甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.7.27

地域とつながる児童館を目指して―—なぎさ児童館

―—団体理念をお聞かせください。

 「みんなで、みていく」、「みんなを、みていく」、「みんなで、みんなを、みていく」があります。この3つのなかの「みんなで、みていく」は、ここに通っている学童や午前中にいらっしゃる親子さんを、私たち職員だけではなく、小学校の先生や保護者、地域団体、学生、公共施設の方々のお力を借りながら、「みんなで、みんなを、みていきましょう」というものです。

              

                  館長の鶴崎宏氏

               (2023年5月29日、小倉涼葉 撮影)

 

―—団体理念とボランティア募集は繋がっているのでしょうか。

 そうですね。私たち職員の人数は限られています。子どもたちの主体性を発揮できるような声掛けや計画を考えていますが、やはり限られたことしかできず、職員もその範囲の中で発想しがちです。そこに学生や地域の方々のお力を貸していただけると、物事を幅広く考えられたり、運営できるようになります。以前、甲南大学生の吹奏楽部の方々に演奏終了後に、楽器を触らせていただいたことがあります。これは、私たちではできない貴重な経験で、子どもたちにとって素敵な宝物になったことでしょう。

 正直なところ、イベント等で来館いただいた学生の皆さんは学童の子どもたちにとって、私たち職員より年齢が近い分、親しみやすい面があります。子どもたちの感性を引き出すだけでなく、そこにいるだけで子どもたちは刺激を得られているので、ボランティアの皆さんは本当にありがたい存在です。

 

―—コロナの影響により、変化はありましたか。

 残念ながら、地域との関係が前より希薄になりました。コロナ以前は、日曜日に餅つきイベントを開催していましたが、食べ物を扱うため休止しました。こうした行事が行えなくなった影響は大きかったです。去年からは夏まつりを人数制限しながらですが開催することができ、クリスマス会はついに人数制限なしで実施することができました。コロナ以前に戻るのは難しいかもしれませんが、地域の方とこれまでのような関係性を作っていくことが課題の一つです。

 ただ、コロナ禍においても、神戸市中央区の児童館が集まり、なかなか家から出ることのできない子どもたちや保護者に向けて、ゲームや手遊び、わらべ歌、折り紙などの動画を作成し、発信していました。

        

            季節行事の様子(写真:「なぎさ児童館」提供)

 

――—今後のビジョンをお聞かせください。

 繰り返しになりますが、希薄になってしまった地域の方との関係性を、もとに戻していきたいです。地域と児童館が関係性をもって共催できることは何か、今の地域にどれだけ踏み込んでいけるのかを考えたいです。たとえば、コロナ以前から児童館に通っていた子ども、親御さん、お年寄りの3世代交流の復活を目指しています。また、子どもたちが元気に遊んでいることや活動内容について、地域と情報交換も行いたいです。私たちは「地域あっての児童館」を肝に銘じ、逆に、地域の方からは「児童館あっての地域」と言われるような、お互いが認め合える施設になっていきたいです。コロナ以前は、児童館は小さい子を多く抱える弱い立場であるため、「何かあれば、どうか助けてください」という話が地域の方々とできていました。あれから数年が経過し、このまま関係性を風化させてはいけません。改めて認識してもらうためにも、繰り返し、繰り返し、伝えていこうと思います。

 

―——若者に一言お願いします。

 今の自分を大切にしてほしいです。学童の子どもたちの思いと変わらないです。大学生だから、小学生だからではなく、自分を、自分の生きざまを大切にしてほしいです。間違いやしくじってしまうことはいいんです。その時に間違ったと思い、素直な心で受け止めてください。

           

                  児童館だよりの説明を受ける

                 (2023年5月29日、小倉涼葉 撮影)

 

<団体プロフィール>

 神戸市中央区にある「なぎさ児童館」は、「社会福祉法人 種の会」が運営している。2008(平成20)年6月に神戸市より指定管理を受けて開設した。午前中は「赤ちゃんサロン」や「ちびっこ広場」、「すこやかクラブ」といった子育て支援事業を行い、地域の子どもや保護者が交流する場となっている。午後からは近所の児童が来館し、「放課後児童クラブ(学童保育)」を運営する。地域との関わりを大切にしており、地域団体と連携しながら大人と子どもが交流できる夏祭りやクリスマス会といったイベントも開催している。

 

                     話・鶴崎 宏氏(なぎさ児童館 館長)

                文・甲南大学 文学部社会学科 2年次生 森川 遥菜

                              (2023年5月取材)