ついにキタか!?
システムが判断して自動走行する時代の幕開け

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2021.9.21
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自動運転技術。
このホットなキーワードをCMやニュースなどで耳にする機会が増えてきました。
「人間が操作しない完全な自動運転なんて可能なの?」
「実現したとしても本当に安全?」そう感じている方も多いのではないでしょうか。
ここ数年で急速に進化している自動運転技術は、完全自動化を実現できるのか。
今回は、その可能性を探っていきたいと思います!!

 

 

「自動運転技術」のいまを、まず知ろう

2021年9月現在、自動運転技術で最も世界をリードしている国、それは日本!! 今年3月、ホンダが発売したLEGEND(レジェンド)は、世界で初めて自動運転「レベル3」を実用化した自動車として華麗なるデビューを果たしました。自動運転の「レベル3」ってどういうこと?と思われた方も多いと思います。簡単に説明すると、「レベル3」は人間ではなく、“システムの監視”によって車が自動的に運転されるというレベル。時速60km以下、高速道路などの渋滞のみ、という条件付きではありますが、運転手がハンドルやアクセル、ブレーキにふれなくても車が自動で走ってくれるというから驚きです。

 

 

 

 

 

 

『完全自動運転-レベル5』の実現はいつになるのか

完全自動運転実現までのロードマップ、眺めているだけでワクワクしてきますよね。国土交通省の予想では、2050年にはモビリティの自動運転技術により交通事故が大幅に減少し、安全性の高い便利な乗り物となっているだろう、とあります。ちなみに、完全自動運転は「レベル5」。運転を全てシステムに任せて自分は何もしないなんて、少し怖い気もしますが・・・。「完全自動運転の実現は、まだ先の話です」と教えてくれたのは、自動運転技術に欠かせない「ヒューマンセンシング」を研究されている甲南大学 知能情報学部の山中先生です。

 

 

山中先生

 

自動運転は、道路状況や他の車の位置や動きなど、
外部の情報を獲得する技術にばかり目がいきがちですが、
レベル5の『完全自動運転』となると解決すべきことは他にもあります。

 

 

 

 

システムに判断できるのか?? 『トロッコ問題』

山中先生は、システムは周りの車や道路の情報を得ることはできるが、たとえば「右から人が集団で飛び出してきた、でも左は断崖絶壁・・・さあ、ハンドルをどっちに切る?」といった命の選択を迫られるような判断はAIにはまだ難しいのが現状(いわゆる『トロッコ問題』)と言います。さらに、万が一自動運転中の車が事故を起こした場合、その責任がドライバーにあるのか、はたまたメーカーにあるのか、そのジャッジが難しいことも完全自動運転化の課題のひとつになっているのだそうです。

 

 

 

『課題いろいろ、完全自動運転への道のり』

・自動運転システムに何を学習させていくのか
・事故が起きた場合、誰が責任をとるのか
・自動運転技術だけでなく、道路や街のインフラ整備も必須
etc….

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

「完全自動運転のクルマ」同士なら、お互いの動きを予測できる。
しかし、「完全自動運転のクルマ」と「そうでないクルマ」だと、
まだまだ予測するのは難しそう・・・
でも、システムが監視して運転してくれる技術には期待したいです!!

 

 

 

 

発明に課題はつきもの。
完全自動運転が明るい未来を実現する!

完全自動運転を実現させるには、最先端の研究と技術が必要なだけに課題も山積みです。しかし、その技術革新によって生まれる“明るい未来”があることを忘れてはいけません。中でも、自動車に最も求められる『安全性』が飛躍的に高まることは、社会にとって大きなメリット。車は『まず安全』であること、そこが重要です。

 

 

山中先生

 

『安全性』が格段にアップするのは明るい話題。

例えば、高齢者の運転操作ミスによる事故も
減っていくと考えられます。

 

 

 

さらに、完全自動運転が実現すれば、様々な利便性や効率性の向上も期待できます。たとえば、運送トラックの運転が自動化されれば24時間安全に走行でき、倉庫や工場へジャストタイムで荷物を運ぶことができるでしょう。ドライバーの負担が減り、効率もアップします。タクシーは行先をスマホで予め入力すれば、自動で送迎をしてくれるように。そんな、便利で安全な未来が、すぐそこに迫っているのです。

 

 

『完全自動運転』を実現するヒューマンセンシング

ところで、「ヒューマンセンシング」という言葉を皆さんはご存じでしょうか?ヒューマンセンシングとは、機械がセンサーを用いて人の表情や体温、音声などから人の状態や感情を読み取る機能のこと。実は、この機能こそが、完全自動運転を実現するための重要なカギを握っています。

