カーボンニュートラル実現への道【第2弾】
「水素」と「光触媒」が世界のエネルギー問題を解決する!?
「水素」と「光触媒」が世界のエネルギー問題を解決する!?
いま、最優先で取り組むべき社会課題「カーボンニュートラル」。
実現の鍵として再生可能エネルギーへの期待が高まっており、
世界各国でその研究が進められています。
甲南大学では、「光触媒を使った水分解水素製造」をテーマに
この課題に取り組む研究室があります。
数年後にはスタンダードになっているかもしれない!?
「光触媒で水素を作る」その可能性とは?未来とは?
KONAN-PLANET 記者
1.カーボンニュートラル
「カーボンニュートラル」とは 温室効果ガスを
「差し引きゼロ」にすること。
カーボンニュートラルとは、「社会活動全体で温室効果ガスの排出量と吸収量・除去量をプラスマイナスゼロにしていこう」という取り組みです。【私たちの行動が未来を救う!?カーボンニュートラル実現への道】でもご紹介しましたが、人が生活し、経済活動をしている限り温室効果ガスを「ゼロ」にすることは現実的に困難。そこで、排出せざるを得なかった分と同じ量を森林が吸収したり、人が除去したりすることで、「差し引きしゼロ」を目指しましょう、ということに。地球の温度上昇を1.5℃以内に抑えるためには、2050年近辺までのカーボンニュートラルが必要とされ、世界各国が目標を決めてさまざまな取り組みを行っています。
カーボンニュートラル実現のカギは、
「再生可能エネルギー」。
太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、資源に乏しい日本におけるエネルギー自給率を改善すると期待されています。そうしたなかで、太陽光エネルギーを利用して水素をつくる「光触媒による水分解」の研究を進めているのが、甲南大学理工学部機能分子化学科の池田 茂先生です。カーボンニュートラル実現の最先端を担う、水素と光触媒の未来について池田先生にお話を伺いました。
2.池田先生の研究内容
水素エネルギーについて
光触媒を使って水素をつくる
ここ数年の研究は劇的に進んでいる!
この1、2年で紫外線のほぼ100%を変換できる素材が見つかったというのは、じつは劇的な進歩。今から30年前、池田先生が大学院で研究を始めた頃は、たとえ紫外線であってもその変換効率が5%程度だったそうです。近年は可視光領域の光も使える光触媒が見つかっており、池田先生の研究室でも大学院生や4年生の学生らが熱心に取り組んでいます。 ちなみに、光触媒は、光を吸収する良い素材(半導体)を見つけることも大切ですが、その表面をうまく加工しないと水分解光触媒として使えません。素材の開発、表面加工の開発の両方が相まって、ようやく紫外線を100%吸収できるレベルに到達したのだそうです。
研究成果の展開
日本国内だけの話ではない、世界規模で必要とされる技術。
もし、光触媒水素分解が実用化されたとしても、日本は国土が狭いため国内だけで必要な水素を生産するというのは難しいと池田先生は言います。そうなると、海外で水素を生産し輸送することが必要になる。水素を効率よく輸送するには、主に以下の3つの方法があります。
❶ 水素は加圧すると液体になるため液化水素で運ぶ。
❷ 化学反応させ炭化水素(液体)にして石油のように運ぶ。
❸ 水素を一旦アンモニアにして運ぶ。
まだ、どの方法がいいのか答えは出ていないというのが池田先生の見解。ヨーロッパなど地続きであれば他国からパイプラインで運べますが、日本は島国なので輸送が必須。水素キャリアの技術開発も日本が先進国、というのも納得です。
「光触媒水分解」は間違いなく日本が牽引してきた分野。
人類の技術として大きく進展し、
あともう少しで手が届くところにきています。
化石燃料に代わる国産エネルギーの一つとして、
実用化への期待がますます高まります!
池田研究室の活躍に今後も注目です!
- 今回お話しを聞いた人
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甲南大学 理工学部 機能分子科学科 池田 茂 教授
東京工業大学大学院総理工学研究科博士後期課程修了後、北海道大学助手、大阪大学助教授・准教授を経て、2016年より甲南大学理工学部に着任。地球温暖化問題が深刻になる中、この溝を埋める方法として、太陽エネルギーへの期待が高まっており、太陽エネルギーの有効利用を目指して、太陽電池の新技術・新材料に関する研究や光触媒・光電極による光エネルギーの利用に関する研究を行っている。