2024年2月20日(火)、神戸市立魚崎中学校二年生を対象に、東京海上日動火災保険株式会社と神戸市、甲南大学による「ぼうさい授業」を実施しました。本年度は昨年度同様、魚崎中学校二年生のみなさんに甲南大学まで来ていただき、142教室で授業を実施しました。
※2024年3月19日『神戸新聞』朝刊の神戸欄で紹介されました。
地域プロジェクト「ぼうさい授業」とは
「ぼうさい授業」とは、東京海上日動火災保険(株)が小学生を対象として実施する、自然災害についての知識を身につけることを目的とした社会貢献活動(CST)の取り組みの一つです。このプロジェクトでは、その授業の一部を甲南大生が担当し、東京海上日動火災保険(株)に加えて、神戸市のご協力を得ながら、中学生に授業を行います。
今年度は、「防災のための情報収集と身を守る行動」というテーマのもと、 1.授業にあたって知ってほしいこと 2.防災のための情報収集 3.災害時に身を守る行動 4.グループワーク 5.いざという時に役に立つ豆知識と防災アプリ の5つの段階に分けて、授業を進めました。ハザードマップを使いながら事前に取っておくべき行動について学び、それをもとにグループワークを行いました。
「ぼうさい授業」実施までの学びのプロセス
今年度は7月から活動を開始しました。授業を企画するにあたって、ぼうさいの知識を自分たち大学生が深く知る必要があります。そのため、まずは東京海上日動火災保険(株)の担当者の方から授業の概要、神戸市の担当者の方からは阪神・淡路大震災からの教訓を踏まえた自動・共助・公助の備え、地域防災計画、災害の被害を最小限に抑える減災について教えていただきました。
11月26日には、甲南大学岡本キャンパスがある地域で行われた地域防災訓練(本山第二小学校防災福祉コミュニティ・防災訓練)に参加し、甲南大学ブースを担当しました。また、住民の方々と他のブースを回り、AED及び心臓マッサージ、簡易担架の作り方やVR体験など普段体験できないことを経験しました。
「ぼうさい授業」受講生が地域防災訓練に参加、甲南大学のブース展示を行いました | 甲南大学 地域連携センター (konan-u.ac.jp)
ぼうさい授業を作っていくにあたって、私たちは12月6日にzoomにて、東京海上日動火災保険株式会社、神戸市の方への中間報告を行いました。具体的な内容としては、それぞれのパートの学習のねらい、目的、概要をパワーポイントを用いて説明し、それに対してご意見をいただきました。ここでいただいたご意見を基に、夏休みから作ってきた内容を一旦立ち止まって確認することができました。そしてその内容を修正、改善をし、本番へ向けてさらによりよいものが作ることができ、とても有意義な報告になりました。
甲南生版「ぼうさい授業」の内容(2024年2月20日、142教室にて実施)
1.授業にあたって知ってほしいこと
授業最初のパートでは、主に災害の危険性や実情と災害が身近である事を理解してもらうことに取り組みました。まずは、災害の危険性と実情を理解してもらうために、阪神淡路大震災や東日本大震災等の地震・津波や洪水などの実際に撮影された動画や画像を利用し、適度の解説を入れ授業を行いました。次に神戸市の近くで実際に発生した災害や直近で発生した能登半島地震を取り上げる事で、災害が遠い話ではないといいことを感じてもらえるように取り組みました。
2.防災のための情報収集
次のパートでは、ハザードマップから得られる情報を正しく活用できるようになることを目的に授業をしました。実際に津波のハザードマップ、洪水のハザードマップを用いて、見方の説明やクイズを行いました。また、ハザードマップにいう「1000年に1度」とはどのような被害なのかや、緊急避難場所と避難所の違いなどについてもここで実例を用いて説明しました。私たちは中学生にハザードマップを身近に感じてもらうとともに、防災の取り組みの一つとしてハザードマップを利用することの重要性を、ここで伝えることができました。私が授業内でクイズを出題した時に、生徒さんが一生懸命考えてくれている姿を見て、クイズを作成してよかったと思うとともに、楽しく防災を学ぶ機会が大切であると感じました。
3.災害時に身を守る行動
次のパートでは、地震や津波が発生したときにどのような危険があり、どのような行動をとることが適切なのかを、過去の事例や実際に震災の被害に遭われた方の証言などを用いて伝えました。他にも、前のパートで紹介したハザードマップをどのような目的でどのタイミングで使えば良いかを復習したり、南海トラフ地震に備えてどのようなことができるかを伝えたりしました。大事な部分はメモをしてもらうように促しながら授業をしたのですが、自分達が指示したところ以外にもたくさんメモを取っている学生さんが多く、主体的に学ばれていて良かったです。
