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415㎞レースの覇者となっても続く挑戦
415㎞レースの覇者となっても続く挑戦
日本海富山湾をスタートし、北アルプス、中央アルプス、南アルプスを経て、
太平洋側の駿河湾を制限時間8日以内に走破する
「トランス・ジャパンアルプス・レース(TJAR)」。
2年に1度だけ開催されるこの過酷なレースで2022年、
卒業生の土井陵さんが新記録で優勝しました。
普段は消防士として勤務しながら、
トレイルランナーとして数多くのレースで活躍する土井さんに、
TJARやトレイルランニングのこと、
そして走り続けることへの思いを語っていただきました。
TJARとは
日本海側からアルプスを越え、
太平洋まで走り続けるTJARで優勝
KONAN-PLANET 記者
お忙しい中、ありがとうございます。本日は、よろしくお願いいたします。
土井陵さん
よろしくお願いします。
KONAN-PLANET 記者
まずは、2022年8月に行われた「トランス・ジャパンアルプス・レース(TJAR)」での優勝、おめでとうございます。
大会記録を6時間以上更新されたそうですね。TJARとはどんなレースなのでしょうか?
ⓒDoryu Takebe
ⓒDoryu Takebe
トレイルランニングとは














KONAN-PLANET 記者
ずっとバスケットボールをされていたとのことですが、
甲南大学でもバスケをされていたのですか?
土井陵さん
はい、大学の思い出といえば、体育会バスケットボール部の活動です。
バスケをするために大学に行っていたようなものです。
KONAN-PLANET 記者
ひょっとして、キャプテンをされていたとか?
土井陵さん
はい、一応、キャプテンをしていました。ただ、大学2年次に大きな怪我をしてしまったので、試合でバリバリ活躍するタイプのキャプテンではありませんでした。
KONAN-PLANET 記者
部活メインということは、ご友人もバスケ部のメンバーが多かったのですか?
土井陵さん
そうですね。文学部に知り合いはほとんどいなかったです。学業面で記憶に残っているのはゼミです。新設のメディア関係のゼミで、ゼミ生は4人しかいませんでした。レポートを提出すると、いつも先生に「書き直しなさい」とダメ出しされてましたね(笑)。
KONAN-PLANET 記者
そうした学生生活を経て消防士になられたのは、部活の影響が大きいのでしょうか?
土井陵さん
はい。部活ではチームワークを培い、身体も鍛えたので、それらを生かせる仕事に就きたいと思いました。また、人の役に立ちたいという思いもあったので、消防関係以外は志望していません。
KONAN-PLANET 記者
現在は、どのような業務をされているのですか?
土井陵さん
2023年4月から、119番通報を受け付けて各部署に指令する部署で朝9時から翌朝9時まで24時間勤務しています。それまでは現場にいましたが、今は現場に出る人たちを見守る立場です。
KONAN-PLANET 記者
24時間勤務とはなかなかハードですね。そのような勤務体制で、いつどんな練習をされているのですか?
土井陵さん
休みの日は山を走っていますが、普段は出勤前と帰宅後に、1周3㎞ほどの公園のランニングコースを走るのを日課にしています。これはもう、ルーティンというよりライフワークのようなものです。
KONAN-PLANET 記者
どれぐらい走るのですか?
土井陵さん
毎日、15~20㎞ぐらい走っています。
KONAN-PLANET 記者
仕事の前後にそんなに走れるなんて、さすが覇者です!ところで、消防士の仕事とトレイルランニング、それぞれの知識や経験が相互に生きていると感じることはありますか?
土井陵さん
消防士は、阪神淡路大震災や東日本大震災といった大規模災害や、交通事故で人が壁に挟まれているといった、あらゆる状況を想定して訓練します。そして訓練を振り返って、その反省を災害で生かせるよう備えることは、消防士として刷り込まれています。これは、天候によって状況が大きく変わる山の環境を想定して備える登山やトレイルランニングにも共通しているかもしれません。
KONAN-PLANET 記者
トレイルランニングでの目標は何でしょうか?
土井陵さん
まだ出たことのないレースに出続けて、現地の景色や文化を楽しめたら、と思っています。100マイル(160km)は好きな距離ですし、100マイルのレースはトレイルランニングの大会では一番距離が長いので、そこに照準を合わせてトレーニングをしていこうと考えています。もっと速く走りたいという目標はありませんが、年齢性別問わず、この競技の魅力や、挑戦する楽しさを多くの人に知ってほしいという思いはありますね。
KONAN-PLANET 記者
そのために、何か活動されているのですか?
土井陵さん
実は、5人の仲間と一緒に、レースなどのイベントを企画する「BAMBI100」を立ち上げたんですよ。トレイルランニングの距離はさまざまですが、私たちが企画するのは、もっともリスペクトされ注目されている100マイルのレースです。100マイルは、速く走れる人もゆっくり走りたい人も、気軽に挑戦できる距離です。多くの人に参加してもらい、日々の生活や人生をより豊かにしてもらえたら、と思っています。BAMBI100で企画するイベントでは順位をつけず、制限時間だけもうけています。年1回の開催を継続したいと思っています。
KONAN-PLANET 記者
レースで優勝して、イベントを企画して。職場の方々は、土井さんの活躍をどのように受け止めておられますか?
土井陵さん
テレビで何度か紹介されたので、職場の方々は私がトレイルランニングをしていることを知ってくれていると思います。でも、特別扱いをされることはありません。私も仕事に影響が出ないよう、プライベートの時間を使って楽しんでいます。スポーツウエアブランドのノースフェイスさんのチーム「ノースフェイスアスリート」に加入して、他の競技をしているトップアスリートとの交流も刺激になりますし、同社の商品に対してフィードバックするといったメーカーさんとのお付き合いも楽しいので、続けたいと思っています。
KONAN-PLANET 記者
公私ともにお忙しそう…。ご家族はご理解があるのですね。
土井陵さん
そこが一番の問題です(笑)。出勤日は24時間家を空けますし、休みの日は練習しているかレースに出ているので、だいたい家にいません。家族には、呆れられているというか、あきらめられているというか…。でも、否定はされていないと思います。おかげで、人生を楽しむことができ、毎日充実しています。
KONAN-PLANET 記者
うらやましいです!今後のますますのご活躍を楽しみにしています。
本日はありがとうございました。
「30歳を過ぎても、挑戦すれば成長できる」と言う土井さんに、
勇気をもらった人は多いのではないでしょうか?
人生100年時代の今、時間はたっぷりあります。
充実した人生を過ごすためにも、記者も何かに挑戦したいと思いました!

- 今回お話しを聞いた人
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消防士・トレイルランナー
土井陵さん2004年、文学部社会学科卒業。大阪市消防局に入局し、現在は警防部司令課で指令管制の班長任務にあたる。30歳を過ぎて始めたトレイルランニングで頭角をあらわし、2014年「ULTRA-TRAIL Mt.FUJI」で総合15位、日本人3位にランクイン。以降も国内外のさまざまなレースですばらしい成績を残し、注目される。THE NORTH FACEアスリートチームメンバー。