甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.1.28

多文化共生を目指して ―多文化共生センターひょうご

  

<団体プロフィール>———————————————————————————————–

 1995年(平成7)年の阪神・淡路大震災がきっかけで「外国人情報センター」、のちの「多文化共生センター」が設立された。震災時に言葉や制度が分からない外国人を支援するという目的で立ち上げられたが、地域に暮らすすべての人が互いに理解しあい、支えあう「多文化共生社会」の実現をめざし、2000(平成12)年に新たに兵庫県に「多文化共生センターひょうご」が設立された。

 現在は在日外国人のための生活相談、保険・医療分野での通訳・翻訳サポートや、「多文化フェスティバル深江」を行うなど、地域に暮らす外国人への特設支援や啓発活動を行っている。

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――毎年、「多文化フェスティバル深江」を開催されています。

 「多文化フェスティバル深江」は、世界の文化を体験したり、ゲームなどを通して多文化交流を楽しめるイベントで、毎年秋頃に開催しています。普段、外国人への支援活動に取り組んでいても、本当に困った時でないと彼らはセンターを利用してくれません。一方で、地域の人は「外国の人が何かしている」ということは分かっても、知り合う機会がなかなかありません。そこで、彼らが気軽に出会えるフェスティバルを開催することにしました。

 このフェスティバルは、もともと「深江多文化こどもまつり」でした。しかし、こども祭りだと対象が子どもだけになってしまいます。そこで大人も対象にできるよう、2013(平成25)年に「多文化フェスティバル深江」に改名し、全世代を対象に実施するようになりました。

 広報も工夫しています。あえて「外国人」ではなく「地域」をキーワードにして、遠くの専門家というよりは近隣住民をmeinta-にしています。参加人数は、来場者、スタッフ、ボランティア等を合わせて500人ほどです。特に、初めての人でも気軽に立ち寄れるように、参加の敷居を低くすることを意識しています。以前は、イベントでは理解が浅いのではないかという批判もあ江いましたが、今は良いきっかけになると肯定的な意見も増えました。

 

――団体の理念の一つとして「少数者の力づけ」がキーワードになっていますね。

 「少数者の力づけ」については「見方を増やす」、「仲間や共感してくれる人を増やす」ことが大事だと考えています。日本にいる外国人は、日本語ができない人も、自分の思いを表現する場がない人もいるんです。外国人を理解する機会というのは日々の生活の中にあるため、イベントをとても大事にしています。「外国人がこれだけの数がいる」という切り口だと生活から切り離されているような印象を与えてしまうため、「地域の特徴として外国の方が多い」というアプローチを意識しています。生き辛さをもっている人は外国人だけではなく、実はみんなが少数派であり、まちはその集まりです。

 

――外国人支援は、国というよりは、ボランティアが中心になって取り組んでいるイメージがあります。

 たとえ国の制度があったとしても、そこで実際に動く人がいないと形にならないですよね。少なくともボランティアは、何かあったときにすぐ動ける身近な存在だし、たとえば災害時には一人でも犠牲者を減らすことができるかもしれません。地域にはさまざまな支援団体があって対象もそれぞれ違いますが、一人でも多くの人を助けたいようゴールは同じはずだと思います。

 ただ、年齢によって、支援が手厚い世代とそうでない世代があります。小学校、中学校は、学校のサポートがあるので、十分とは言えないにしても手厚いです。でも、高校や大学、大人になると途端に支援がなくなります。前世代を網羅するのはなかなか難しいですが、できるだけフォローしていきたいです。サポート内容は固定化しないほうが良いと考えています。何かに決めてしまうと、それ以外の相談が来なくなってしまうからです。

 

     

     代表の北村広美さん       多文化フェスティバル深江にて民族衣装を楽しむ

                       (写真:多文化共生センターひょうご提供)

 

――若者へのメッセージをお願いします。

 一歩を踏み出して、働きかけてみてください。この活動に絶対的な正解はありません。事実や現場を見ないで判断したりせずに、自分の視点を変える意味でも、「一度、見に来てみませんか」と思います。また、関心のある人しか来ないというのも、問題に感じています。そのため、学校の授業を訪問するのは、とても有効だと感じています。外国人支援に関心のない人たちも、話を聞くことになるからです。学校の授業に呼ばれれば、積極的に伺うようにしています。

 

話・北村広美氏(多文化共生センターひょうご  代表)

文・甲南大学 マネジメント創造学部  1年次生 藤田星来