海外で活躍する卒業生にインタビューリレー②
オーストラリアニューサウスウェールズ州シドニー編

NEWS!『甲南人』の活躍 > カルチャー
2022.5.21
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大学同窓会の海外甲南会は、ロスアンゼルス、テキサス、シンガポール、バンコク、シドニー、インドネシア、フィリピンの7カ国・都市にあります。
このシリーズでは、各国で活躍する卒業生たちに、海外へ渡った経緯や海外ライフ、おすすめの現地グルメ・観光スポットをインタビューし、リレー形式でつないでいきます。

第2弾となる今回は、「テキサス甲南会」の松村会長にご紹介いただいた、山口正人さんにインタビュー!昭和48年に経営学部を卒業した後は、フランスでの駐在を経て、オーストラリアで永住権を取得。現在はシドニーにお住まいです。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

山口さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!

今、住んでおられるシドニーはどんな町ですか?

 

 

 

山口正人さん

 

シドニーは、オーストラリア南東部、タスマン海に面した国内最大の都市です。

駐在地として人気の高いサンフランシスコ、シンガポールを含む「3S」と呼ばれる

都市のひとつでもあります。中国人、日本人といったアジア系移民が多く、

各国のグルメが楽しめるのはこの町に住む魅力のひとつです。

世界遺産をはじめとする見所も多く、観光客に人気があります。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

シドニーは観光地のイメージがありましたが、働くのにもいい環境なんですね。

とはいえ、現地で働くには英語力は必須だと思います。

山口さんは、英語は得意だったのですか?

 

 

 

山口正人さん

 

実は、英語は苦手でした。高校の恩師に

「お前の英語はひどいから勉強しなさい。就職するには英語が必要だから」とアドバイスを

いただいたほどです。在学中は、お金をかけずに手っ取り早く英語を習得するために、

英語研究部に入部して、4年間、部活ばかりしていました。

 

 

 

パリ駐在を経て、MBA取得を目指してオーストラリアへ

 

卒業後は、株式会社高島屋に入社しました。難波での勤務を経て、26歳の時に、フランスの二大百貨店のひとつ「オ・プランタン」内のパリ・タカシマヤ小売部門の責任者になりました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

26歳の若さで海外店舗の責任者とは、異例の昇進ですね!

 

 

 

山口正人さん

 

甲南大学出身者は、高島屋で活躍しているんですよ。

甲南大学卒業生が、東京と難波の店長を務めた時期もあります。

 

私は幼少から、経営者だった父に「将来は社長になれ!」と言われていたせいもあり、

高島屋では社長を目指していました。

でも、この会社で社長になるには時間がかかるので、辞めることにしたのです。

パリに駐在中、日本から来た社会人留学生に出会ったことも、そのきっかけになりました。

彼らは会社の留学制度を利用して、欧州で最もレベルが高いとされている

INSEAD(欧州経営大学院)で、MBA取得に向けて勉強していました。

優秀な人たちでしたが、仏語と英語は私の方が流暢だった。

だから、彼らにMBAが取得できるのなら、自分にもできると大きな勘違いをして(笑)、

MBAを取ろうと決めたのです。

 

MBAを学べる大学院に出願するには、GMAT(Graduate Management Admission Test)で、

ある程度のスコアを取る必要があります。ですから、働きながら、朝4時起きで必死に勉強しました。

また、当初はアメリカで取得する予定だったので、授業料1500万円をがんばって貯金しました。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

MBAの授業料は高いんですね!

その後、退職して、アメリカに渡ったのですか?

 

 

 

山口正人さん

 

いいえ。実は、他の国の大学院を調べたところ、オーストラリアではMBAの授業料が

無料だったので、シドニーのオーストラリア経営大学院で勉強することにしました。

同国では、私が日本人初の取得者だったようです。

 

卒業後は、豪州四大銀行のひとつ、ウエストパック銀行から

「永住権を取るから、うちで働いてほしい」とオファーをいただき、就職しました。

その後、証券会社でも勤務し、合計3年間オーストラリアの企業で勤めました。

1989年にニューヨークで株価が暴落した「ブラックマンデー」など、

多くの経験をさせてもらいました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

3年で退職とはもったいない気がします…。その後はどうされたのですか?

