見つかるというのは、やりがいも達成感も大きいです! 

粘り強さはあると思います! 実験は大変なんですけど(笑)

佐藤夕希 さん
佐藤夕希 さん

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
それは心強いです!これからも応援していますね!

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

 

線虫の魅力にどっぷり、の佐藤さん。

持ち前の粘り強さで、

食料問題の解決にもつながる 研究成果に期待です!!

 

 

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