甲南大学ではSDGs実践プロジェクトの一環として放置竹林問題の解決に取り組んでいます。
放置竹林問題とは、放置されて竹林が引き起こす社会問題・環境問題のことです。伐採する人手が不足していることや、竹の利活用先が昔と比べて減っているということが原因として挙げられます。そこで私たちは、①竹の定期的な伐採、②竹の利活用先を増やす、③問題の認知拡大を行うという三つを軸に、これまで様々な活動を行ってきました。
今回は、約3年間商品開発に取り組んできた、竹ペレット製品が遂に完成しましたので報告します。完成までの道のりを見ていただければ嬉しいです。
*地域プロジェクト「SDGs実践プロジェクト~放置竹林問題を考える~」
(担当:久保はるか)
製品開発のきっかけ
2022年4月に株式会社YTE様より、竹を使った商品開発に向けてご協力いただけるという話があり、共同での取り組みが始まりました。2021年に甲南大学にて展示を行った竹のクリスマスツリーを見て、私たちBambooにThank you Projectの取り組みを知ったのがきっかけだったそうです。
製品のアイディア出し
そこから、どのような商品にするのか、YTE様とともにミーティングを重ねました。学生らしい筆箱や、どこでも使用できるタンブラー、外国人に人気のうちわなど、初めは様々な視点からアイディアを出し合い、どのようなストーリーでどこに売り出していくかも検討していきました。
その中で、竹を日常的に触れてもらうことで、身近に感じてもらい、放置竹林問題の解決に取り組むきっかけ作りとして「竹の日用品」という観点で商品開発に向けて取り組むことが決定しました。
そこで、竹ペレット製品の販売に取り組むことが2023年度に決定いたしました。竹ペレットとは、伐採した竹を粉砕し、竹を液体状に溶かしたものを型に入れ、固めたものになります。焚火やバーベキューなどの燃料としても使用することができます。
(竹ペレットのイメージ写真)
竹ペレット製品開発に向けての課題
ただ、竹ペレット製品を製品化するにも、懸念点がいくつかありました。竹100%では強度が劣り難しいことや、竹の配合率を高めすぎると、竹特有の独特なにおいがすること、石油由来のプラスチック等でできた既製品よりもコストが高くなるなど、学生たちで伐採した竹を使うにも、多くの課題がありました。
そのような懸念点がある製品も、どうすれば購入したいと思っていただけるか、2023年8月に行われた甲南大学のオープンキャンパスにて来場された高校生や保護者の方を対象にアンケート調査を行いました。
「環境問題やSDGsを意識して行動したことがあるか」「SDGsに配慮した商品を購入したことがあるか、または購入してみたいか」という質問を行いました。その結果、環境問題やSDGsを意識しており、実際にSDGsに配慮してある商品を購入したことがある人も多数いることが分かりました。
(実際に行ったシールアンケート)
この結果から、そうした製品に需要の高さを実感するとともに、私たちが取り組む放置竹林問題の解決に向けた竹ペレット製品を、形にしたいという思いがさらに強まりました。そこから、アンケートを参考に、商品名やパッケージのデザイン、紹介文などについて検討を進めました。
製品に使う竹の伐採、竹のペレット化
そして2023年11月には、神付・産土の森の会の皆様にご協力いただき、神戸市の竹をペレット製品に使用するべく、検査を行う竹の調達を行いました。私たちも竹を伐採し、チッパー機を用いて竹を粉砕する作業を行いました。
(作業する竹林) (竹を粉砕するチッパー機) (チップ状にした竹)
しかし、検査にかけた竹は、ペレット製品として使用するには難しいという結果となってしまいました。この時点で竹を使った製品開発に向けての取り組みがスタートしてから約2年が経過していたこともあり、本当に学生たちで伐採した竹を用いて製品を完成させることができるのかという不安も募りました。
それでも、卒業された先輩方とともにこれまで取り組んできたことや、放置竹林問題の解決に少しでも貢献できるきっかけを、竹ペレット製品を通して提供したいという思いから、もう一度製品用の竹を伐採することが決まりました。
2024年4月に、ペレット製品に使う竹を神戸市北区の里山で伐採を行いました。伐採した竹を加工しやすいように、適切な長さにカットし、竹を割った状態で段ボールに詰める作業を行いました。総量約80㎏の竹を1日で伐採しました。
(適切な長さにカット) (カットした竹) (梱包作業)
伐採した竹をペレット製品として使用する検査を行い、ついに検査にクリアし、製品が形となりました。「こうべ竹太郎」は、私たちが刈った竹のペレット10~15%、その他バイオマスプラ37~42%と、自然由来の素材52%の製品です。
