甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
26.3.24

東京海上日動火災保険や神戸市と連携して「ぼうさい授業」を実施しました!

               
         東京海上日動火災保険株式会社連携して「ぼうさい授業」実施
                             (2026年3月10日撮影)

 

 甲南大学では、2018年から東京海上日動火災保険株式会社および神戸市と連携して、「ぼうさい授業」を実施しています。今年度は、2026年3月10日に、甲南大学生6名が、地元の魚崎中学校2年生の生徒約170名を対象に、防災について学ぶ授業を提供しました。

 授業はたった1日ですが、この授業を提供するために、甲南大学生は約半年間にわたって自分たちが防災について学び、授業の準備をします。まず、「人と防災未来センター」を訪問し、阪神・淡路大震災の被害状況や教訓、復興まちづくりの課題を学びました。甲南大学生は、阪神・淡路大震災を直接経験していません。被害の状況をあらためて学んだ大学生は、「自分たちが中学生に『ぼうさい授業』を実施する責任を感じた」と話していました。

 

 
               

         「人と防災未来センター」にて、阪神・淡路大震災の被害や復興まちづくりを学ぶ

                                    (2025年10月4日撮影)

 

 次に、神戸市危機管理局防災企画課、および港湾局の職員のみなさんをお招きして、神戸市の自然災害や防災気象情報、高潮・津波対策等について解説を受けました。警報や注意報などの気象情報等を確認できる神戸市のリアルタイム防災情報のウェブサイトを閲覧したり、緊急気象情報や避難情報をアプリやメール等で得られる「ひょうご防災ネット」にアクセスして実際にどのような情報を得られるのか等を確認しました。大学生は、「地震と洪水災害で避難方法が違うことをあらためて認識した」ことなどを話し合いました。

 

               

       神戸市職員から自然災害や対策についての解説を受ける(2025年10月14日撮影)

 

 続いて、甲南学園管財部から、甲南大学での防災対策についての解説を受けました。甲南大学防災センターでは、阪神・淡路大震災の際に校舎が甚大な被害を受け、災害対策本部を設置することに苦慮した経験から、耐震構造を強化した同センターを設置し、緊急時にはすぐに学園幹部が参集できるような体制を設けています。また、甲南大学は神戸市より避難所指定を受けており、保管している緊急備蓄品倉庫なども見学、非常時の大学生や教職員、避難者を受け入れる体制を整えている様子も見学しました。参加した学生は、「この授業で災害について理解を深め、恐怖を感じていたが、大学の対策を学べたことで安心できた」と感想を述べています。

 

         

        甲南学園管財部より備蓄倉庫の説明を受ける(2025年10月21日撮影)

 

 災害や防災について学びを深めて、いよいよ授業計画を作成します。大学生は、地震や水害など自然災害の種類や規模等によって対策が異なること、また、避難行動だけでなく、避難後の生活の質を高めることが災害関連死のリスクを下げるために重要であることに着目しました。よってこの二つのテーマを取り上げて、中学生にいかにわかりやすく、楽しんで学んでもらえるか、方法について試行錯誤しました。また授業計画を作成するだけでなく、自分たちが考えた対策が有効なのかどうか、魚崎地区を実際に歩いて確認するフィールドワークを実施しました。

 

           

       魚崎地区を歩いて、地域の防災資源を確認する(2025年12月24日撮影)

 

 授業計画案がまとまったら、東京海上日動火災保険や神戸市職員の皆さん、および魚崎中学校の教員の皆さんにプレゼンテーションをします。説明方法や言葉づかい、生徒への配慮など、様々な視点の指摘を受けて、授業資料を改善します。第三者からの客観的な指摘は、多くの学びがありました。

 

         

     東京海上日動火災保険での最終プレゼンテーション(2026年2月9日撮影)

 

 そして、いよいよ「ぼうさい授業」当日をむかえました。前日のリハーサルでは、実際に教材を使って微修正をしました。あとは、練習どおり、実施するだけです。

 

         

      「ぼうさい授業」にて中学生のみなさんにご挨拶(2026年3月10日撮影)

 

 まず、東京海上日動火災保険の社員より、地震や津波についての基本的な知識の解説を受けます。その後、甲南大学生が体験型のワークショップ形式での学びを提供します。前半のワークは、クイズ形式で水害や地震について考えた後、洪水災害と地震災害で想定された状況をふまえた避難ルートを考えるという内容です。色紙で意思表示するなど、中学生が授業に参加しやすいように工夫しました。続いて、ハザードマップの読み方を解説し、洪水災害と地震災害でそれぞれ避難ルートを中学生にグループで考えてもらいました。

 

         

           色紙をつかってクイズに回答する(2026年3月10日撮影)

 

         

    避難ルートの考え方について中学生にアドバイスする(2026年3月10日撮影)

 

 後半のワークは、避難行動の後、避難所での困りことについて、グループで三択問題とディスカッション問題を話し合ってもらうという内容です。避難所では、衣食住という人間の生活で基本的なテーマでさまざまな問題が発生します。避難者や困りごとの多様さを学び、どのような状況でも、互いに配慮し合うために、どのような工夫ができるかを考えてもらうことがねらいです。中学生は、グループでリーダー、保健係、食料・物資係など6つの役割を決めて、それぞれの困りごとを解決に導きます。

 

         

             大学生が授業資料を説明する(2026年3月10日撮影)

 

 たとえば、ディスカッション問題では「子どもたちは日中することがなくて退屈しており、避難所運営本部によって子どもたちのためのスペースが開設されました。あなたができることとして、どのようなサポートが考えられますか?」として、できるだけたくさんのアイデアをグループで出し合います。中学生からは「子どもの遊び相手をする」などのアイデアが出されました。

 

             

     ワークが活発になるようファシリテートする甲南大生(2026年3月10日撮影)

 

 参加した大学生は、今回あらためて災害や防災について学び、自身の災害への向き合い方を変化させていることがうかがえます。

 「心がけたことは、伝える内容に責任を持つことです。授業の準備をする中で災害の種類に

   よって避難の方法や避難場所が違うため、誤った知識一つで実際の震災時に自分の命を守

   る行動が取れず、亡くなる可能性があることを痛感しました」

 「最近はホテルに泊まる際に以前は見なかった避難図にも目を通すようになりました」

 また、プロジェクトを通じて自身を変えようと臨んだ学生もいる。

 「今までの私は意見を出すことが怖く、もし自分の意見を出して否定されてしまったらどう

   しようと考えてしまうことが多々ありました。しかしこのぼうさい授業の参加を通して意

   見を出さないことは授業に参加していないことと同じであると気づきました。また意見を

   出す事で議論が深まることもあり、発言することの重要性について実感しました」

 プロジェクト型学習は、講義型学習に比べて、より実践的な学びであることが特徴の一つです。学んだことを地域のなかで実践して検証する。そこから新たな学びを得て、学生はさらなる成長を遂げます。

文・岡村こず恵(甲南大学全学共通教育センター特任准教授)