ゼミの紹介
文を読んだり聞いたりして意味が分かるというのは、当たり前のようでいて、謎に満ちています。「ことばが分かる」あるいは「ことばを話せる」ということはどのようなしくみ・働きの上に成り立っているのでしょうか。こころ(=Mind)の機能としてのことばを、さまざまな角度から光を当てます。もちろんすべてのことはできませんので、このゼミでは以下のようなトピックの中からいくつか選んで取り上げます。(1) 語の意味を「知っている」ということはどういうことか(語彙意味論)。(2) 文法を「知っている」ということはどういうことか(統語論)。(3) ヒトがことばを「理解する」とき「こころ」では何が起こっているのか(言語理解)。(4)日本語と英語はどのような点で共通していてどのような点で相違しているのか(日英対照)。などなど。(卒論のテーマはこれらに限りません。)
卒論ではCorpus of Contemporary American English(COCA:Corpusとは言語の大規模データベースのことです)や,CHILDES(Child Language Data Exchange System:幼児言語の自然発話データベース)などを用いて実際の言語データを調査してもらうか,Ibex Farmなどを使った質問紙調査や実験などを行ってもらうことになります。あらかじめ言っておきますが,いずれもかなり根気を必要とする作業です。しかし,ことばに対する好奇心を持っていれば,大量のデータから宝を見出すことができるでしょう。うまくいけば学会発表のレベルまで行けるかもしれません。なお,当ゼミの卒論では,既刊の研究をまとめるといった内容は認められません。
ゼミの進め方
当ゼミでは,授業では言語理論に関する基礎的な文献を読み進めていきます。英語力を向上させるとともに,ことばの仕組みに対する理解を深めていくのが目的です。最初は統語論の復習からスタートし,その後,動詞意味論に関する論文を読み進めます。講読の「割り当て」をすると割り当てられていない人が予習してこないということが起こるので,基本的に「割り当て」は行いません。毎回みなさんに均等に質問を投げかけます。また,こちらが質問を投げかけるのと同じくらい重要なのがみなさんからの質問の投げかけです。「何が分からないか分からない」という状態を一刻も早く脱するためには積極的に質問することが必要です。皆さんからの質問は,授業を活性化させますので,平常点のボーナスにもなります。
また年に1回,(おそらく9月の学期開始前に)半日かけてゼミ合宿にて研究発表会を行う計画です。このかわりに学期中の授業の一部が休講になります。
準備学習
英語学関連の講義をいくつか履修済であることが強く推奨されます。特に「英語の意味」「英語の文法」「英語の獲得と理解」「英語学講座III」を履修しておくことが望ましいですが,セミナーとの並行履修でもかまいません。また,心理言語学(言語獲得・習得・言語理解)で卒論を書くことを希望する人は「英語の獲得と理解」または「英語学講座III」をかならず履修してください。
これまでの卒論テーマ
過去の例です。
- 「人称代名詞の獲得について」
- 「ジェスチャーにおける基本語順の現れについて」
- 「英語母語話者の否定表現獲得」
- 「コーパスを用いたoverの意味・頻度の比較」
- 「コロケーションから考える"容器"のクオリア」
- 「英語と日本語の色彩表現について」
- 「複雑述語の構造と意味関係」
- 「子どもはどのようにして疑問文を獲得するのか」
- 「複数形と助数詞の獲得について」
- 「The Effefts of Pragmatic Factors in the Processing of Japanese Benefactive Constructions」
- 「『使う』と’use’の意味論」
- 「自動詞と他動詞の交替現象」
- 「脱名詞化動詞の意味論」
- 「前言語的認知と語彙獲得」
その他
過去の教室外のゼミ活動の様子です。
↓秋元ゼミと合流した春のマラソン花見
担当者の関心
私の興味は主に語彙意味論と文理解にあります。ヒトはどのようにして語の意味を捉え,そしてどのような知識・メカニズムで意味と文法の関係がヒトの頭の中で計算されているのか,このようなことについて調査・研究し,ヒトの言語知識のモデルを構築するのが「語彙意味論」です。「文理解」とは,特にヒトが文を理解するときに脳の中でリアルタイムで何が起こっているかを実験によって検証する分野です。