 

「たとえ完全自動運転のクルマが実用化されたとしても、日本中の道路の全てが完全自動運転に対応できるとは考えにくい。条件の揃った特定区域の一般道や高速道路など、安定性と安全性が確保できる場所に限られるでしょうね」と山中先生。
ここで大きな問題となるのが、完全自動運転対象の区域から、対象でない区域に切り替わる際のドライバーの状態です。あってはならないことですが、自動運転中にドライバーが寝てしまって、そのまま区域外の道路に出てしまったら・・・大事故に繋がることは容易に想像できます。だからこそ、ヒューマンセンシングによってドライバーの状態を常に把握し、安全性を担保することが重要なのです。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

ドライバーが寝てしまっている・・・ゾっとしました(汗)

 

 

 

山中先生

 

ですよね。だから、安全性を高めるには、
ドライバーの状態をモニタリングすることが重要なのです。

 

あと、「完全自動運転で2時間移動する」となると

ドライバーは「暇で耐えられない」という状態になります。

となると、システムには今後、

『個人に合わせてエンターテイメントを提供する』

という役割が求められるのではないでしょうか。

 

 

 

 

まさに『クルマは相棒』の世界がやってくる

「安全な走行」の次に求められるのは、ドライバーが快適に過ごせる「エンターテイメント性」ではないかと予測する山中先生。自動車はドライバーの個々に合わせた仕様になっていくといいます。まさに車は『相棒』のような存在になる!?と思うと、それだけで未来を感じますよね。80年代に放映されていたアメリカのドラマで、人工知能を搭載し自らの意識で走行し話をするスーパーカー、ありましたよね(40代以上の方ならわかる?)。それを思い出しました。

 

完全自動運転の車はヒューマンセンシング技術により、ドライバーの運転のクセを見極めて安全な走行をサポートしたり、その人が快適と感じる室温や音楽、映像をセレクトしたり、時に話かけてくるようになるかも、と山中先生は言います。車は今以上に、私たちにとって特別な存在になっていくのではないでしょうか。

 

 

 

 

自動車が人を見極められるか!?

自分用に学習された『相棒』のような車。そんな未来も近いと考えると、本当にワクワクしてきます。完全自動運転を実現させるためには、人の状態や感情を読み取るヒューマンセンシングが重要であることも理解できました。でも、人間の「感情」をシステムが読み取るなんて、本当にできるのでしょうか?

 

ここに面白い研究結果があります。
ある海外の研究チームが人の表情から感情を読み取る実験をしたところ「ポジティブ」と「ネガティブ」の分類がある程度の精度で可能という結果が得られたそうです。しかし、同じ実験を日本の研究室で日本人に行ったところ、「ネガティブ」の判定精度がさらに下がったという結果が。やはり、日本人は「感情を表に出しすぎない」、「相手に気をつかう」ということが再認識できる結果ですよね。
完全自動運転を実現するためには、そんなお国柄や、個々の感情の違いを読み取る高度なセンシング技術が求められるということなのです。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

日本人だと車にも気をつかいそう(笑)
ちゃんと走ってくれるためのご機嫌とり!

 

 

 

 

完全自動運転だけでなく、楽しみの両立を!!

安全で利便性の高い明るい未来がやってくる!と思うと心が踊りますが、安全と便利だけではいけないと山中先生は言います。「すべて機械まかせではいけません。やはりユーザーのしたいこと、楽しいことを機械がサポートする“人間中心設計”であることが重要です」。安心で安全な社会の実現も大事ですが、「車を運転することが好き」という人の気持ちや喜びも大事にされる未来であるべきなのです。

 

 

 

 

山中先生

 

私も自動車の運転は好きです。
運転する楽しみのない未来は寂しい。

 

「安全&便利」と「楽しさ」
両立できる未来を目指していきたいです。

 

人と円滑なコミュニケーションができる人工知能の開発が
明るい自動車社会を築いてくれることを願っています。

 

 

 

今回お話しを聞いた人
甲南大学 知能情報学部 知能情報学科 山中仁寛 准教授

甲南大学大学院 自然科学研究科 情報・システム科学専攻 博士課程修了後、首都大学東京システムデザイン学部 助教(2009年から准教授)を経て、2016年より甲南大学知能情報学部に着任。専門分野はヒューマンインタフェース、感性工学。企業との共同研究を通じてドライバー、ライダーの運転余裕度の評価手法やユーザの感性感情の評価手法の開発に取り組んでいる。開発した手法を用いて、実車の安全性検証テストなども行っている。

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