本販売に向けてのプレ販売
2025年3月9日(サンキューの日)から販売がスタートすることが決まり、本販売に向けて2024年10月19日のこうべ環境博覧会、12月1日のキッズフェスティバル、12月7日の光フェスティバル、12月8日のSDGsマルシェという4つのイベントでプレ販売を行い、購入された方に使用後アンケートを取りました。
(作成したポップ) (販売の様子) (豆移しゲームをしている様子)
購入してくださった方の声として、「竹が使われていてエコな商品」「口触りが良く、電子レンジや食洗器で使えるのが良い」「落としても割れないため、子供も安心して使える」というような感想をいただきました。
本販売スタート
そしてついに、約3年間かけて取り組んだ竹ペレット製品の販売が、「こうべ竹太郎」という名前でスタートしました。一般販売の公開日は、私たちの主催イベントと合わせて、2025年3月9日と決定しました。
ロゴや説明リーフは、学生の意見を取り入れていただきながら、プロのデザイナーの方に作成していただきました。竹ペレット製品と同じ淡い色合いで、とても素敵なデザインに仕上がりました。
(「こうべ竹太郎」のロゴ) (「サンキューマルシェ」での本販売)
当日、約3年間の思いが詰まった製品を、多くの方に手に取ってもらうことができ、「とても良い取り組み」や「ロゴが素敵」という声もいただけました。
お皿を購入した方の中には、イベントにて特別販売を行っていた神戸産若竹メンマ入りのカレーを入れて、使ってくださった方もいらっしゃいました。
(神戸産若竹メンマとカレーが入った「こうべ竹太郎」)
製品への思い
この製品は、まだまだ認知度の低い放置竹林問題という環境問題について、まずは知ってもらい、解決に向けてアクションを起こすきっかけを作れるようにという学生の思いが詰まっています。
放置竹林問題の解決に向けての行動として、竹の伐採活動がまず挙げられると思います。そこで私たち学生は、実際に現地で伐採活動を行っています。しかし、私たち学生自身も竹林は所有しておらず、竹林の所有者に許可を得て活動をしています。
このように、「問題の解決に向けて伐採をしたい!」という思いがあっても、土地の所有者に許可を得なければ、伐採をすることができないため、伐採活動がなかなか進められないというのが問題の背景の1つとしてあります。
そのため、私たちの活動を知ってくださった方々によって、活動範囲の拡大と、伐採活動の輪が徐々に広がっていけばいいなと思っています。
また、「こうべ竹太郎」を手に取ってもらうことが、大量消費が難しい竹の消費活動にも繋がります。
現代では、簡単に低コストで大量に作ることができるプラスチック製品が普及していることにより、手間やコストがかかる竹製品はなかなか流通していません。「こうべ竹太郎」のように、竹を大量に利用できると、伐採した後の利活用が進み、結果的に竹林整備が進んでいくのではないかと考えています。
伐採活動など、放置竹林問題の解決に向けてのアクションはハードルが高いものも多いと思いますので、「問題の解決に向けて取り組んでいる製品を購入してみる」というのも1つのアクションになると私たちは考えています。
認知度の低い問題だからこそ、少しでも気軽に行動できるきっかけを皆さんに作ることが出来ればと思っています。
そしてそのきっかけが、「こうべ竹太郎」製品になれば嬉しいです。
今後の販売に向けて
継続して活動に取り組んできたからこそ、新たなつながりが生まれ、実際に商品として完成することができました。
こうべ竹太郎という製品の開発に関わって下さった株式会社YTE様をはじめとする関係者の皆様、改めてありがとうございます。
現在、この製品は、私たちが出店するイベントにて販売を行っております。Instagramにて参加イベントについて発信してまいりますので、ぜひフォローをお願いします!
また他にも、甲南学園のグッズとしても使用していただいています。
多くの方にまずは手に取っていただけるよう、今後はイベントでの販売だけではなく、店舗での販売に向け取り組んでいきたいと思います。
BambooにThank you Projectは、インスタグラムにて随時、活動の報告をしています。
もし、1度竹林整備をしてみたい!という方がいれば気軽にご連絡ください!
(BambooにThank you Project Instagram:@bamboo_thankyou
https://www.instagram.com/bamboo_thankyou/?igsh=dmNvYXMyMW9xZTV4&utm_source=qr)
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