ゼミの紹介
近代以降、イギリスは、イングランドとスコットランドの連合、島国から帝国への拡大などにともない、世界各地に「イギリス文化」の刻印を残してきた。議会制度を通じた民主主義しかり。鉄道網の確立しかり。イギリス、グリニッジを標準時とする時差、時間の概念もそうである。フットボールやバトミントンなどの「気晴らし」をルール化して「スポーツ競技」に変え、世界発信したのもイギリスだ。
その一方で、島国から帝国への空間的な拡大、イギリス帝国の成立と解体は、イギリス国内の政治や文化、イギリス人の世界を見る目、そして彼らの生き方などにも、無視できない影響を与えてきた。たとえば、イギリスに自生しない紅茶を飲む国民的習慣の定着自体が、島国から帝国への空間的拡大の産物なのである。ではなぜイギリスは、コーヒーではなく紅茶を飲む国民になったのか。そんなちょっとした“こだわり”を本セミナーでは大切にしたいと思っている。
ゼミの進め方
まずは、ゼミ生各自が「自分のテーマ」を明確に選び取ることから始める。「連合王国」であるイギリス、そこに暮らすさまざまな「イギリス人」、そしてこの国がかつて「帝国」であったという歴史的事実。そのなかで自分の興味を引くテーマはいったい何か。自分がほんとうに好きなこと、やりたいこととは何なのか――2年間、じっくりつき合えるテーマを選ぶことから、まず一歩踏み出そう。
そのうえで、さまざまな資料(書物や雑誌、写真や絵画、映像、インターネット上の情報など、自分が選んだテーマを深める資料は実に多彩だ!)を発掘し、それらを組み合わせ、重ね合わせながら、自分が選んだテーマの中身を具体的に深めてほしい。各自の報告は年に2度。それをセミナー参加者全員で議論し、報告者以外の考え方や視点を加えて、さらにテーマの中身を掘り下げていく。その過程で、最初に抱いていたテーマ・イメージや考え方がどう変わっていくのか、それも楽しんでほしい。
なお、報告時の国際情勢も、「マイトピック」として取り上げ、深めていく。
【ゼミの特徴】
本セミナーでは、各自が報告する研究内容はもちろん、他の学生の報告に「何か」言える質問やコメントの力、質問やコメントをしたいと思う知的好奇心や感性、そして何より、議論に参加する積極性を重視している。また、本セミナーは、年に一度(後期)、経済学部と合同セミナーを行い、学部を超えた意見交換や議論を通じて、社会人に求められる力とは何かを具体的に考える機会としている。総合大学としての甲南大学の魅力(のひとつ)を「再発見」してもらいたい。
これまでの卒論題目
- 「ロンドン塔のカラス」
- 「Stephen LawrenceにみるRacism」
- 「競馬から見るイギリス社会」
- 「ウィリアム・ホガースと『当世風結婚』」
- 「『岩倉使節団』と『蒲安臣使節団』における文明観とアイデンティティ比較」
- 「映画に見るエリザベス一世」
- 「ANZAC DAY ~「オーストラリア国民」の誕生~」
- 「薩英戦争~なぜ薩摩とイギリスは和睦できたか~」
- 「サツマ・バンドとイギリス軍楽隊~なぜ薩摩藩は軍楽をイギリス式に塗り替えたのか?~」
- 「現代社会における人と動物の関係 ―その関係から未来を考える― 」
その他
例年経済学部との合同ゼミをやっています。
担当者の関心
ヴィクトリア朝〜第一次世界大戦の大英帝国の文化史。
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