1995年(平成7年)1月17日(火)5時46分52秒に発生した阪神・淡路大震災、犠牲者は6,400人を超え、全半壊の家屋が約25万棟に達しました。とくに震源に近い神戸市の被害は甚大で、甲南学園も大学院生1名、大学生15名、高校生1名、中学生1名と同窓生合わせて37名もの尊い命を失い、校舎の半数(5棟)が全壊してしまいました。
改めて、亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、御遺族、関係者の皆様にお悔やみを申し上げます。そして、その後、必死の思いで復旧・復興に向けて尽力してこられた方々に心より敬意と謝意を表します。
甲南大学では、がれきの前に「頑張れ甲南大学」という横断幕が貼られ、仮設校舎で授業が行われる一方、近隣の大学などに入試、図書館利用など多くのご支援をいただき、教職員・学生・卒業生一丸となって復興に向けた努力が行われました。1997(平成9)年3月に大学新1・3号館、高等学校・中学校校舎竣工、1999(平成11)年には学園創立80周年記念式典を挙行できるまでになりました。皆さまのご厚情に深く感謝いたします。
1938年(昭和13)年の阪神大水害、半世紀後の阪神・淡路大震災を経験した甲南学園、甲南小学校には、甲南学園の創立者平生釟三郎の言葉「常ニ備ヘヨ」が刻まれた記念碑が建てられています。予期せず起きるトラブルに備え、日頃から生きていくための知恵や技術、倫理観を身に付けておくことが大切であるという教え「常ニ備ヘヨ」は、未来に引き継がれる危機管理の近代精神、平生精神であるといえます。
甲南学園では、校舎については現在の建築基準法に適合するように、また設備面については点検・保守に務め、常に安心、安全を第一に考えて運営しています。また、2011(平成23)年に岡本キャンパスに防災センターを建設し、学園全体のリスク管理体制の整備を進めています。しかし、各人が災害による被害をできるだけ少なくするために「自助」「共助」「公助」という防災意識をもつことがもっとも重要であり、防災訓練も実施しています。
昭和東南海地震及び昭和南海地震が起きてから80年近くが経過しており、南海トラフにおける次の大地震発生の可能性が高まってきているといわれています。「災害は忘れた頃にやってくる」(寺田寅彦の言葉)を意識し、「常ニ備ヘヨ」を怠らず、「正志く 強く 朗らかに」過ごしていきたいと切に願います。
2025年1月

