「たんぱく質危機」の救世主!
南さんの研究が「培養肉」の未来を切り開く!?

NEWS!『甲南人』の活躍 > カルチャー
2022.2.21
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2020年8月、甲南高等学校グローバルスタディ・プログラム3年生の南 慧(さとり)さんが
科学技術の自由研究コンテストである
JSEC(Japan Science & Engineering Challenge)2020で研究を発表。
大手日用品メーカーの花王に高く評価され「花王特別奨励賞」を受賞しました。

研究テーマは未来の食料として期待されている「培養肉」。
培養肉の効率的な生産につながる可能性があると注目を集めています。

 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
植物由来の代替肉と並んで注目されるウワサの「培養肉」ですね!高校生で培養肉の新手法を見つけるなんてすごい!研究の内容や、南さんの未来の展望について、甲南大学で知財コーディネーターを務める草間さんからいろいろと質問させていただきます!

 

 

知財コーディネーター 草間さん

はじめまして。知財コーディネーターの草間です。

まずは南さん、

『JSEC2020(第18回 高校生・高専生科学技術チャレンジ)』

での「花王特別奨励賞」受賞おめでとうございます!

 

 

南さん

ありがとうございます!

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
南さんの研究は「培養肉」がテーマですが、そもそも、
この研究を始めたきっかけは何だったのでしょう。

 

 

高2の時にアメリカ・バーモント州に1年間留学しました。学校の前にバーガーキングがあって、友達と大豆由来のたんぱく質をパティにしたハンバーガーを食べたんです。本物の肉と遜色なく、おいしく食べられて驚きました。
南さん
南さん

 

 

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
アメリカで食べたハンバーガーがきっかけだったんですね!

 

 

そうですね。甲南高校のグローバルスタディ・プログラムでは3年間の総まとめとしてSDGsに関連した論文を書く課題があります。
そこで僕はアメリカで食べた植物肉や培養肉に可能性を感じて、食糧難やたんぱく質危機の問題の解決につながるのではないかと考え、機械学習を使って研究をすることにしました。
南さん
南さん

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
機械学習という発想はどこから生まれたのですか。

 

 

機械学習には「回帰」と「分類」の2種類があるんですけども、初期リサーチの段階で奈良先端科学技術大学院大学の先生方が「回帰」という数学的アプローチを使って培養肉の研究をしている論文を拝見したんです。
それなら「分類」でやったらどうなるんだろうと・・・単なる好奇心ですね(笑)
南さん
南さん

 

 

 

「好奇心」が、研究の原動力。

 

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
好奇心は発明や発見の大きな要素となります。
それをお持ちというのは素晴らしいですね。
発明王トーマス・エジソンは好奇心が強すぎる問題児といわれています(笑)。ところで、受賞された研究の内容について、ポイントを教えてもらえますか。

 

 

ポイントを説明するのは難しいのですが(笑)・・・
たんぱく質の合成量というのは、核酸の並びによって決まります。僕が注目したのは、その核酸をつくる4種類の塩基配列です。核酸の種類はA、T、G、C 4種類の並びで表されます。たんぱく質の量を決める領域を読み取り、それを“単語”として分類し、機械学習を使ってたんぱく質が効率よく合成される核酸の配列を推測する方法を提案しました。
南さん
南さん

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
その研究を『JSEC2020(第18回 高校生・高専生科学技術チャレンジ)』に応募したんですね。

 

 

はい、コンテストのホームページを見て自分で応募しました。研究発表はZOOMで連続2日間の長丁場で疲れました…。
他の研究もレベルが高く最終審査まで残ると思っていなかったので「花王特別奨励賞」をいただき自分でもびっくりしています。
南さん
南さん

 

 

 

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
花王さんは、南さんの研究内容を将来性があると評価してくださっていますね。

 

 

そうなんです。この研究は培養肉だけでなく、いろいろな分野で使えるリサーチツールになりうると思っています。花王は化粧品のメーカーでもあるので、どこまで実用化してくださるかとても楽しみです。
南さん
南さん

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
それにしても、高校生で大学の先生方と親交があるなんてすごいですね。どうやって先生方とお知り合いになったのですか?