4.グループワーク
グループワークでは魚崎中学校の生徒さんに5~6人の班になって、今までの授業の復習も兼ねて班活動を行ってもらいました。グループワークの内容は、普段住みなれた魚崎地域の地図を使って、実際に災害が起こった場合の対処について考えを深めていくものとなっています。実践①で、災害の発生場所から緊急避難場所へ最短距離で行ける場所をチェックしてもらい、実践②で、考えてもらった緊急避難場所への避難ルートを地図上で書いてもらい、さらに実践③で、その避難ルートで考えられる危険性について班で話し合って、出し合ってもらいました。実践③で話し合って出た答えを甲南大生がフォームを使って集め、前のスクリーンに回答を映し出しながら振り返りを行いました。
<グループワーク資料>
5.いざという時に役に立つ豆知識と防災アプリ
最後に、豆知識として、グループワークで取り扱ったビルからの避難と避難した後のことに焦点を当てて伝えました。グループワークで発生した細かい疑問に答えていく事で、生徒が疑問を残さずに進めるよう取り組みました。
最後のパートでは現代の中学生の多くが利用しているスマートフォンを使用し、情報を入手する方法として防災アプリを掲げ、それについて授業をしました。実際にスマートフォンの画面を投影して、使い方やそれらのアプリの特徴を紹介しました。また、災害時に通話・通信環境を確保するいくつかの方法として大手携帯会社による取り組みや無料Wi-Fiを紹介し、災害時により迅速な対応ができるようにしました。スマートフォンを使用した授業をすることで今まで遠く感じていた災害対策を気軽に取り組むことができると感じました。
=========================================
~「ぼうさい授業」に参加して~
「ぼうさい授業」プロジェクトに参加できて、とても良かったです。このプロジェクトでしか体験できない様々なことを経験することができました。
例えば、神戸市や東京海上日動との意見交換では、実際に災害に関する仕事をしているからこそきけるアドバイスを頂くことができました。また、小学校で開催された地域防災訓練では、甲南大学ブースを通じて地域の住民の方たちと色々お話しすることができました。私は、このような地域の集まりに参加したことが無かったので、ここでの体験はとても新鮮でした。さらに、授業中に行ったグループワークやその過程で得た防災の知識など、様々なことを学びました。
このプロジェクトを通して体験・学習したことは今後の私生活や社会人生活にも必ずいかせると思っています。最後にはなりますが、専門的な立場から助言をくださった神戸市や東京海上日動の方々、実際の体験をお話ししてくださった地域住民の人達、僕たちの授業を受講してくれた魚崎中学校2年生の生徒の皆さん、そして、一緒になってプロジェクトを進めた久保先生をはじめとするプロジェクトメンバーの皆、本当にありがとうございました。
【法学部4年・梅田健太郎】
=========================================
【謝辞】
この「ぼうさい授業」の成功には、多くの方々のご協力がありました。東京海上日動火災保険(株)や神戸市危機管理室には、防災に関する知識のレクチャーやアドバイスなどをいただきました。神戸市立魚崎中学校の先生方には、最終報告の際に授業資料や授業の進め方に関してアドバイスをいただき、当日の円滑な授業の進行にもご協力いただきました。また、甲南大学地域連携センターの方々には授業を成功させるために必要な様々なサポートをしてくださいました。このような多くの方々のご協力があってこそ、今回の「ぼうさい授業」が成功できたと考えており大変感謝しています。
この授業を通して中学生のみなさんの防災意識が少しでも日常生活に生きていただくことができていれば幸いです。
編集:法学部1年生 坂本蒼依
【「ぼうさい授業」2023年度メンバー】
梅田健太郎(法学部4年)
森野琉起(法学部3年)
小林香柚(文学部日本語日本文学科1年)
作田小羽(文学部日本語日本文学科1年)
野崎桃夏(文学部日本語日本文学科1年)
橋爪祐和(文学部人間科学科1年)
廣川あさひ(文学部社会学科)
坂本蒼依(法学部1年)
中本悠斗(法学部1年)
西村謙信(法学部1年)
牧野佑希(法学部1年)
吉田昌浩(リカレント履修生)
久保はるか(全学共通教育センター教授)