甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.9.21

えん罪救済プロジェクト:フロンティアサイエンス学部・研究科と合同のDNA鑑定実習に参加しました!(2-1)

 えん罪救済プロジェクトのメンバーが、本学のフロンティアサイエンス(FIRST)学部・研究科が主宰した学内交流企画で、DNA鑑定実習に参加しました。JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)第1回文理融合ワークショップ「生命化学×えん罪」 実験講座として開催されたものです。

 参加したメンバー2名のレポートを掲載いたします。

 [法学部教授・笹倉香奈]

 

 「犯行現場で発見された遺留物のDNA型と、被疑者のDNA型が一致しました」

 このような文章を目にしたとき、皆さんならどのように考えるでしょうか。「ああ、この被疑者が犯人なんだろうな…DNA型も一致してるみたいだし」と考えるのではないでしょうか。かくいう私も、これまでは同じように考えていました。なぜなら、同じDNA型を持つ人は数百京人に一人といわれ、自分とDNA型が一致する他人はほぼ存在しえないとされているからです。

 しかし、鑑定結果が「一致」したからといって、一概に被疑者が真犯人であるとは言い切れないということを、この実習を通して学びました。鑑定は人の手で行われるものだから、鑑定過程や資料自体に不備があれば、結果が変わりうるものだからです。

 DNA型鑑定を行うためには、さまざまな手順を踏まなければなりません。非常に繊細な作業で、それを人が行う以上、絶対にミスが起こらないということはありえません。DNAはとても外部からの汚染を受けやすいものであり、実験を行うときには外部から別のDNAが入らないように、器具や資料に触れたりしないよう細心の注意を払う必要もあります。混合資料の場合にはさらに問題があるでしょう。

 しかし、現在の刑事手続におけるDNA型鑑定は、以上を十分に考慮した制度であるとは言えません。犯行現場から採取されたDNAは、現場にあるという理由から真犯人のものである蓋然性が高いだけで、本当に真犯人のものであるかはわかりません。また、鑑定段階でミスが無かったかどうかもわかりません。加えて、現場から採取されたDNAは、実験で用いるような資料以上に、外部汚染の影響を受けているはずですし、その保存には細心の注意を払うべきことは当然のはずです。しかし現行法上、再鑑定の機会の保障も、採取されたDNA資料の保管方法も法定されていないのです。

 このような現状を知り、私はDNA型鑑定という手法に対する過剰な信頼が、えん罪を生む一因になりうるのではないかと感じました。上述したように、DNA型の一致する確率はごくわずかです。しかし、一致を判定するのも人であり、DNA方を判別できる状態にするための過程も人が行うものです。鑑定段階やその対象となる資料に不備があれば、鑑定結果が正しいものかはわかりません。不備は無いことを前提とする現在の刑事手続におけるDNA型鑑定は、本当に公正なものであるといえるのか、疑問を抱きました。

[法学部4回生・堀田零生]

 

       

             川上順司先生の解説に聞き入ります。

 

       

      FIRSTの院生さんのお手本を食い入るように見つめるメンバーたち

 

       

             電気泳動の様子を見守ります!