 

 

元々親交があったのではなく、大学のホームページでメールアドレスを調べて、自分の論文と研究内容を送ってご協力をいただきました。高校生ということもあり快く協力していただき感謝しています。
南さん
南さん

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
さらに研究を発展させて、2月に特許を取得されたそうですね。

 

 

 

高校3年で2件の特許を取得!

検証で「培養肉」のコストを抑えることに成功。

 

 

エンジニアの父の助けも借りながら、2件の特許を出願し取得することができました。実際にこの方法を使って検証した結果、培養肉の費用を1/3000程度に抑えることができたんです。さらに研究を進めて、たんぱく質が必要な再生医療や培養肉の生成を安価にすることでSDGsに貢献していきたいです。
南さん
南さん

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
それは楽しみです。新しい技術を広めていくにはその発明を独り占めできる特許取得は重要なキーとなります。いくら優れた技術でも特許がなければすぐに模倣されてしまうので、企業はなかなか事業化に踏みきれませんからね。ところで卒業後はどうされるのですか。

 

 

慶應義塾大学法学部への進学が決まっています。培養肉の技術面は進展していきますが、いまだ国会で議論されることもありません。また、2030年にはたんぱく質が不足する「たんぱく質危機」が訪れるとも言われており、いち早く対策する必要があります。司法の面から、培養肉が普及するための制度づくりの一助になりたいと考えています。
南さん
南さん

 

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
法学部へ進学されるんですね!
研究を続けられると思っていたので驚きました。

 

 

法学部にも生物学のゼミがあるので研究は続けるつもりです。たとえば、この技術を応用して、酵素を使ったバイオマス発電などにも応用できるのではないかなど、エネルギー問題の解決にもつなげたいですね。
南さん
南さん

 

 

「培養肉」の名前がダメ!?

普及は国民の理解がネックに。

 

 

培養肉の普及に関しては、国民の理解がネックになっているのかなと思うんです。「培養肉」という名前のイメージよくないので、「多摩大学のルール形成戦略研究所」に参加し、いま名前を決めようとしている段階です。
南さん
南さん

 

 

 

 

食卓に「培養肉」が並ぶ未来。

 

 

また、専門家の方々と知見を深めたいと思い「フードテック官民協議会」の高校生初のメンバーにもなりました。いつか、みなさんの食卓に培養肉が並ぶ日がくるといいなと思います!
南さん
南さん

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
たしかに、ネーミングや安全性の保証、法規制、利害調整などの課題もありますが、より重要なのは培養肉というものが食文化的に多くの人々に受け入れられる必要がありますね。
情報をわかりやすく発信しつづけてください。
ところで、今までのお話を伺っていて南さんの行動力がすごいのですが、その原動力はどこからくるのでしょうか。

 

 

やっぱり「好奇心」ですかね。培養肉の研究も「言語処理をするとどうなるんだろう?」という好奇心から始めたので、原動力になっていると思います。
南さん
南さん

 

知財コーディネーター 草間さん
知財コーディネーター 草間さん
旺盛な好奇心から優れた研究者が何人も生まれています。南さんのこれからの活躍がとても楽しみですね。
最後に、南さんの目標を教えてください。

 

 

僕から見ると世の中には、「こうしたらよくなるのに、なぜしないんだろう?」ということがたくさんあります。
また、社会問題は複雑化・多様化しており、ひとつの学問では解決できないと感じています。広い視野と専門性を身につけて、将来はシンクタンクで政策を提言しつつ、専門性を発揮できる人間になりたいですね。
南さん
南さん

 

 

KONAN-PLANET

記者

 

「たんぱく質危機」が間近に迫るなか、

培養肉のステーキが食卓に並ぶ日もそう遠くはないかも!?

南さんのこれからの活躍からに目が離せません。

KONAN PLANETでは,今後も注目していきたいと思います!!

 

 

 

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