次世代電池の可能性を広げる
全固体電池の未来を支える材料研究
全固体電池の未来を支える材料研究
甲南大学理工学部環境・エネルギー工学科の町田信也教授は、高容量・高出力と高い安全性を兼ね備えた次世代電池として期待される全固体電池の研究をしています。固体電解質、正極、負極の材料すべてに着目し、相性や組み合わせを最適化することで、性能向上を目指しています。全体を見渡す発想で電池の可能性を広げる研究と、「ダボハゼ型」と語る独自の研究スタイルに迫ります。
Contents
・高安全性を実現する次世代電池の実用化を目指して
・人との出会いが切り拓いた研究人生
・「興味の入り口は広く」未来を見つける学び方
高安全性を実現する次世代電池の実用化を目指して
KONAN-PLANET 記者
まずは、町田先生の研究内容を教えてください。

町田信也 教授
全固体電池を構成する固体電解質材料や電極材料の研究に取り組んでいます。全固体電池は、正極と負極の間を行き来するイオンの通り道である電解質に固体を使うことで、イオンの移動が速くなり、素早い充電、容量の拡大を可能にする新しい技術です。
KONAN-PLANET 記者
全固体電池は従来のリチウムイオン電池と比べてどのような優位性がありますか。
町田教授:現在使われているリチウムイオン電池は、電解質に可燃性の有機溶媒を使っているため発火のおそれがありますが、全固体電池は電解質に無機材料を使うため安全性も大幅に向上します。

KONAN-PLANET 記者
現在、特に注力されている材料研究について教えてください。
-火山国 日本ならではの豊富な資源「硫黄」に着目
町田教授:固体電解質については硫化物系の材料に着目し、研究を進めています。硫化物系材料はセラミックのように焼き固めることなく、圧力をかけるだけで固まるのが利点で、さまざまな形状に対応することができます。
また、正極、負極材料ではよりエネルギー密度の高い材料の研究を深めています。硫黄は、従来の電解質溶液で正極材料として用いると反応物質が溶解して使えませんでしたが、固体電解質ではそれがないため使うことができます。火山国の日本は硫黄が豊富で材料に事欠くことがないのも魅力です。現在は硫黄に種々の添加剤を加えて正極材料としての特性を向上させる工夫を行っています。
KONAN-PLANET 記者
全固体電池の研究にはどのような面白さがありますか。
町田教授:通常、固体中では、原子やイオンといった比較的大きな構成要素は移動できません。しかし、特別な構造を有する固体中ではイオンが高速で移動でき、電解質溶液などの液体中よりも高いイオン伝導性を示すのは非常に興味深いことです。こうした現象は電池やセンサーなどさまざまな電気化学素子に応用できると期待されています。

KONAN-PLANET 記者
実用化に向けて今後どのような課題がありますか。
町田教授:多くの研究者は固体電解質、正極材料、負極材料のうちいずれかについて専門的に研究をしていますが、私はいわゆる「ダボハゼ型」のスタイルで、興味のあることには何にでも飛びついて研究に注力します。電解質、正極、負極で使う材料の相性、組み合わせを、全体としてどうすれば性能の向上につなげられるかを追求し、実用化に向けて研究成果をより多く生み出すことを目指します。
人との出会いが切り拓いた研究人生
KONAN-PLANET 記者
高校時代はどのような生徒でしたか。
町田教授:高校時代はあまり勉強熱心ではありませんでしたが、読書が好きで、歴史小説から岩波新書まで幅広く読んでいました。後の研究においてある現象に出合った時に幅広い知識の引き出しからヒントを探り当てることができたのも、この時期から培ってきた雑学の蓄積が役立っていると思います。科目では英語が苦手だった一方、化学は好きだったので、あまり深くは考えずに大学は工学部の応用化学科に進学しました。

KONAN-PLANET 記者
研究者を志したきっかけを教えてください。
町田教授:大学4年生の時に南努先生(元大阪府立大学学長)の研究室に入ったことが、研究人生の大きな転機となりました。南先生は超イオン伝導性を示すガラスの研究をされており、そこに興味がわいたことで、イオン伝導性の高い固体電解質の研究へと足を踏み入れることになったのです。南先生だけでなく、大学の研究室の先輩、後輩に恵まれたおかげで、研究の道へと進むことができました。
KONAN-PLANET 記者
研究を続けるうえで大切にしていることは何ですか。
-タコツボ化せず、さまざまな分野の研究者と情報共有
町田教授:人との出会いです。これまで経済産業省や文部科学省のプロジェクトなどでさまざまな大学の研究者とプロジェクトチームをつくって共同研究を行う機会もありましたが、そのたびにいろいろな研究者と、研究で行き詰まっていることを相談したり、お互いの良い成果を共有したりしながら、ブレークスルーしてきました。研究者の皆さんはそれぞれ得意分野があり、持っている情報をお互いの研究に役立てようとフランクに付き合ってくださるので大いに助けられています。
また、私自身先ほども述べたように、読書でも研究でも何にでも興味を持って首を突っ込んでいくタイプなので、さまざまな研究分野の研究者と話ができることが強みだと思っています。広く、浅くにはなってしまうかもしれませんが、全体を理解していることで、専門だけにタコツボ化することもなく、異なる専門分野をつなぐ役割も果たせると思っています。

「興味の入り口は広く」未来を見つける学び方
KONAN-PLANET 記者
高校生や受験生に伝えたいことはありますか。
-幅広い分野に興味を広げて、逃げ道を作ることも大切
町田教授:自分がここを突き詰めていきたいと思える研究テーマはそう簡単に出合えるものではありません。なので、初めは興味を持ったことのあれもこれもかじりながら幅広く入り口を持っておいてよいと思います。そうしているうちに、私が南先生の研究室でやりたいことに出合ったように、どこかのタイミングで自分の好きな道が見えてくるものです。
逆に初めから決めつけてその道だけで突き進もうとすると、そこで行き詰まった時に逃げ道がなくなってしまうこともあります。最初に幅広い分野に興味を広げておくことで、方向転換できる余地もできます。私のようにダボハゼ的にいろいろなものにパクッと食いついていくやり方も決して悪くないと思いますよ。
KONAN-PLANET 記者
町田先生ありがとうございました。
町田研究室のホームページはこちら↓
