Konan University Library

図書館ガイダンス -自然科学編(基礎)- [05/10]-

5. 学術論文とは

5-1. 学術文献について

本や論文などの「学術文献」は大きく、基礎的な資料と、応用資料に分けることができます。
基礎的な資料で代表的なものは、教科書や概説書などで、一般的に「本」として発行されます。
教科書や概説書は、各分野を学ぶために必要な基礎知識が体系的に書かれているので、初めて勉強するときは「本」を使った方が便利で確実です。

基礎的なことを身に着けたら、いよいよ専門的な「研究」の世界に入ります。
大学教員などの研究者による研究成果は、「学術論文」で発表されます。「学術論文」の平均的な数量は数十ページと短いですが、最先端の研究が凝縮されています。

「学術論文」は、「学術雑誌」に掲載されます。(文系では本になることも多いですが)
学術雑誌には、主に学術論文を掲載する「学術雑誌」と、初学者や一般の人向けに、注目の研究を紹介したり、勉強方法を案内したりする「学術情報誌」があります。
冊子体の学術情報誌は、図書館2階雑誌コーナーにありますので、読んでみてください。

「学術論文誌」は、従来は通常の雑誌と同じように定期的に冊子体で発行されていましたが、最近は多くが電子ジャーナルで発行されています。
電子ジャーナルも、冊子体と同様に定期的に発行され、各論文にページ付けもされています。冊子体と電子ジャーナルの両方が発行されている雑誌もあります。

5-2. 学術論文について

学術論文は、同じ分野の研究論文が集められ、毎週あるいは毎月、毎年といった単位で定期的に発行される学術雑誌に掲載されます。大学図書館にある「雑誌」は、ほとんどがこの論文を掲載した学術雑誌です。

雑誌は同じタイトルで定期的に発行されるので、一つ一つに番号=巻号がつけられています。
特定の論文を提示するときは、著者や論題だけでなく、雑誌名と巻号も合わせて表示します。例えば、「ノーベル賞を受賞された山中先生のiPS細胞の論文は、2006年に発行された『Cell』という雑誌のVol. 126, no. 4に掲載されています」と表現すると分かりやすくなります。
※no.は、Issueと表示されることもあります。
※論文情報の表記については、後で詳しく案内します。

標準的な論文は、下の図のような構成になっています。


※画面引用
溝川 藍 , 子安 増生「青年期・成人期における共感性, 情動コンピテンスと道徳性の関連」
教育心理学研究, 65 巻3 号, 2017. p. 361-374
DOI:https://doi.org/10.5926/jjep.65.361

論文には、タイトル、つまり論題があり、論文を書いた著者、つまりその研究を行った人の名前があります。
その下のブロックは、「抄録」、英語ではAbstract(アブストラクト)と呼ばれる論文の概要です。小説などのあらすじと異なり、研究の目的や研究手法、研究結果の要点をまとめた文章です。

抄録の後が本文です。一般的に数ページから数十ページ程度にまとめられています。

最後には、この研究の参考とした文献の一覧がつけられています。
この文献一覧から、更に文献を探すこともできます。

5-3. トップジャーナル

国際的な学術論文誌は、掲載した論文が他の論文にどれだけ引用されたかによって、点数がつけられています(IF:インパクトファクター)。
自然科学系は、有名な『Nature』『Science』を筆頭に、分子生物学の『Cell』や、化学の『JACS (Journal of the American Chemical Society)』のように、各分野に点数の高いトップジャーナルがあります。また、分野によっては論文誌以外に学会会議録(Proceedings)もよく使われます。
トップジャーナルのようなインパクトファクターの高い雑誌に掲載された論文は、それだけ影響力のある論文であり、新聞のニュースになることもあります。

とはいえ、国際的な学術論文は内容も英語も難しいので、まずは先生や先輩から読み方を教わりましょう。『Nature Digest』や『日経サイエンス』など、日本語で要点を説明してくれたり、邦訳を掲載している雑誌を利用する方法もあります。

また、一つ一つの「論文」も、ダウンロード数や被引用数、SNSの反応などによって評価(Altmetrics オルトメトリクスなど)されることもあります。
いろいろな指標は参考にはなりますが、本当の価値を決定づけるものではありません。目立たない論文でも、後に重要な発展に繋がる可能性があります。つまり、論文の価値がいつどのように開花するかは、読む人次第です。

5-4. 先行研究と査読 (論文ができるまで)

先行研究の調査とは、同じテーマで発表されている論文や本(=先行して行われている研究)を探すことです。これまでに分かっていることを確認し、研究の足掛かりを掴んだり、テーマを見直したりします。
文献調査は研究中も頻繁に行います。使った文献は、文献情報を控えておき、論文を書くときに文献リストを作成します。
普通の辞書では調べられない専門用語は、専門用語辞典を使用します。(文献データベースで他の研究者が使っている用語を調べる、という方法もありますが・・・)論文や抄録に使用するキーワードを同じ学問分野でよく使用される言葉にすると論文を見つけてもらいやすくなります。

◆査読(peer review)とは
学術雑誌に投稿された論文は、同じ研究分野の研究者がチェックします。これを「査読(さどく)」といいます。国際的なトップジャーナルほど採択率が低く、査読も厳しくなります。
査読を経て掲載が認められると、雑誌の発行に先行してインターネット公開されることもあります。ニュースで発表されるのもこのタイミングです。
ただし、多様性を重視するために査読を行わない学問分野もありますし、一般的に大学が発行する紀要(きよう)にも査読はありません。一概に信頼度が低いわけではありませんが、留意しておく必要があります。

5-5. 冊子と電子とオープンアクセス

同じ学術雑誌であれば、冊子版の学術雑誌に掲載された論文と、電子ジャーナル版に掲載された論文は、同じものです。まれに、電子ジャーナルは図版がカラーであったり、付属データが付くことがあります。

「オープンアクセス(OA)」とは、無料で公開されている学術論文・学術情報のことです。誰もが気軽に読めるのですが、残念なことに、質の悪い論文が含まれることがあります。研究初心者には見分けがつきにくいので、先生に相談しながら研究を進めましょう。
また、文献は、形態や入手しやすさではなく、研究に必要なものを選んでください。入手方法が分からないときは、2階ヘルプデスクでご案内します

◆機関リポジトリとプレプリントサーバー
「機関リポジトリ」とは、大学や研究機関が、紀要や博士論文、所属研究者による学術雑誌論文などを公開するシステムです。
「プレプリントサーバー」は、同じ分野の研究者が、いち早く確認できるよう、雑誌に掲載されるより一足早く論文を公開するサーバーです。
どちらもオープンアクセスですが、公開されている版は著者の手元にある原稿(著者最終稿)である場合があります。研究内容は同じですが、レイアウトなどが異なるなど精度が劣る場合があります。

◆DOI(ディーオーアイ)
電子ジャーナルの論文に付けられる固有の番号です。。
DOI に「https://doi.org/」を追加すると不変のURLになるので、論文情報と一緒にメモしておくと便利です。
 例)DOI:10.1038/ndigest.2020.200505 → URL: https://doi.org/10.1038/ndigest.2020.200505

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