甲南大学地域連携センター

KONAN INFINITY
23.7.26

子どもと一緒に成長する——しあわせの村ユースボランティアグループ「PoPPo(ぽっぽ)」

———「しあわせの村」で「ユースボランティアグループ」が発足したきっかけを、お聞かせください。

来田:障がい者支援に限らず、子育て支援にも力を入れるために発足しました。社会人、学

   生、定年退職者などが年齢や社会的地位に関係なく、一般市民に事業に携わっていた

   だくことで、我々スタッフも助かりますし、参加者も充実感を持ってくださいます。

山岡:ユースボランティアが参加したことでイベント開催時はとても賑やかになり、一般の

   来村者が「何があるんだろう」、「楽しそうやな」とおっしゃるほどです。「しあわ

   せの村」にとって、学生ボランティアは貴重な存在です。

         

              左から、来田 健造 氏、山岡 陽子 氏

              (2023年5月20日、原田 大夢 撮影)

 

———子どもと接するうえで、大切にしていることはありますか。

来田:やはり年齢が近いので、学生の皆さんには子どもに親しみをもって活動いただけます

   。一例をあげると、しあわせの村では、発達の気になる子供向けの運動教室とその保

   護者向けのプログラムを提供する「のびのび運動ひろば」という事業を行っています

   。障がいのある子どもは、自分のできないことを抱えながら日々生活しています。保

   護者も同様です。だから、まず障がいに対する理解を深めること。子どもがいかに喜

   んで楽しい時間を過ごせているかを意識することです。例えば、無理なことを強要し

   ないこと、ただ褒めるだけでなく、具体的に何が良かったのか伝えることなどが挙げ

   られます。子どもとの接し方については、ボランティア志望者は事前研修で専門家の

   指導を受けることができます。中には感情的な言動になって周りになじめない子ども

   もいますが、「別のことをしてみようか」と提案するなど、その子に応じた対応がで

   きるように心がけています。

         

          子どもたちがキャンプを楽しむ様子  (写真:協会提供)

 

———学生が参加することで、保護者の皆さんに影響はありますか。

来田:特に障がいのある子どもをもつ保護者は、悩んだり不安を感じたりすることがありま

   す。しかし、障がいの程度には個人差があるということを理解した学生参加者が、子

   どもに応じたかかわり方で接している様子をご覧になって、「学生の方が寄り添って

   くれて良かったです。」とアンケートに記入いただいたことがあります。さらに、「

   楽しかったから、また子どもを参加させたい」と声をかけていただいたときは、リピ

   ーターになってくれたことを嬉しく感じます。学生の皆さんに参加いただくことは、

   間違いなくポジティブな影響があります。

 

———学生ボランティアが子育て支援に参加することを、どのように捉えていますか。

来田:やはりユースボランティアの一番の特徴は、ボランティアである学生と子どもとの年

   齢が近いことですね。1人の子どもにつき1人の学生ボランティアがマンツーマンで担

   当する事業では、お互いの顔と名前を覚えてもらえて、子どもの安心感を保つことが

   できます。さらに、将来教員を目指す学生にとっては、学生時代に子どもと接する経

   験が得られたり、学校の単位取得につながったりする場合もあります。つまり、学生

   の将来を見据えた人材育成に取り組んでおりボランティア活動は教員志望の学生にと

   って教育実習の場でもあるわけです。子どもとボランティアの双方にとってメリット

   のある活動だと自負しています。

          

          芝生広場で学生ボランティアが活動する様子(写真:協会提供)

 

———学生へのメッセージをお願いします。

来田:ボランティアというのは基本的に無償で活動するものですが、多様な人と活動をとも

   にしながら社会の一員として自覚を養成することは価値の高いことだと考えます。な

   かには遠方から来る人や、学校を卒業した後も引き続き参加する人がいます。甲南大

   生もいらっしゃいますよ。是非将来のためにも、若いうちに参加することを強くお勧

   めします。

山岡:学生が最優先すべきは学業ですが、学校と自宅の往復では得られないことを学べるこ

   とがボランティア活動の魅力だと思います。難しい経験を託されることもあるかもし

   れません。ですが、皆さんは「若さ」という強みを持っています。子どもと年齢の近

   いお兄さん・お姉さんとして、学生ならではの接し方に期待しています。もちろんボ

   ランティアの経験がなくても大歓迎です。子どもたちと一緒に成長される学生の皆さ

   んの姿は、何度見ても頼もしいです。

          

      園では、障がい者施設利用者による手作り品を購入することができる

               (2023年5月20日、原田大夢 撮影)

 

<団体プロフィール>

 公益財団法人こうべ市民福祉振興協会が運営する総合福祉ゾーン「しあわせの村」は、1989(平成元)年4月23日に開村した。2012(平成24)年にはユースボランティアグループPoPPo(ぽっぽ)を発足。現在は「ユースボランティア」に加えて、「社会人ボランティア」、「スポーツボランティア」、「花・みどりボランティア」の4種類が存在。2023(令和5)年現在、学生登録者(大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校、高等学校)は40名にのぼり、神戸市内外の学生がしあわせの村の子ども向けイベント等で活躍している。しあわせの村のテントキャンプ場で行う「森の学校*」のサポートや、野外活動を通じた子育て支援事業など、年間を通して様々なイベント活動を実施している。

*公益財団法人 神戸YMCAが運営する月1回実施されるイベントで、野外における仲間との生活や技術と道具の使い方を学ぶ。

 

         話・来田 健造 氏(福祉推進課長)、山岡 陽子 氏(運営企画担当係長)

                      文・甲南大学 経済学部 1年次生 本家 利基  

                                (2023年5月取材)