甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.10.18

えん罪救済プロジェクト:名古屋地検を訪問しました!

 えん罪救済プロジェクトの名古屋研修合宿では、様々な刑事司法の現場に触れることができました。今回は、メンバーによる検察庁への訪問のレポートを掲載します!

 

        

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 研修の一環として名古屋地方検察庁に行きました。

 はじめに検察庁の概要や刑事事件が起こったときの流れなどを丁寧に説明していただいた後、警棒や手錠といった戒具を実際に触らせていただきました。その後、実際に被疑者や参考人の取調べなどに使われている部屋を見せていただき、最後には質問に丁寧にお答えいただきました。

 普段なかなか見ることのできないものを見たり触ったりさせていただき、さらには検察官や検察事務官のお話を伺い、とても貴重な経験となりました。

 検察庁には最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁、区検察庁の4種類があり、いずれも裁判所(最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所)に対応した形で置かれています。検察庁では、警察から送致された刑事事件について補充的に捜査を行い、起訴・不起訴の処分を決めたり、確定した刑の執行を指揮したりしています。令和4年の名古屋地方検察庁の管内における被疑事件の処理状況については、起訴(公判請求・略式命令請求)が約2割、不起訴(嫌疑不十分・起訴猶予)が約6割と、不起訴となっている事件の方が多いようでした。その中でも起訴猶予(犯罪の嫌疑はあるが、起訴しない処分)が全体の約5割、不起訴処分の約9割ということに驚きました。

 戒具の見学では警棒や手錠、防刃ベストなどを実際に触らせてもらいました。手錠は少し黒っぽかったのですが、それは見えづらくすることで被疑者の人権に配慮したものとしたそうです。

 実際に取調べなどに使われている部屋には取調べの録音録画のためのカメラが設置されていました。ほかにもいわゆるZoomのようなビデオ通話ができる機器もあり、外国人の取調べを行う際に通訳の方と繋いで取調べを行ったり、コロナに罹患した人の取調べを行ったりする際に活用されるそうです。

 学生からの質問では、取調べの録音録画が義務付けられていない被疑事件についての質問に「逮捕・勾留されている被疑者の取り調べはほぼ100%録音録画する。身柄を拘束していない在宅の被疑者に関しては検察官の裁量による」という説明がありました。私は義務付けられていない事件については録音録画を行っていないと思っていましたが、実際は少し違うと知りました。

 今後はさらに録音録画される事件が増え、適正な捜査・取調べが行われて虚偽の自白や冤罪が少しでもなくなってほしいと感じました。

 検察庁に行って見て聞いて触って感じた貴重な経験をこれからの活動に活かしたいと思いました。

[法学部1回生・福田泰己]

 

 名古屋検察庁を参観しました。

 まずは刑事手続や検察庁に関する全般の解説を聞いた後、検察事務官が被告人を収監する際などに使われる拘束器具の手錠や腰縄、検察官が捜査の際に着用する防刃チョッキや防刃手袋などの道具を、実際に手に取って見せていただきました。これらの戒具の中に、被疑者の人権を配慮するために使用される、手錠を隠すための布がありました。このような戒具があることを初めて知りました。まだ判決が確定していない被告人に対する配慮として良いものだと思いましたが、同時に、手錠を布で隠すだけで、本当に人権に配慮するための役割を果たせているのかとも思いました。

また、検察官が被害者や被疑者に対する取調べを行う部屋を実際に見せていただきました。とくに希少言語の外国人の被害者や被疑者を取り調べる際に使われる、通訳人とテレビ電話システムで話せる装置がありました。また、取調べの様子を録音録画するためのカメラもありました。

 見学が終わった後は、現役の検察官の方との質疑応答を行いました。私の印象に残っているのは、勾留請求に関する質問です。日本では、勾留請求や勾留延長請求により、最長で20日の勾留期間があります。勾留延長請求を行うのはどういう場合かという質問をした際、勾留請求は原則10日間であるため、10日間で起訴・不起訴の決定ができるように頑張っているが、捜査に長時間かかる場合は勾留延長請求を行うとおっしゃっていました。捜査に時間がかかるとはいえ、まだ判決が確定していない者に長期間の身体拘束を行うのは、人権を侵害する行為であると感じています。

 IPJボランティアの活動で弁護士の方のお話を伺う機会は沢山ありますが、検察官の方のお話を伺うのは初めてでした。検察官の仕事内容や、やりがいを感じる業務などを知ることができ、非常に貴重な機会であったと思います。

[法学部2回生・藤井春奈]

 

 

 検察庁というと、真相解明に重きを置きすぎて強引な捜査をし、えん罪を産んでしまっているというイメージもありますが、訪問では、想像しているよりも検察庁は適正な手続きを意識して捜査等をしているとのお話をされていました。

 検察官と検察事務官として働いていらっしゃる方々に質問をさせていただきました。その中で「利益誘導など任意性を問われて、後で真実か疑われる取調べをしないように注意をしている」という言葉があり、無理な捜査をしないように心掛けていることが分かり、印象に残りました。また、名古屋検察庁では身体を拘束された被疑者等の取調べは、ほぼ100%録音録画されているとのお話でした。

 お話をされた検察官は、録音録画した方が検察官にとっても取調べが適正に行われていることを示すことができ、また透明性が出てよいとおっしゃっていました。 録音録画によって、噓の自白を強要するような取調べが行われにくくなりますし、供述調書を読むだけでは分からない言葉のニュアンスも後から検証することができます。取調べを受ける被疑者等にとっても良い取り組みだと思います。しかし、すべての取調べが録音録画されているわけではないですし、取調べへの弁護人の立会いも法律に記載されておらず、行われていません。

 さらに取調べの可視化が進むとえん罪が減ると思いますので、それらを法律で義務化したり認めたりして欲しいと思いました。

[法学部3回生・R.H.]