甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.9.21

えん罪救済プロジェクト:浪速少年院に参観にいきました!

 えん罪救済プロジェクトのメンバーなどで、浪速少年院の参観に行きました。

 少年院では少年の健全育成や社会復帰のための教育的な活動が行われています。当日は、施設内の寮のほか、クリーニングや電気工事などの訓練所、IT訓練室、展示室などをじっくり見せていただき、少年院全般のお話、最近の少年法改正や浪速少年院の現状について講義をしていただきました。質疑の時間には学生から多くの質問が出され、法務教官のお二人の先生方に様々なことを詳細にご教示いただきました。

 少年法について考える重要な機会になりました。参加者のレポートを是非お読みください。

[法学部教授 笹倉香奈]

 

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 えん罪救済ボランティアなどの1回生から3回生までの延べ22人で、浪速少年院に参観に行かせていただきました。全員にとって初めての経験となりました。

 

 少年院に到着すると、職員の方が迎え入れてくださいました。私は少年院で働いている方というと、厳しく怖い人なのかなと想像していたのですが、とてもやさしい方で少し緊張が解けました。

 

 まず、職員の方の案内で施設見学に行きました。少年たちが生活しているスペース(戒護区域)は厳重に施錠されており、私たちもスマートフォンやタバコなどは持ち込まないよう説明を受けました。職員も同様のルールらしく、今から戒護区域の中に入るのだと、身が引き締まる思いでした。

 

 中では職業訓練の施設や寮などを見学させていただきました。刑務所とは違い、設備からも少年院が社会復帰を目的とする施設であることが理解できました。寮は実際に部屋の中に入らせていただくことが出来たのですが、個人部屋とリビングのような部屋の間にはカギがなく、半開放型という形でした。自分のイメージしていた閉鎖的な空間とは違い、大変驚きました。

 

 戒護区域内には実際に少年たちが生活しており、その姿を見かけることもありました。体育祭のために、体育館で大縄跳びの練習をしていました。私は少年院が社会復帰の施設といえども、閉鎖的なところで反省させられたりしているものだと思っていたので、楽しそうな声が聞こえたときは驚きました。この施設は17歳から19歳という私と同年代や同い年の人たちが多いということをそのあと学びました。少年たちがどんな人生を歩んできたのかわかりませんが、同い年でも私のように大学生になる人もいれば、少年院でこのように社会復帰に向け頑張っている人もいるのかと思いました。同じような環境の人に囲まれて生活している日々の中ではなかなか気づきませんが、社会にはいろんな人がいて、日ごろ自分が見ている社会がほんの一部だということを感じさせられました。

 

 その後、最初の会議室に戻り職員の方から少年院や少年法について近年の少年法改正についても含め、詳しく説明を受けました。少年法については社会の中での様々な意見がある法だと思います。例えば、改正で新しく追加された「特定少年」と言われる18歳・19歳の少年は、起訴されたら実名報道される可能性もあることを知りました。少年たちの大麻の使用率が増加していることや、少年院の中で通信制の高校に入学できることなど、知らない事実がたくさんありました。

 

 その後の質疑応答の時間には、我々のたくさんの質問に一つ一つ丁寧に答えてくださいました。やはり初めて見た少年院ということでみんな聞きたかったことがそれぞれあったのですが、少年院の事はもちろん、そこで働く職員の方の仕事まで教えていただくことが出来、とても有意義な時間になりました。

 

 そのなかで、現場の方だからこそいえることだと思ったのが、「18歳・19歳はまだまだ子ども」とおしゃっていたことです。「少年法は不要だという考えもありますがそれに対してどう考えられますか?」という質問の中であった言葉です。子どもに対して少年院のような社会復帰施設で更生を計っていくのが大切だと述べられていました。私も19歳ですが、ニュースなどで未成年の話などを見かけると、世間の18歳・19歳と実際の18歳・19歳ではギャップがあるのではないかと感じることがあったので、日ごろ少年たちを間近で見ている人も同じことを感じるのかと興味深く思いました。

 

 今回、実際に少年院を見学させていただき実際に自分の目で見ることの大切さを感じました。頭では知っている知識でも、訪れることでわかる雰囲気や今まで考えたことのなかったことを考えるなど、多くを学ぶことが出来ました。このような機会をくださった浪速少年院の皆様、ありがとうございました。

 

【法学部1回生 長尾眞滉】

 

   

 

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 大阪府茨木市にある浪速少年院を参観しました。

 少年院は、家庭裁判所の少年審判による保護処分の対象となった少年を収容して矯正教育を施し、社会復帰させることを目的とする法務省所轄の施設です。少年たちは入院期間中、指導教官から教育・指導を受けます。

 院内では保護者や雇用主、保護観察官との面会を目的とした面会室や、高卒認定試験への勉強等に用いられる教室などの見学を行いました。今年度から新たに設置されたICT技術科では、プログラミングやCS、MOSといった資格試験対策も可能と教えていただきました。

 院内参観後に行われた職員の方の説明では、職業体験や就学支援などの社会復帰支援や、外部講師を招いての講演会などについてお話し頂きました。これらのお話を通して地域や人とのつながりの重要性を再認識しました。

 また、少年たちが少年院に収容される理由などについてもお話し頂きました。

 皆さんはどのような理由が最も多く挙げられると思いますか?浪速少年院に収容される少年たちの多くが、窃盗や大麻所持、傷害などの事件によるもので、近年では特殊詐欺の受け子として逮捕された事件もあるそうです。ひとり親家庭が多いこと、金銭面等の苦労や負担からの精神的な被害感情が生まれてしまうといった要因についてもお話しいただきました。近年では、少年たちの保護者たちへのサポートも行われているそうです。

 これらのお話を踏まえて、少年法の改正は、本当に少年非行の根本の原因を解決する意味があったものなのか疑問を抱きました。

 前回の少年法改正は、新たに成人とされた18歳と19歳を「特定少年」と位置づけ、原則送致対象事件を拡大するなどの改革が行われたようです。しかしながら、今の少年に必要とされているのは少年の社会復帰後の制度の充実であるように思います。事前学習として、『18・19歳非行少年は厳罰化で立ち直れるか』(現代人文社)を読んだのですが、この著書の中でも、今回の少年法改正に対しての疑問視される意見が多く見受けられました。

 今回の少年院参観を通して職員の方が抱いている悩みや、やりがいについて学びました。少年院以外の刑事施設見学についても、機会が今後あれば、積極的に参加していきたいと思います。

[法学部1回生・京本真凛]