甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.7.4

えん罪救済プロジェクト:渡邊洋次郎さんの講演会を開催しました!

    

 

 えん罪救済プロジェクトでは、講演会「非行・自傷行為・アディクション経験者と考える:自己責任で解決するのか」を6月27日に開催しました。犯罪や非行の背景にはどのような社会的な課題があるのか、行為者に対する刑罰だけで問題を解決してしまってよいのかなどを、参加者と一緒に考えました。えん罪事件だけではなく、刑事司法や犯罪原因について考える機会になりました。

 薬物やアルコールの依存症に対しては、「ダメ。ゼッタイ。」の掛け声のもとで、刑罰を科すことによる問題解決が行われています。しかし、果たしてそれで根本的な対策ができるのでしょうか。依存症の背景にどのような問題があるのかを考える必要はないのでしょうか。

 講師の渡邊洋次郎さんは、10代の頃から薬物中毒になり、警察にも幾度か逮捕されました。中学卒業後には鑑別所に入所し、4度の鑑別所入所を経て、16歳の終わりから18歳になるまでの1年間を中等長期少年院で過ごします。20歳から精神科病院への入退院が始まり、30歳までの10年間で計48回の精神科病院入院を繰り返しました。30歳から3年間、刑務所への服役を経て、出所後は酒や薬を止めて14年2か月が経過しています。現在、渡邉さんは自助グループのミーティングへ行ったり、就労支援を受けたりしながら、「リカバリハウスいちご」に5年半前から正社員として勤務して他の薬物依存者などの支援をしています。5年前の3月介護福祉士を受験して無事に合格、通信制の高校も一昨年に卒業されました!

 講演の中で渡邊さんは、なぜ薬物やアルコール中毒になってしまったのか、どのように克服し、いまどのような支援活動をしているかなど、ご自身の体験を語りながら、非行や犯罪の背景に何があるのかということをお話しくださいました。

 参加者からはたくさんの質問が投げかけられました。一つひとつの質問に丁寧に、真摯に答えてくださった渡邊さん、本当にありがとうございました!

 

[講演会への参加者の声を紹介します]

*一部、表現を修正しています。

■薬物はダメ!ということしか学校では教えてくれませんが、実際に経験された方の話を聞けて色々な背景があるのだなと、考えさせられました。

 

■したことを責めたりするのではなく、寄り添い共に生きれる社会を作る意識が大切なんだなと感じました。

 

■依存症の背景には環境の面が大きく影響してるのではと思いました。自分では変えることのできないことが影響してしまうとどうしようもないので、悲しいなとおもいました。どうにか負の連鎖を断ち切る方法があればいいのになと思います。

 

■依存症や自傷行為をしてしまう人を悪いとか、かわいそうという目で見る人が多いけど、そういった単純な見方をするのではなくもっとその人に寄り添って、何故そこに至ったのか聞く、それを社会でおこなっていくべきだと感じました。

 

■本日は貴重なお話しをしてくださりありがとうございました!日本の法律は抑えつけているものと漠然と感じていて、それを言葉にすることが出来ませんでしたが、渡邉さんの口からその言葉を聞いて自分が考えていたことを知ることが出来ました。一見助け舟を出しているように見えていても、排除では根本的な解決になってないというお話にはっとさせられました

 

■私は今まで薬物やお酒の中毒になる人は自己管理能力が低いせいだと思っていました。しかし、今回のお話を聞いて必ずしもそうではなく、なんらかの経験からそういった状況に陥らざるを得なかった人もいることを学びました。私がそのような生き方をしてこなかったのも環境など様々な要因に恵まれており、たまたまだったように感じました。また、似ているというにはおこがましいですが、私も自分のことを認められない部分があり、自傷行為をなぜしてしまうのかについての説明は少し共感できる部分がありました。私の周りには刑務所や鑑別所などに行った経験のある人は少ないですが、今回の講演会を通じて法律を学ぶ人間がその実情を知るのはとても必要だと感じました。

 

■今回のようなお話を聞く機会がなかなかないので、とても貴重な経験だと感じました。これまでは10割とは思ってなかったですが、7〜8割は自己責任だと思っていましたが、今回の講演でむしろ自己責任よりも社会の責任の方が大きいのではないかと感じました。ボタンのかけ違えを言われてましたので、それを例とするならばかけ違えた時は気づけないと思ってて、後でここでかけ違えてたって気づくものだと思ってて、さらに1度かけ違えると次もかけ違えて、その次もかけ違えて…みたいになると思うから、1度かけ違えると、違う方違う方行ってしまうのかなと感じました。だから、かけ違えた時に違ってることを指摘できて、かけ違えたところからやり直せる社会になればなと思いました。

 

[法学部教授・笹倉香奈]