甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
26.2.24

「お遍路(へんろ)×デジタル体験!外国人遍路の可能性」~関西湾岸SDGsチャレンジ2025~

 いま、海外から四国遍路(へんろ)文化に熱い視線が向けられています。四国遍路とは、弘法大師空海ゆかりの四国八十八か所にある寺院の巡礼路のことをいいます。コロナ禍を経て、2022年以降外国人による特に歩き遍路が急増しています。このテーマに取り組んだ甲南大学の「地域プロジェクト」の学びの取り組みをご紹介します。

 

    

      四国遍路マップ。そのうち徳島市には、5か所の霊場(れいじょう)がある

             (画像:国土交通省四国運輸局ウェブサイト)

 

 四国の東に位置する徳島県徳島市の街のシンボルは、毎年8月に開催される「阿波おどり」です。県内外や海外から例年100万人を超える観光客が訪れます。さらに徳島市は、デジタル技術を活用した観光地域づくりをめざしています。

 そこで、「デジタル技術を生かしたインバウンド誘客を考える」をテーマに、甲南大生4名と徳島市立高校の高校生4名の計8名で、徳島市にてフィールドワーク(現地調査)を実施しました。インバウンドとは、外国人が訪れる旅行のことを指し、特に観光業界では訪日外国人旅行客のことです。

調査先は次の通りです。

1.イーストとくしま観光推進機構(観光NPO)

2.阿波おどり会館のインバウンド来館者(7組)

3.徳島市広域観光案内ステーション ランス・キタ氏(ハワイからの移住者)

4.株式会社モバイルファクトリー(ITを生かしたまちづくりを得意とする)

 

徳島市には観光施設の目玉があまりない?

イーストとくしま観光推進機構は、徳島県東部の15市町村のまちづくりを検討する行政と民間企業による観光NPOです。徳島市では新たな観光コンテンツを充実させるとともに、遍路宿不足の解消など受け入れ環境を充実させる課題をうかがいました。

次に、多くのインバウンドが訪れる「阿波おどり会館」にて、欧米やアジアからの外国人旅行者に徳島市の魅力や旅での困りごとをたずねました。徳島市を訪問する目的は、「日本の文化や伝統を知りたい」、「ゆっくりと過ごしたい」という意見が多く聞かれました。おもてなしなど「人の温かさ」に魅力を感じるとの意見も複数ありました。外国語対応に苦慮しましたが、文明の機器や身振り手振りも活用して、コミュニケーションをはかりました。

 

    

           阿波おどり会館にてインバウンドにインタビュー

                 (2025年8月21日撮影)

 

 続いて、自身が米国ハワイ州から徳島市に移住して、いまは観光案内所にて働くランス・キタ氏から、重要な視点をいただきました。なんと、「徳島市には目玉となる観光施設があまりない」というのです。観光案内所のスタッフの率直な意見に驚きましたが、鳴門の渦潮や大塚国際美術館の注目度が高く、徳島市にあまり立ち寄ってもらえないと感じているとのことでした。また、言葉の壁から宿泊施設の予約に苦労されている観光客のエピソードも知りました。

 最後に、デジタルスタンプラリーで経済効果21億円を達成したという株式会社モバイルファクトリーの皆さんに、限定ノベルティやキャラクターなどで希少性をもたせる効果や、アナログとデジタルを組み合わせる旅の思い出作りのヒントを伺いました。

 

    

  米国ハワイ州から徳島に移住したランス・キタさんに観光案内ステーションにてインタビュー

                 (2025年8月21日撮影)

 

外国人歩き遍路が10倍以上に急増

 あらためて四国遍路の課題や歩き遍路の現状や課題を洗い出し、その解決策を話し合いました。日本の遍路人口は、10数年前の4割にまで減少していると言われています。一方で、コロナ禍以降、外国人の特に歩き遍路の数が急増しています。徳島県吉野市にある11番札所付近の休憩施設「へんろの里」を利用した外国人の人数は、2022年が139人であるのに対し、2023年は1543人と10倍以上増加しました。来訪者の居住国はアメリカ、フランス、カナダ、デンマークなど欧米豪が上位を占めます(国土交通省四国運輸局調べ)。スペインのサンティアゴ巡礼路や熊野古道の巡礼体験型観光地の先行事例なども参考に、その成功のヒントを探りました。

 

SDGs達成をめざして、四国遍路×デジタル

学生と生徒が考えた解決策は、次の通りです。

 

企画①:「集めよう! 巡礼パズル ~徳島市から広がる88ピース」

企画②:「Immersion in Japan(イマーション・イン・ジャパン)~体験型観光サービスの提供~」

企画③:「Welcome to 遍路宿 ~住民との交流・低価格~」

 

 企画①「集めよう! 巡礼パズル ~徳島市から広がる88ピース」は、四国八十八所の札所(ふだしょ)に設置したQRコードで境内図や寺の歴史など情報提供をするとともに、各札所でパズルを1ピースずつ獲得できるようにします。希望者には、A2サイズの紙のパズルを進呈します。最初の実証エリアは、徳島市内にある5か所の札所を巡る「五か所参り」です。徳島県のゲーム会社と連携してゲームを開発します。四国遍路世界遺産登録推進協議会と連携して全体調整のサポートを得られるように企画されたプランです。

 企画②「Immersion in Japan(イマーション・イン・ジャパン)~体験型観光サービスの提供~」は、観光ガイドボランティア団体がルーツの観光NPOに、お寺での体験型観光サービスを提供するものです。インバウンドの滞在を促進する観光ツアーの不足に着目して、お経読み体験や座禅体験などを提供します。

 企画③「Welcome to 遍路宿 ~住民との交流・低価格~」は、廃校や空き家を生かした遍路宿を提供し、地域住民との交流企画を提供します。特に、遍路宿が不足している19番から21番の札所を訪れるインバウンドをターゲットに、近隣大学と連携して日本の伝統的な遊びや文化体験を提供します。

 これらを通じて、SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」としてデジタル技術を活用した観光コンテンツの充実、11「住み続けられるまちづくりを」として新たな観光資源による持続可能なまちづくり、17「パートナーシップで目標を達成しよう」として国、都道府県、市町村、寺院、NPO、住民、旅行者などと協力して相乗効果を発揮することをめざします。

 

調査や話し合いを通じて大きく成長する学生や生徒

 最初は、単に思いついたアイデアを提案すればよいと安易に考えていた学生や生徒は、本当に実現するための企画提案の難しさに何度も直面しました。それでも、徳島市だけでなく、四国全体で四国遍路という観光資源の価値を高めるという視点や、既存のQRコードサービスを充実させるなど、実現可能なプランを提案するという姿勢等を学び、大きな成長を遂げて堂々とプレゼンテーションに臨むことができました。学生の学びを支えていただきました関係者の皆様に、御礼申し上げます。

 

参加者:

【甲南大学】

 植月心音、 グエンドチャントラン(マネジメント創造学部 2年生)

  1年生 石橋ひなた(グローバル教養学環)

            1年生 内田光優(経営学部)

【徳島市立高等学校2年生】 

 浦綾希、横関七海、久次米柚奈、大濵結子

 

指導教員 

 岡村こず恵(全学共通教育センター 特任准教授)

 

    

          阿波おどり会館での調査を終えて(2025年8月21日撮影)