分散サーバ間でのデータ共有・移動を実現するエッジ環境向け分散データストアを研究する。知能情報学部 准教授 鎌田 十三郎 (ネットワークコンピューティング)

ネットワークコンピューティングの専門家で、プログラミング言語や基盤ソフトウェアの研究も行う鎌田十三郎准教授にお話しを伺いました。

About Me ( KAMADA Tomio )

専門分野ですが、最近はネットワークコンピューティングと答えています。元々は、並列計算機や複数の計算機をまとめた PCクラスタ、スーパーコンピュータなどのためのプログラミング言語や基盤ソフトウェアの研究をしてきました。そのうち、Webアプリなどのネットワークにまたがった計算の研究も始め、現在は、第5世代移動通信システム(5G)などでも注目をあびているエッジコンピューティングなどのための基盤ソフトウェアのデザイン・システム実現にむけた研究を主におこなっています。時代とともに新しい計算環境が普及し、そのための新しいプログラミング環境・ソフトウェア環境の研究をしているという感じですね。

Research

Easy data distribution management for Edge computing

最近メインにしているのは、エッジコンピューティングやフォグコンピューティングなどと呼ばれる計算環境向けの分散データストアサービスの研究です。
皆さんもご存じであろうクラウドコンピューティングでは、インターネットを介して各種アプリケーションやコンピューティングサービスが提供されていますが、実際には、データセンターにあるサーバ群で大量のデータや計算を処理しています。
エッジコンピューティングでは、より皆さんに近い場所にサーバなどを配置することで、大量のデータの処理や低遅延のデータ処理を可能にしようという技術です。
各所に配置されたエッジサーバでプログラムを実行するための仕様・システムなどは開発されているのですが、エッジサーバ間のデータ共有や、クライアントの移動に応じたデータ移動などは現状プログラマ任せとなっています。正直、どれだけの開発者が安定したソフトウェアを実現できるのか心配です。
我々のグループでは、地理的に分散したサーバ間でのデータ共有・移動を簡単に実現できるように、エッジ環境向け分散データストアの研究をおこなっています。
ソフトウェア開発者が、アプリケーションのデータ構造を定義する際に、データの配置ルールを一緒に記述することで、各利用者の近くにその関連データを自動配置できるようにしようというものです。
挑戦的な試みですが、楽しく研究しています。

Easy data distribution management for Super-Computers

最近までは、スーパーコンピュータ上での分散データ管理に関する研究をおこなっていました。
現在スーパーコンピュータを利用している科学技術計算の多くは、多量の計算を必要とするが、その計算量はあらかじめ決まっているものが多いです。
一方で、計算の中には、その過程の中で計算量がどんどん変化するものもあります。例えば、どこかで良い解がみつかったから、無駄そうな領域の計算は止めてしまうとか。
当然、無駄な計算をやめたコンピュータには、あらたに有望な計算をおこなって欲しいのですが、そのためには計算に必要なデータを持っていかないといけません。

我々のグループでは、データの再配置を柔軟に記述可能で、かつ計算と通信のオーバーラップが容易な分散集合ライブラリの研究をおこなってきました。
京コンピュータや富岳などのスーパーコンピュータも利用しており、スパコン相手に Java などのプログラミング言語を利用する異色組です。
興味のある学生さんだけでなく、高速に解きたい科学技術計算をお持ちの先生方も、気軽にお声がけください。

KONAN’s Value

研究では、将来のネットワークコンピューティングを見据えた基盤ソフトウェアの研究をおこなっていますが、授業では、現在広く利用されているクラウド上のデータベースなどを利用したしたソフトウェア開発に関する講義・演習などもおこなっており、現実のクラウドソフトウェア開発に近い経験をしてもらっています。
あと、プレミアプロジェクトの競技プログラミングチャレンジにも参加しており、プログラミングを頑張りたい皆さんを後押ししたいと思っています。
鎌田自身は、昔 ACM ICPC という大学対抗プログラミングコンテストで出題者もしていました。
プログラミングやアルゴリズム応用の能力は、社会で広く求められており、また、競技プログラミングなどを通じて個人の能力を示すこともできます。
甲南大学では、プレミアプロジェクトなどを通じて自分の能力・可能性を試す機会が提供されています。是非うまく活用してください。

Private

以前は、土日は子供を連れて外にでることも多かったのですが、子供が大きくなってからは、家で過ごしていることが多いです。
甲南大学に着任して1年半なので、残念ながら土日は月曜の授業の準備に追われていることが多いです。
ただ、時間を作っては屋上でバジル育てたり、それでパスタを作ったり、あと、家の扉の付け替えや、壁紙・ふすまの張替えみたいな DIY っぽいことしたりもしています。

Profile

知能情報学部 准教授

鎌田 十三郎

KAMADA Tomio

専門領域
ネットワークコンピューティング

キャリア
神戸大学
東京大学

所属学会
ACM
情報処理学会
電子情報通信学会
日本ソフトウェア科学会
日本データベース学会