甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.1.30

〈森の世話人〉 防災に役立ち地元市民の憩いの場となる森づくりを —フォレスター松寿

<団体プロフィール>———————————————————————————————–

 「森の世話人」こと『フォレスター松寿』は、2009(平成21)年10月23日にパナソニック電工のOB会である「松寿会」の有志によって発足され、同年12月に活動が開始された。

 国土交通省近畿地方整備局六甲砂防事務所の進める「六甲山系グリーンベルト整備事業」の「森の世話人」として、防災に役立ち、かつ市民の憩いの場ともなる「松寿の森」づくりを目指している。

 活動開始から5年後の2015(平成27)年3月には植樹本数500本を達成、同年6月には、六甲砂防事務所より感謝状を授与され、同年12月にはボランティア参加者が累計1000人を突破した。

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——フォレスター松寿の設立のきっかけをお聞かせください。

 パナソニック電工のOB会という点で、パナソニック創業者である松下幸之助の「企業は社会の公器である」という企業活動の理念が根底にあり、OB会メンバーの「何か社会貢献活動が出来ないか」という熱い気持ちが発端でした。

 六甲山は阪神間のシンボルであり、神戸市民の憩いの場でもあるという理由から、活動内容を六甲山に関する森林ボランティア活動にしようという結論に至りました。また、土砂災害に強い森を作るということをコンセプトに活動を始めました。

 

——実際に活動を続けるにあたって、どのような課題がありますか。

 大きく課題が2点あります。1点目は、活動メンバーを増やし、活動メンバーの若返りを図り、次世代に繋げるという点です。そのため、近年は高校、大学への継続的なアプローチを強化しました。信頼関係を構築することが出来るかがカギになると考えています。働きかけの結果、2022(令和4)年3月現在でボランティア活動の参加人員は延べ3272人まで増加し、学生の参加人数も年々増加傾向にあります。

 2点目は、ボランティア活動そのものを継続させることです。これは、長期的な取り組みが求められる森林ボランティア活動の宿命です。苗木が生き残る率のことを「活着率」といいますが、六甲山で約40~50%です。我々の目標は、活着率70%です。2022年3月現在で、延べ植樹本数は1205本、延べ活動回数は154回に及んでいます。

 

        

     代表世話役の永井唯晴氏               ボランティア活動の様子

    (画像:永井氏提供)             (画像:「フォレスター松寿」提供)

 

——印象に残っているエピソードはありますか。

 今から5年前の2017(平成29)年の夏、いつものように作業していた際に、子連れのハイカーが登山していました。すると、その子どもさんが「お疲れ様です」と声を掛けてくれました。その瞬間、人の役に立っていると感じ、スーッと疲れが抜けて、心が浄化されるような思いがしました。その言葉が、5年経った今でも心に残っており、疲れて心が挫けそうなときに声が聞こえてきます。何気ない一言が忘れられない感動を与える。正に言魂(ことだま)を感じました。

 

——フォレスター松寿の今後のビジョンをお聞かせください。

 「森づくりを通して自然と人間との繋がりを強化し、何十年にもわたって存続する団体にする」というものです。森づくりは見える形で残るものであり、人間は自然の一部です。我々はボランティア活動を通して、自然の偉大さ・人間同士の繋がりの大切さを強く感じました。人間と自然は一体化しています。人間なくして自然なし、自然なくして人間なしだと考えています。

 

——最後に、若者の皆さんへのメッセージをお願いします。

 「自然に関心を持ち、自然を大事にしてほしい」ということです。今日の社会は、公共交通機関ではスマートフォンなどの機器に目がいき、外に出ても歩きスマホで自然に目が届かず、耳はイヤホンによって自然の音が遮断されます。自然を感じる心が薄らいでいると感じています。まずは、自然に触れてください。また、自然を大事にしてください。自然を大事にすることで、自然や環境に対する感じ方や捉え方が変わるかもしれません。そして、森林ボランティアやゴミ拾い等のボランティア活動に参加して、実際の現場に触れてください。自然の偉大さ、人間との繋がり、作業の大変さを感じると思います。もちろん、個人が感じた内容に正解はありません。まずは、自然に関心を持ってみてください。

 

話・永井唯晴氏(フォレスター松寿 代表世話役)

文・甲南大学 経営学部 3年次生 吉本直孝

                                (2022年5月取材)