―――貴団体の活動のきっかけを教えてください。
大井:私が豊中市青少年野外活動協会(豊中野協)で活動を始めたのは、学生時代に遡りま
す。当時、教育や子どもの勉強に興味を持ち、将来は子どもたちに関わる仕事をした
いと考えていました。そんな時、学校の掲示板に貼られたボランティア募集のポスタ
ーが目に留まりました。
私はその募集に応募し、若者ボランティアとして活動に参加しました。キャンプや自
然体験など様々なプログラムを通じて子どもたちと一緒に過ごす時間はとても楽しく
、私自身も多くのことを学びました。特に、子どもたちと心が通じ合った瞬間、笑顔
や成長を見ることができる瞬間は、言葉では表せないほどの喜びを感じました。この
経験がきっかけとなり、私は豊中野協での活動に深く関わるようになりました。ボラ
ンティアを通じて、教育や子どもたちの成長に寄与できることにやりがいを感じ、今
では副理事長としてこの活動を支えています。
―――知識も技術も豊富な大人の方が、子どもたちを安全に見守りながら活動できると思い
ます。しかし、貴団体は18歳~25歳という若者のボランティアを積極的に受け入れて
います。その理由を教えてください。
大井:豊中野協は、若者のボランティア活動を重要視しています。子どもたちをキャンプに
連れていく活動を通じて、子どもたちだけでなく、若者ボランティア(カウンセラー
)自身も成長することを期待しています。
豊中野協は、若者ボランティアを「カウンセラー」と呼びます。彼らはリーダーとは
異なり、子どもたちと横に並び、共に学び成長する存在です。カウンセラーたちは、
子どもたちに指示を出すのではなく、「これをするにはどうしたらいいと思う?」と
問いかけることで、子どもたちの自主性を育てる役割を果たします。
このような方針には、いくつかの理由があります。まず、経験豊富な大人たちは確か
に知識や技術が豊富で、子どもたちを危険から守ることができます。しかし、若者の
カウンセラーがもつエネルギーや情熱には特別な価値があります。彼らは慣れていな
くても、一生懸命に子どもたちと接することで、子どもたちにとって大切な存在とな
ります。子どもたちと年齢が近いため、共感しやすく、親しみやすい存在であること
も大きな利点です。
豊中野協のキャンププログラムでは、若者のカウンセラーが中心となって活動を進め
ます。彼らは子どもたちと共に活動し、楽しい思い出を作ることに全力を尽くします
。例えば、キャンプの準備やゲームの企画など、子どもたちが主体的に参加でるよう
工夫をしています。このようにして、子どもたちは自然の中でのびのびと過ごしなが
ら、自分たちで考え行動する力を養っていきます。
大井さんにインタビューをしている様子
(2024年5月27日、小西澪奈撮影)
―――大井さんにとってボランティアはどういう存在だと位置付けているかを教えてくださ
い。
大井:ボランティアは尊い存在です。お金がもらえるわけでもなく、ただの個人の活動とも
違います。それでも、得られるものは計り知れないほど多いと感じています。
様々な場面でその尊さを実感しています。まず一つは、繰り返しになりますが、子ど
もたちと気持ちが通じ合った瞬間です。豊中野協では子どもたちと接する機会が多い
のですが、彼らが心を開いてくれた時の喜びは格別です。お互いの心が通じ合い、信
頼関係が築かれる瞬間は、本当に感動的です。
もう一つは、自分自身の成長を感じた時です。ボランティア活動を通じてさまざまな
経験を積むので、自分のスキルや知識が向上しているのを実感します。特に困難な状
況に直面し、それを乗り越えた時には、大きな達成感を得られます。こういった経験
は、自分一人ではなかなか得られないものであり、ボランティア活動ならではのもの
だと思います。また、他者との関係が深まった時も尊さを感じます。ボランティアを
通じて出会った人々と共同作業を通じてお互いを理解し合い、助け合うことで、強い
絆が生まれます。このような人間関係は、私にとって大切なものです。
「わっぱるの生きもの観察」に参加した子ども達の様子
(写真:「NPO法人 豊中市青少年野外活動協会」提供)
執筆後記〈「わっぱるの生きもの観察」を取材しました〉
今回のインタビューに際して、2024年6月15日に豊中市青少年野外活動協会(豊中野協)の事業のひとつである「わっぱるの生きもの観察」で取材しました。小学生の子どもたちと触れ合うのは新鮮で、カウンセラーが子どもたちを率いている姿が印象的でした。
特にカウンセラーが語ってくれた言葉が印象に残っています。「NPOは教育関係でもこぼれ落ちている部分を埋めている存在ですが、NPOという言葉は知っていても、具体的に何をしているのか知らない人が多いのです」と。これは多くの団体が抱える課題だと感じました。
取材の中で、カウンセラーの思い出エピソードも聞くことができました。あるキャンプの事業ではプログラムの制作をすべて一人で担当したそうです。準備は大変でしたが、最後には「カウンセラーをやっていてよかった」と感じたと話していました。子どもたちとの交流を通じて、自分自身も成長できる喜びが伝わってきました。豊中野協の活動は、子どもたちの成長をサポートするだけでなく、カウンセラー自身の成長にも大きな影響を与えていると強く実感しました。
<団体のプロフィール>——————————————————————————————-
豊中市青少年野外活動協会(豊中野協)は、青少年が自然環境の中で健全に育つことを目的に設立された団体である。所在地は大阪府豊中市で、1965年に設立された。「自然を愛する心 子どもを愛する心」をモットーに様々な事業の企画、運営を通して子どもたちやその家族が大自然の中で共に成長し、楽しめるようにお手伝いをしている。主な活動内容には、夏季・冬季に行うキャンプ、四季折々の自然を楽しむハイキング、自然観察や環境教育に関するワークショップなどがある。さらに、地域の清掃活動や祭りなどのイベントにも積極的に参加し、地域社会との交流を図っている。豊中野協は長年にわたり、多くの青少年に自然体験の機会を提供し、自己肯定感や社会性を育む手助けをしている。
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話・大井 朗生氏(豊中市青少年野外活動協会 副理事長)
文・甲南大学 経済学部1年次生 榎本日菜
(2024年5月取材)