 

 

 

山口正人さん

 

MBAの主専攻がマーケティングリサーチだったので、シドニーで市場調査を行う会社

「株式会社 日本ブレーン・センター・オーストラリア」を立ち上げました。

 

日本企業の市場調査を受けるうちに、日本人のワーキングビザ申請の代行や人材紹介、

通訳・翻訳もするようになりました。

当時、日本の企業に対してこのようなサービスを提供する会社はなかったので、事業は順調でした。

一時期は、国内のゴールドコースト、メルボルン、パースをはじめ、東京、カナダのバンクーバー

ニュージーランドのオークランドに支社をつくって飛び回っていました。

その会社は3年前に精算し、今は個人事業主として仕事を受けています。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

では、ようやく趣味を楽しめるようになった、という感じでしょうか?

 

 

 

山口正人さん

 

そうですね。週1回、テニスと太極拳をしています。

歌が好きなので、40人ほどで構成している「シドニーさくら合唱団」の理事長もしています。

結構、忙しくしているので、大好きなゴルフは週1回しかできないんですよ…。

 

 

シドニー大学のコンサートホールで

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

週1でゴルフって、多くないですか?!

 

 

 

山口正人さん

 

シドニーの人は、週2~3回はしていますよ。オーストラリアでは、

60歳以上はシニア割引を利用できるので、18ドル(約1500円)で18ホール回れるんです。

 

でも、今、一番力を注いでいるのは、奨学金事業を行う

「NPO法人 ワールド・スカラーシップ・オーガナイゼーション」の活動です。

7年ほど前に立ち上げて、私は理事長を務めています。

この事業は、バングラディシュやケニヤの貧しい子どもたちに、無償で奨学金と生活費を給付して、

看護などの技術を身につけてもらうことが目的です。

 

実は以前、マザーテレサに会う機会があり、

私も時間ができたら彼女と同じことをしたいと思っていました。

 

それを実現でき、これまでに約20人をサポートしました。

 

 

バングラディシュの子供たちと

 

 

 

「MATE SHIP」で日本人も暮らしやすい

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

シドニーの生活を楽しまれているようですが、カルチャーショックはなかったのですか?

 

 

 

山口正人さん

 

フランスでさんざんカルチャーショックを味わったので、それほどショックはありませんでした。

でも、初めて来た人は、この国の人はいい加減だと思うでしょうね。

 

まず、約束に対するコミットメントが違うんです。

「12時に会いましょう」と約束して、時間通りに来るのは日本人だけ。

5~10分遅れるのは常識なんです。

 

それから、オーストラリアは階層社会で、金融などの一番いい仕事はイングリッシュが占めています。

次に移民したイタリア人は建築業界に多く、ギリシア人やレバノン人、

中国人、韓国人はクリーニングなどの大変な仕事に携わっています。

 

あまり知られていない話ですが、オーストラリアの最初の移民のうち約70%は、

イングリッシュが植民地にしたスコットランドとアイルランドの人たちです。

ですから、スコティッシュやアイリッシュをはじめとするイングリッシュ以外の人たちは仲が良く、

私たち日本人にも仲間意識を持っています。

 

「MATE SHIP」という言葉は、オーストラリア人気質をよく表していると言われていますが、

「同じ仲間同士、仲良くしよう」という意味。ですからみんな、とても親切ですよ。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

それほどいろいろな国からの移民が多いと、料理のバリエーションも豊かでしょうね。

 

 

 

山口正人さん

 

17年間、日本語新聞『CHEERS』のコラム「チープイート」の責任者をしていたのですが、

シドニーはエスニック料理のレベルが高いんですよ。

特に、中華料理やタイ料理はおいしく、マレーシア料理とベトナム料理も最近伸びています。

ですから、日本でエスニック料理を食べると、がっかりしますね(笑)。

 

 

行きつけのトルコ料理屋さんで

 

30年ほど前、近所に住んでおられた「美味しんぼ」の原作者・雁屋哲さんに、チャイナタウンの「ゴールデンセンチュリー」に案内していただいたことがあります。その時に食べたアワビのしゃぶしゃぶは、本当においしかったです!これは、香港の超高級料理で、当時、この料理を提供する店はシドニーになかったのですが、その後、食べられるようになりました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

私も雁屋さんファンなので、アワビのしゃぶしゃぶは知っています。

シドニーに行ったら、ぜひ食べたいです!

