第1回 「睡眠と記憶について/基本的な睡眠とは」

 基本的な睡眠は,7時間半寝るとすると,ノンレム睡眠とレム睡眠が1セットとし1時間半で,起床までにノンレム睡眠-レム睡眠のセットが5回繰り返されます。ノンレム睡眠は,脳を休める睡眠です。一方,レム睡眠は,身体を休める睡眠です。ヒトの脳は非常に巨大化しており,更に,その重量は体重の5%であるのに基礎代謝は身体全体の20%に達します。すなわち脳は非常にエネルギー食いなのです。この脳を休ませるためにノンレム睡眠があるのです。また,レム睡眠は「夢」を見ている睡眠でもあります。(夢を見たことは必ずしも覚えているとは限りません。)就床して最初と2回目のノンレム睡眠-レム睡眠では,ノンレム睡眠は,大変深い睡眠です。そして,後半の2回のノンレム睡眠は浅い睡眠です。つまり,睡眠の前半では,ぐっすり寝ていて脳がしっかり休んだ状態で,少々揺すったくらいでは目覚めません。睡眠の後半では,脳はある程度活動しています。また,睡眠の前半では,レム睡眠は数十秒間の非常に短いもので,後半(朝方)では,30分近くも続く長いものになります。

 記憶と睡眠の関係から,ノンレム睡眠-レム睡眠を解説すると,ノンレム睡眠は,深いノンレム睡眠のときに,「いやな記憶」を消去する働きがあります。浅いノンレム睡眠のときでは,手順記憶を定着する働きがあります。手順記憶が定着するとは,自転車の乗り方や,習字,スポーツの技術などを身につけることと理解してください。更に浅いノンレム睡眠では,記憶を結合する働きがあります。これは色々な記憶を相互に関連づけることです。例えば,今日観た野球のゲームでA選手とB選手がホームランを打ったとします。A選手は満塁ホームランで4点入り勝利に貢献したのですが,B選手はソロホームランで1得点だったとします。そうすると,浅いノンレム睡眠でA選手のホームランと勝利の関連が記憶されるのです。言い換えると,浅いノンレム睡眠が無いと,誰のホームランがチームを勝利に導いたかが記憶されません。次に,レム睡眠と記憶の関係を解説します。レム睡眠時には,エピソード記憶が定着されます。エピソード記憶とは,「何時何処で何があった」かに関する記憶で自伝的記憶ともいわれる「日記」のようなものです。またレム睡眠時に,意味記憶も含め既に記憶したことと関連づけ,次回記憶を思い出す(想起する)際にスムーズに出来るように「索引」を付ける作業が行われます。

 基本的な睡眠として,7時間半寝るとすると,前半では深いノンレム睡眠が出現し,後半で浅いノンレム睡眠が出現することを思い出してください。就床後,間も無い時にしっかり寝ないと,昼間に経験した恐怖などの「嫌な記憶(嫌な感覚)」が消えず,心が癒されません。また,3時間や4時間の短時間睡眠では,浅いノンレム睡眠が無くなり,昼間一生懸命練習したことが身につかず,また,色々な出来事の関連情報が記憶されません。更に,短時間睡眠では,朝方の長いレム睡眠がないので,記憶の定着や記憶の索引付けが出来なくなります。

 以上のことから分かる通り,我々の記憶能力を充分に引き出すには,最適な睡眠環境で充分な長さをまとまって寝ることが重要です。最適な睡眠時間は・・・個人差はありますが,6時間あるいは7時間半です。

ページ上部へもどる