研究室の概要

研究室の概要/詳細

情報通信ネットワークの高度化・高品質化に関する研究

電波を使った陸上移動体通信ネットワーク、すなわち携帯電話やPHSのネットワークは、将来的には衛星携帯電話ネットワークと融合し、自律分散的な全無線ネットワークが実現されます。それにより、情報ネットワークは利用者にとって何らネットワークの違いも感じないで意のままに使える、人に優しいものになります。

ただその実現には、たくさんの問題を解決しなければなりません。たとえば移動通信に利用できる電波の周波数資源は有限です。その限られた周波数資源を用いて、如何に多くの利用者に満足できるサービスを提供するかという問題もその一つです。

こうしたネットワークのための無線周波数の有効利用と高品質のサービスの提供は極めて重要な研究テーマです。

利用者がこれらのネットワークを利用する時間は、あらかじめスケジュールされたものではありません。利用者のランダムな利用によって、ネットワークは混み合う時間帯もあれば暇な時間帯もある。伝送の情報量から見れば、文字データのような小さなものから動画像のような大きなものもあります。利用者が満足するサービスを提供するためには、これらの不確実さを考慮した量的性能評価に基づく、システム設計や運用、またはシステムのグレードアップを行う必要があります。

このための有力な数学的理論は待ち行列理論(Queueing Theory)です。待ち行列理論の情報通信ネットワークへの適用によって、ネットワークへの研究が格段に進みました。特にサービスの対象として「電話の呼」のようなトラヒックを扱う回線交換ネットワークに関する研究においては、この数学的理論は通信トラヒック(Traffic)理論と呼ばれることが多いです。複数のネットワークが混在し、複雑巨大化する分散処理環境であるマルチメディア情報ネットワークの中で、新システムの設計・開発や新しいニーズに応じるシステムの再構築をするためには、利用者が発生させるトラヒック(情報の量・流れ)の特性を正確に把握し、その統計性質を分析した上、その環境における負荷が統計・解析できる一般的な方法を確立しなければなりません。

そして、待ち行列網理論とコンピュータシミュレーションなどの技法を用い、異なるプロトコル(通信の手続き)や情報の形態(音声、データ、画像)が混合するマルチメディア情報システムを効率的に評価するための手法を研究・開発することが必要です。いまはこうした研究を基盤にして、不均質に分散する各システムにに対して、負荷情報をもとに自立的にプロセス割り当て確率を求め、システム資源能力に応じた負荷分散を最も効率的に行う、動的負荷分散制御方式の開発に関する研究を行っています。

21世紀は高度情報化社会。身近な生活から産業・行政など、あらゆる分野がこうしたネットワークによって結ばれ、まるで人間にとっての神経連絡網のように重要な役割を持ちます。大げさに言えば「21世紀という巨人を支える研究」をしているんだというやりがいを感じます。私たちはこれらの研究開発によって、情報化社会を支えているマルチメディア情報ネットワークの高度化・高品質化の実現を目指しています。時代を切り拓く情報システム工学の多くの研究テーマが、学生の皆さんの意欲的なチャレンジを待っています。

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