観光スポットとしては、どこがおすすめですか?

 

 

 

山口正人さん

 

世界三大建造物のひとつ「オペラハウス」は外せません。

日本人ガイドがついてくれる日もあるので、調べて行くといいと思います。

シドニーから車で2時間ほどの場所にある世界遺産「ブルー・マウンテンズ」も素晴らしいですよ。

山全体がユーカリの木に覆われていて、先住民・アボリジニの聖なる山とされています。

 

シドニーではありませんが、クイーンズランド州のグレートバリアリーフでの

ダイビングは素晴らしいし、いつか、ジャングルツアーが体験できる

ノーザンテリトリーの「カカドゥ国立公園」に行ってみたいと思っています。

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

本当に、見所が盛りだくさんですね。

コロナが終息したら、ジャングルツアーに参加したいです!

ところで、現在のオーストラリアの感染状況はいかがですか?

 

 

 

山口正人さん

 

ようやく外出できるようになりました。ただ、 シドニー甲南会は集まれていません。

コロナ以前はメンバー5~6人で年2~3回、集まっていましたが、今は会長がご高齢なので…。

 

ちなみに、シドニー甲南会の名誉会長は、甲南大学一期生の松井朔子(さくこ)先生です。

松井先生はシドニー大学の日本人初の日本語講師で、

今、オーストラリアで日本語を教えている先生方を指導したのは松井先生なんですよ。

その功績が認められ、2016年には日本の瑞宝双光章を、

2018年にはオーストラリア勲章を受勲されました。

今は日本におられるので、こちらに来られたら、みんなで集まりたいと思っています。

 

 

シドニー甲南会の旗を持って記念撮影(2019年3月)

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

甲南大学の卒業生が、オーストラリアの日本語教育の第一人者だったとは!

では最後に、日本の学生・生徒にメッセージをお願いします。

 

 

 

山口正人さん

 

今後も日本人口は減少し続けるため、企業は国内のマーケットだけでは

立ち行かなくなると考えられます。

そうなると、若い人たちは、さらに海外に行くチャンスが増えるでしょう。海外の生活環境は、

日本と比べると厳しいかもしれません。しかし、若いうちは気にならないでしょうし、

むしろ、どんどん成長できる環境だと思います。

そんな人生、素晴らしいと思いませんか?

 

海外にはビジネスチャンスがたくさんありますし、私には、海外での仕事は面白く感じられました。

海外で活躍を考えている学生の皆さんは、ぜひ、英語をマスターしてください。

さらに、これからの時代は、

ITスキルもあれば、将来は明るいと思いますよ!

 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
ありがとうございました!
インタビューリレー第3弾に向けて、海外で活躍されている甲南出身者をご紹介いただけますか?

シンガポール甲南会の方を紹介させていただきます。
楽しみにお待ちくださいね!
山口正人さん
山口正人さん


 

 

昭和48年甲南大学経営学部卒業。在学中は英語研究部で英語力を磨く。卒業後は株式会社高島屋に入社。26歳の時、渡仏し、パリ・タカシマヤ小売部門の責任者を3年間務める。退職後は、オーストラリアでMBAを取得し、銀行勤務を経て「株式会社 日本ブレーン・センター・オーストラリア」を創業。現在は、「NPO法人 ワールド・スカラーシップ・オーガナイゼーション」の理事長を務めている。

 

 

※シドニーのSBS日本語ラジオ放送(日本のNHKに相当)でWSOの活動が紹介されました。ぜひご覧ください。
SBS Language | 「教育」で未来を切り開き、貧困から脱却 WSO山口正人理事長

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